表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/19

いやいや、これくらい当たり前なんですが

 ユメルの研ぎ澄まされた剣撃。

 そして自分なりに修行を積んできた《補助魔法》。


 この二つが組み合わさることで、危険地帯とされる《幻影の森》を思ったよりスムーズに進むことができている。


 さっきのカマキロスを筆頭として、他にも凶悪な魔物は沢山いるんだけどな。


 それでもユメルと協力体制を取ることで、危なげなく森の奥へ足を運ぶことができている。完全に彼女の独壇場となっているが、それでも戦闘の足を引っ張っていることはない……と思いたい。


 ベルフレドいわく、魔物は状態異常にして当たり前だそうだしな。


 僕のようなサポーターは安全地帯に突っ立っているだけで、魔術師のように魔物にダメージを与えることもできないし、回復術師のように仲間を助けることもできない。サポーターたるもの、状態異常の付与くらい当然だという論調だ。


 だから他にも《物理防御》で敵の隙を作ったり、できるだけ彼女の攻撃力を上げられるようにバフをかけている。


 これなら少なくとも、足手まといにはなっていないはずだ。

 ……たぶん。


 ちなみに現在は、《幻影の森》に到着してから三時間後。


 病院を離れてからは五時間ほど経っているので、残された時間はあと七時間ほどか。


 おそらく、このペースなら問題なく森の奥まで辿り着けそうか。この森はそこまで広いわけではなく、徘徊している魔物が強いだけだ。そこまで焦らずとも、慎重に進みさえすれば問題なく薬草を採取できるだろう。


「アデオルさん、でしたね」


 たぶんユメルも同じことを考えたんだろうな。

 さっきまでは足早だった歩調が幾分か緩やかになり、少しだけ余裕のできた様子で話しかけてきた。


「とても高名な補助魔法使いさんだと思います。もし失礼でなければ、所属しているパーティーを教えていただいてもいいですか?」


「そ、それは……」


 正直に言えば答えたくないことだった。


 ベルフレドもフレスタもムーマも、明確な悪意をもって僕を殺そうとしてきた。デビルキメラとの戦いを押し付けただけでなく、岩石で退路を防ぎ、万一に備えてトラップまで用意していた。


