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学習の章 世界の事とスキルの巻き

フィムの集落への道中、アタシたちは様々な話をした。

この世界は大きく分けて5つの世界から成り立っていて、


人間たちが多く生活する、中心世界パレス。

動物の特徴を持つ亜人たちが暮らす、大森林世界アノーシア。

妖精族や天使族といった肉体を持たない者たちの楽園、精霊世界トレバース。

大きく文明が発達した代償に生命が活動できない機械都市、停止世界ゾル。

悪魔たちや魔族が封じられている闇に覆われた国、不浄世界ガルガチュア。

この5つをまとめて小宇宙世界クレイドルというらしい。


それぞれがそれぞれの惑星を有し、魔法を駆使して行き来をするそうな。

ちなみにアタシたちがいるのはアノーシアの大森林・玉響の森だそうで、アノーシアの中でも比較的危険は少ないらしい。

・・・まあ、それもフィムたち亜人の話であって、クレイドル全体で見ても最も脆弱な種族であるらしい人間にはアノーシアの森林はどれもこれも危険がいっぱいだそうで・・・。

アノーシアには一定数人間が暮らしているそうだが、危険が多いため指定居住区域以外で目にすることはほぼ無いそうだ。

こんな森を歩いている人間は稀にある例外を除いては、自殺願望の持ち主だけだという。

・・・え?自殺願望もってるように見られてたの??まじ???

まあそれは冗談として、アタシはその例外。

この世界クレイドルとは全く理が別の次元の世界、通称・異界から迷い込んだ異界人と呼ばれる存在に分類される。何年かに一度アタシのようにどこからともなく現れて、また消える。まるで幽鬼のように朧気で不確かな存在故に、古い人々は稀人とよんでいたそうだ。

で、その稀人の中でも特に珍しい現象がアタシには起こっているとのことで。

なんでも稀人たちは大体がクレイドルに迷い込んでも数秒ほどではじき出されて、元の世界・次元に還されるらしく、アタシのように居座り続ける者はあまりいない。

ましてや、スキルを持つ者なんて例外中の例外とのこと。

クレイドルに来て存在が定着してしまっていて、ほかの稀人のように時間の経過で元の世界に還されるかは不明らしい。要はいつ帰れるかわからんと・・・。


・・・ものすごく申し訳なさそうな顔をされたが決してフィムのせいではない。謝らないで!そのかわいい姿で頭下げられたら罪悪感で風穴あいちゃう。およしになって!!!


で、次に例のスキルの話になったんだけど、まあ予想通りある一定量の経験値と条件で取得できるものらしく、この世界の誰しもが何かしらのスキルを持ち、それらを知覚できるのだそうだ。

フィムも”アノーシアの加護”と”ルナの信仰”というスキルをもっていて、その二つがルナ族の高い跳躍力と優れた聴覚に現れているんだとか。

なるほど。耳がとってもキュートですね!

で、獲得したスキルは意識下で確認できるってことだったんで、ちょっと瞑想よろしく目を閉じて集中したら・・・見えた。

アタシの持ってるスキルがまるでゲーム画面をみているかのように脳裏に浮かんできた。

持っているのは・・・5つ?あれ、3つだと思ってた。


1つは”姉妹の絆”。1番最初に頭に響いた声は確かにそう言ってたな。

パッシブと書いてあるところに”次女の権能”ってあって説明書きもされてる。

”ヤマグチ家次女・サエカのジョブ・翻訳家のスキルを借り受け利用可能。現在レベル2のため2つの言語までを理解できます”とあった。

次は”兄妹の絆”。”三男の健脚”のところには、”ヤマグチ家三男・ケンヤのジョブ・トライアスロン選手のスキルを借り受け利用可能。現在レベル3のため一定距離の間、スタミナ消費を抑えることが可能です”とあって、次がおじじのやつ。

”曾祖父の愛”。”山に生きるモノ”は”山・森林にいる場合、キヌホ・ヤマグチに対して曾祖父ヒサノブ・ヤマグチのジョブ猟師の知識・経験・能力を譲渡する。また、敵対エネミーの種別が動物・植物類であり、装備武器が”曾祖父の愛銃”であれば全ステータス値を倍にする”

・・・この大森林世界ではチートもいいとこのスキルな気がしてきたよ、おじじ。

世界も次元も違って、生きてるものたちも全然違うけれど、どうにも都合よくおじじたちの能力はこっちの世界に適用されるようになっているらしい。

そりゃそうか。次女・サエ姉はたしかに翻訳家をしてたし、海外巡りが好きだったからそりゃあ言語能力はずば抜けていた。

簡単な日常会話が出来るものとか何言ってるか大体予想出来る言語含めたら10カ国語以上あったなあ、確か。

が、しかし。サエ姉がいくら優秀であったとしても、さすがにぷきゅぷきゅ言語の翻訳はできんだろう。・・・慣れたら出来そうなところがあのお姉の恐ろしいところだなあ・・・。

つまり、サエ姉の翻訳スキルもこっちの世界に適応できるようになってるってことか。レベルが上がったら多分同時に理解できる言語が増えるっと。おk!理解。


んで、次は・・・ケンヤか。なんでこいつのスキルが使えるんだろ。

率直に言うと、兄姉の中でアタシは三男・ケンヤとは不仲だと思う。六人兄妹の末っ子として生を受けたアタシとケンヤは2つ違いの兄妹だ。ケンヤは優秀な兄姉たちの中でもとりわけ成熟が早くあらゆる面で優秀だった。

