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泊り会③(続)

 葵も欲を全部発散できたようで、寝室へ戻って行き俺も一安心できる。


 ふぅ。やっと寝れるな。


 ……と思った時だった。


 また扉の開く音が聞こえる。


 葵?とも思ったが、発散した葵は満足げに帰っていったから多分無いだろうし、幽霊ともなるともうちびる。


「一条。トイレどこだ?」


 暗くてはっきりとは見えないが声的に中山だろう。


 確かに一階のトイレの場所は教えたが、二階は教えてなかったな。


 てか、一階のトイレ使えばよくね?どんだけ面倒臭がり屋なんだよ。


 ……まあ、俺もだからいいけどさ。


「この部屋の隣の扉だ」


「怖いから、ついてきて」


「子供かよ!」


「えー、いいじゃん」


「まあいいけどさ」


 わざわざこの為に起き上がるのは面倒臭いが、ついていかないと一生この状態だ。


 ……やむを得ない。


 布団を捲り起き上がって中山を誘導する。


「ここだ」


 指をさすとニコッと微笑んでありがと、と言いながらよをたしに


「俺は眠いから寝るぞ」


「えーそこに居てよ、怖いじゃん」


「へいへい」


 ったく、俺はわがままを何度飲めば許されるのだろうな。


 葵といい中山といい徹夜させる気か!まさか、裏ではグルなのでは、、いやさすがにないか。


 俺、この間何すればいいの?……てか眠いんだが。


「ふぅ~すっきりした」


「それは良かったな」


「ありがとね!一条」


 コクリと頷き寝室に戻る……が、何故中山もついてくるんだ。


「なんでついてくるんだ?」


「お礼に一緒に寝てあげるよ♪女子高校生と寝るって場合によってはお金より価値あるんだよ?」


「知らねーよ!俺は眠いから寝るからな」


 布団に飛び込み直ぐにでも眠りに着けるようにリラックスできる体勢をとる。


「よいしょ」


「よいしょじゃねーよ!なんで布団入ってくるんだよ!」


「寒いから寄って」


 聞く耳持ってないな。なんで俺今こんな状況になってるんだよ。


 葵の次は中山かよ!体力の限界きているのだが、、。


 堂々と何も言わずにそして、躊躇わずに布団に入ってくるし中々やるな。


「あのな、俺も一応男だぞ?襲われるとか考えないのか?」


「ん~一条にならいいかな」


 俺がいかにもは?という表情を浮かべていたのが見えたのか再度口を開く。


「うそうそ!一条はそんなことしないからさ」


 まあたしかに。したいともしようとも思わないが。男と二人って嫌じゃないのか?……いや気持ちには大体気づいている。


 鈍感か敏感か?と聞かれれば別にどちらでもないのだが、どちらかといえば敏感な方だ。


 中学生時代にぼっち生活を送っていた弊害かは知らないが、ぼっちは意外と敏感らしい。


 それに、気持ちに気づいていない振りをした方が多分相手の為になるだろうと踏んでいるのだ。


「まあ、っておい!」


 中山はそっと手を置くように俺の頬に手を添える。


 そして、徐々に顔を近づけてくる。微かな甘い香りが鼻の周囲を漂っていく。


 待て待て!嘘だろ……そんな展開はさすがに想定外だぞ。


 くそっ熱気で顔が紅潮していくのが分かる。それに体温も三十七度を軽く超えてるようなそんな感覚だ。


 ……まずい。


「ごみ、着いてたよ?」


「へ?ぇ?」


 不本意に、腑抜けた声を発声してしまった。


 何!?えっ!?ごみを取ってくれただけ?……めっちゃ恥ずかしいんですけど。めっちゃ一人で淡い期待を抱いてたんですけど。


 ……テンパリ過ぎた。


 暗かったから良かったが明るかったら顔が真っ赤になったの絶対バカにされてたな。


 これが、夜でよかった。


「ありがと」


「ちょっと期待しちゃった?♪」


「なわけな」


「なーんだ」


 葵といい中山といい何故暗闇の中で昼間と変わらないくらいにはっきり見えているんだ。


 「おいっ!」


 「……ちょっとだけ……元気補給させて……」


 俺の胸の中で蹲る中山。


 心音がバクバク音を立てている。きっと中山にも聞こえているのだろう。


 シャンプーの香りが鼻を再び刺激し、マシュマロのような柔らかい感触が腹部を刺激する。


 はぁ、なんでこんな重役を俺なんかが……もっと見合うやつなんてこの世に沢山いるだろうに。


 と、中山に聞かれないように、心の中で本音を呟く。

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