 ここまでされておいて、さすがに彼らの仲間に戻りたいとは全然思わない。


 思い出したくもない過去のひとつだった。

 僕のその気持ちを悟ったのか、ユメルはこれ以上言及してくることもなく。


「……いえ、出過ぎたことを聞いてしまいましたね。大変失礼しました」


 申し訳なさそうにぺこりと頭を下げてきた。


「まさかこんなに優秀なサポーターさんがいらっしゃるとは、私も聞いたことがなかったもので……。私も足を引っ張らないように頑張らないといけませんね」


「へ?」

 思わぬ発言に、僕は思わず目をぱちくりさせてしまう。

「なに言ってるんですか! 足を引っ張ってるのは僕のほうですよ! 僕にできることは、こうやって魔物を状態異常にするくらいですから……」


「ま、魔物を状態異常にするくらい・・・⁉ あなたこそなにを言ってるんですか⁉」


 どういうわけか、ユメルも同じく目をぱちくりして反論した。


「カマキロスといえば、すべての状態異常耐性が高い強敵なんですよ⁉ だから真正面から戦うことしかできなくて、危険度の高い魔物なのに……」


「いやいや、カマキロスの状態異常耐性なんてペラペラですよ。さっきのデビルキメラなんか、麻痺状態なのにばりばり動いてきましたしね」


「あのデビルキメラを状態異常にしたんですか⁉ デビルキメラの耐性は《状態異常無効》だったはずですよ⁉」


「はは……またまた、ご冗談を」


 彼女なりに場を和ませようとしてくれているのだろうか。

 あまりにも常識外れなことを言ってきていて、僕は思わず苦笑してしまう。


 ちなみにユメルの言う《状態異常の耐性》とは、ざっくばらんに言って下記のようにまとめることができる。



 耐性ゼロ……補助魔法を一度使えば、確定で状態異常になる。その上で《麻痺》なら完全に動けなくなったり、毒なら体力が高速で減ったり、とにかく状態異常に弱い。


 耐性(小)……補助魔法を一度使っただけでは状態異常にならないことがある。また「体制ゼロ」よりは状態異常のデメリット効果を受けない。


 耐性(中)……耐性(小)の傾向がより強まったもの。



 耐性(強)……耐性(中)の傾向がより強まったもの。



 耐性無効……いくら補助魔法を使っても状態異常にならない。



 本当はもう少し細かい部分もあるが、簡単に言えば、この五段階に分かれるわけだ。


 たしかにデビルキメラの麻痺耐性はそこそこあったが、だとしても、動きがだいぶ鈍っていたからな。

 ユメルの言う《状態異常》は絶対にありえない。


 せいぜいが耐性(小)か(中)か……そのあたりだと思う。


「じょ、冗談ではないんですけどね……」


 ちょっとだけ拗ねたのか、ユメルは小さく頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。その様子を可愛いと思ってしまうのは、さすがにこの場ではふさわしくないだろう。


 ちなみにだが――

 ユメルはSランク冒険者というだけあって、ギルドでも有名人だ。


 腰まで伸びた銀色の髪はとても美しく、こうして会話をしている最中も、何度も見惚れてしまうほどの魅力を秘めている。また細剣による俊敏な動きを重視しているためか、防具の露出度がかなり高く……胸元などは直視できないほどに開けている。


 そして歳はたしか、僕と同じ18歳だったか。

 若くて綺麗な女の子であり、さらに王国内でも数人しかいないSランク冒険者……。

 ここまで条件が揃っているわけだから、有名人になるのはもはや必然といえた。


 ひとつだけ気がかりな点があるとすれば、数少ないSランク冒険者のなかでも、彼女だけが圧倒的に若いことか。


 たしか他の同ランク冒険者は、若くても四十代だと聞いたことがある。

 持ち前の才能はもちろんとして、たゆまぬ努力を続けてきた冒険者のみが……Sランクへの昇格を許される。


 それが数年前までの、ギルドの常識だった。


 にも関わらずユメルは、持ち前の才能だけでこのランクにまでのし上がった。まさしく冒険者ギルドの異端児ともいえる女性と言えよう。


 そしてユメルはまた、《超絶塩対応の女》としても有名なんだよな。


 勇気を振り絞って突撃していった男性たちの想いを、「無理です」「やめてください」「近づかないで」「話しかけないで」と一蹴。


 多くの男性たちの無念(?)も背負っていると聞いている。


 そんな塩対応で有名な彼女が、こうやって頬を膨らませるのはかなり予想外だったけれど……。ミスリアが負傷したことで動揺しているんだろうと、僕は心のなかで結論付けた。


「ぷんだ。私はカマキロスを状態異常にできたこともないのに……」


「あ、あの? ユメルさん?」


「こほん。いえ、なんでもありません」

 ユメルはそう言って前髪をかきあげると、Sランク冒険者さながらの毅然とした態度で言った。

「さあ、行きましょう。お医者様の話によれば、もう少しで《ピムラ草》の生えている場所に着くはずです」


「は、はあ……」


 ころころ態度を変えるユメルに首を傾げつつ、僕は彼女の後ろをついていくのだった。



☆★ 大切なお願いです!! ★☆


久々に新作を投稿しました!

この作品もぜひ、良い結果を出したいと思っています!


少しでも面白い、次が気になると思っていただけたのなら、

ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】をお願い致します……m(_ _)m


【評価】も【ブックマーク登録】も、たった数秒の操作で終わります。


評価はこのページの下(広告の下)にある「☆☆☆☆☆」の箇所を押していただければ行えます。


今後の更新のモチベーションにもなりますので、ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】をお願い致します……!m(_ _)m



よろしくお願いします……!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