上の兄姉たちの優秀さはとある面やとある物事に対して発揮されているものであり、次女・サエ姉はお察しの通り、言語面やコミュニケーション能力に長けていた。

長兄は身体能力に優れた両親に似ていたし、長姉はその優秀な頭脳で人を助ける仕事をしてた。サエ姉の双子の弟にあたる次兄もある分野で活躍している。

が、このケンヤはその兄姉たちの半歩先を常に行くやつだった。

お姉が高2で論文コンクール入賞なら、ケンヤは高1で最優秀賞。お兄が15歳でおとうちゃんと登った山を13歳で登頂・・・みたいな、そんな感じのことをずっと繰り返してた。

家族はみんな”すごい””また超されちゃったな”とかって悔しそうな、嬉しそうな顔をしてたけど、それよりなによりアタシがケンヤを嫌い・・・いや、苦手な理由は、その無感情な顔にあった。

何をしても結果を残し、何をさせても優秀なケンヤを家族はもちろんアタシも誇らしかったし尊敬してた。でも、ある時気づいた。

何か結果が出たとき、あいつは必ずと言っていいほどアタシをじっと見つめてくる。

何を考えてるのか全く読み取れない真っ黒な目はアタシに恐怖と焦りを植え付けた。

まるで”おまえもこれ位やってみせろ”といわれてるようで、なんだか見下されてるようで・・・。

アタシがやっても同じ結果が出せるわけないとわかってるくせに。そのくせ、家族からの賞賛の言葉を「あぁ」「うん」で済ませるやつだ。

アタシなんて手放しでめっちゃ褒めてもらったの中学2年でドベから中間に順位があがった時くらいだぞ。ふざけんな、この野郎。

だからスキルにケンヤの能力があってびっくりしたのだ。

・・・そういやあいつ、高校はいってからトライアスロン始めてたな。すごいなクレイドル。部活動も職・ジョブにカウントすんだ。基準ガバガバじゃね・・・???


で、おじじのスキル。あの魔物・ボアボアは動物系に分類されるから銃2発・罠1つで事足りるようなステータスに上がってたんか。やっぱおじじすごい。

ボアボアはアタシら地球で言うイノシシだから経験が利用できたのもデカい。いや、にしてもデカすぎっけどボアボア。

フィムいわくもっとデカい個体も存在するとか。いや恐ろしすぎますアノーシア。

「ここアノーシアはマナも豊富だし、ほかの世界に比べると植物や動物も巨大化しやすいの」

「いや、酸素濃度が高くて巨大化してるみたいな世界なの?こわくない??」

「魔物はガルガチュアから流れ込んでくる不浄なマナが集まって生まれるの。魔物はマナを取り込んで成長するから、どうしても大きくて強い個体が出来やすくって」

「ほぇ~、じゃあさっき勝てたのは幸運だったんだ・・・。やばー・・・」

ちなみにマナはクレイドルを巡り巡っている生命の源で、魔法とか使うのにはクレイドルのマナと自分自身のマナとを利用しているんだそう。大事なものですね、わかります。

で、マナにも正常なものとそうじゃないものとがあって、5つの世界が日々息を繰り返すようにマナは生み出されているけれど、思念を持つ存在や命あるモノたちが負の感情を強く抱いたりしてしまうとマナが変質、不浄なマナとなり、それが魔物やガルガチュアの魔族や悪魔なんかを生み出しているのだそう。通常不浄なマナはマナの巡りでほとんどがガルガチュアに送られるそうだ

が、マナは5つの世界を巡るもの。全ての不浄なマナをガルガチュアにとどめることはできない。


ガルガチュア送りからそれた不浄なマナが他の世界で定着してアノーシアやパレスで猛威を振るう魔物になっているとのこと。・・・なんか深い理由は知らんけど、ガルガチュアが一方的にゴミを押しつけられてるみたいに思えて不憫になってくるな。

いや、ガルガチュアの住人はその不浄なマナで生まれてくるんだっけ、失礼か。ちなみに戦争とか流行病とかで人が大量に亡くなると、そこも不浄なマナの温床になるそうだ。まあ、なんとなく予想はついてた話だね。


さて、なんか知らん間に増えてた残り2つだけども。これがさっぱりわからない。

全部黒く塗りつぶされてるみたいで読み取れないのだ。

フィムからは

「おそらくは私と同じような加護系のスキルなんだとおもうわ。先天的に有しているスキルだから意識と認識をしっかりしないと確認できないの。まあ、読み解けないだけでスキルは発揮されるものだからデメリットがないなら気長に読み解けるのを待ちましょう。

一生読み解けない場合もあるけどね」

「最後らへんがめっちゃ不穏なんだけど、大丈夫???」

「大丈夫よ!さ、もうすぐ私のお家がみえてくるわ」

フィムの言葉通り、薄暗い森の木々の隙間から暖かな火の存在を感じる。

人の営みの薫りは心を温めるとは聞いたことがあったけど、なるほどたしかに。

フィムがまた手を引いてくれるのに従って、アタシはルナ族の集落・ティマラへと足を踏み入れるのだった。





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