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甘夏と青年  作者: ささえ
25/43

すれ違い




 ……――




「あいつは内緒にしてほしいのだろうが、俺としては知っていてほしいかな。まあそういうことで。またな、樋口」



 二人して病院の出入り口へと辿り着く。

 そのまま互いに挨拶を交わし、望月はいよいよ仕事へと戻っていった。



 律の中に、仕事の日々の感覚がうっすらと戻ってきたように感じる。闘志が湧き、やってやろうと心が躍る。

 みんなにチャンスを貰えた今日という日が、この瞬間が、自分にとっての再スタートとなったのだ。





 ――ああ、マキに会いたい。この気持ちを伝えたい。





 律は病室に戻ることなく、そのまま二人の場所へと向かう。もうすぐマキが見舞いに病院を訪れる時間帯だ。



 中庭に到着すると、そこにマキの姿は未だ無かった。


 律は先にベンチに座り、彼を待つことにする。


 仕事の話を熱く語ってしまったなら、また色恋話じゃないと笑われてしまうだろうか。スマートフォンを弄りながらそんなやり取りを想像していると、同じベンチに座ろうとする男性がすぐ側まで来ていた。


 男性に気付いた律は、慌ててベンチの端へと移動する。



「すみません。どうぞ」



 下を向いてスマートフォンを弄っていたため、男性に気付くのが遅くなってしまった。

 にやついた顔を見られていたらどうしよう、と気恥ずかしさが一気に募る。

 同時に時刻を確認すると、とっくに十八時を過ぎていた。




「うーん、今日はお見舞いに来ていないのかな」



 マキも毎日見舞いに来ているようではないため、今日のようにタイミングが合わず会えない日も当然ある。

 それでも外の空気を吸うだけで気分転換になるので、律の中では中庭に出ることが習慣となっていた。




「あっ、座っていいですよ。私もう移動するので」



 おそらく自分が居たら気まずいのだろう。男性がなかなかベンチに座ろうとしないため、律は腰を上げ、自分の病室へと戻ることにした。



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