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泊り会②

「お風呂に誰から入るかなんだが……どうする?」


 俺の提案に中山と林城が口を開く。


「ここは公平にじゃんけん?」「みんなで入るのとかは?」


 この歳になってからみんなで入る意見がよく出るな……。

 しかも、みんな驚いた表情していないし。ガールズの中ではもしや流行っているのか。


「じゃあ、みんなで入ろーー!!一条どうする?」


 中山は悪戯の気持ちを含んだそんな表情で俺に視線を向けてくる。


 そんな視線で見られても答えは変わらねーよ。


 しかも、絶対少し煽ってんだろ!


「入らねーよ!!先入ってこい」


「じゃあ、お言葉に甘えて。」「一条君先いただきます」


 鞄の中から必要な荷物を持ち出して、風呂場に四人は向かっていく。


 ……神経がすり減らされるな、体力最後まで持つか心配だ。




 ◆




「葵~。こんなけしからんもんにはこれだ♪」


 中山は神崎の胸部に膨らむ双丘を背後から揉み出す。


 体に付着していた洗剤が潤滑油となって中山の手が触手のように動く。


「きゃぁっ!ちょっと雫!」


「くぅぅぅ、ほんとにけしからん!けしからんもんにはこれだ!」


 更に手の動きを強める。


「二人とも幸せそうだね」


「雫も結構あるとおもうけどね~」


 浴槽に溜まったお湯に使っている西条と林城は柔和な笑顔で二人の行動を見ている。


 西条は自分の胸を確認すると、少し悲しげな表情を浮かべ憧憬の視線を三人に向ける。


 林城は少し察した様子である。


「むぅうう、一条君にでも揉んでもらったの?」


「そ、そんなわけないでしょ!?」


 葵は何かに動揺したのか声のボリュームが大きくなる。


 この時、三人は同時にこう思った『あながち間違いでもない!?』と。


「雫だって立派なものあるでしょ」


 そう言いながら葵は反撃するかの如く中山の臀部でんぶに手を伸ばす。


「きゃぁっ」


「立派ですなぁ」




 ◆



 ……一体風呂で何が行われているのか。


 さっきから奇妙な声しか聞こえてこないのだが。


 机で静寂が支配する空間に少しノイズのような発狂のようなそんな声が鳴り響く中に虚しく一人待機している。


 と、家のチャイムが鳴る。


 扉を開けてみると夜ご飯用に配達を頼んでいたピザが届いたようである。


「え……ピザって割と高いんだな」


 スマホから注文を発注したが、値段を確認するのをてっきり忘れていた。


 美味しそうで大きいサイズの、ビッグデラックスなんとか、とかいういかにもサイズ感のおかしい物を二つ頼んだのだが、一枚まさかの二千円だとは。


 量が多くて困ることは無いし妥協としておこう……。


 財布の中から英世を四枚取り出して、配達員に手渡し商品を受け取る。


 箱に入っているのに外に匂いが漂っている。


「くそっ、早く上がって来てくれ!」




「どうしたの?和くん」


 葵が駆け寄って声を掛けてくる。


 空腹過ぎて老いぼれのような頬骨が出たそんな顔立ちをしていた。


「お、お腹が空いた」


 机の上には既に食べやすくカットされたピザが二枚並んでいる。


「ごめん!待っててくれたんだね」


 椅子に座り合掌し次第、すぐにピザを口の中に無造作に放り込む。


 う、美味い。


 当たり前のことだ。だが、空腹だと一層増して旨味が味わえるのだ。


 生きてて良かったと思える瞬間である。


 俺の食べっぷりにみんな驚愕の表情を浮かべている。


 ……そ、そんなに意外だったか?


 しかし、次の瞬間には笑いに変わっていた。ギャップの差があったのか、馬鹿にされたのか。


 それから他愛のない話をして、時刻も十二時に向かう所で就寝に着く準備を始める。


 勿論、俺は別室で寝る!誰がなんと言おうと。


「おやすみ~」「おやすみなさい、一条君」


 みんなに挨拶を返して俺は元々、妹が使用していた部屋に布団を敷いて眠りにつく。




「和く~ん、苦しいよぉ」


 夢でも葵が出てくるのか。


 最近はいつにも増して付き合う時間が長くなったからか。


 洗脳でもされてしまったようだ。


「寄ってよ~かずくーん……」


 ピトッと俺の手先は何かに触れるようにして柔らかさを感じた。


「いやんっ、和くんのエッチ♪」


「おいっ!なんでここに居るんだよ!」


 気がついて、我に戻ると暗い部屋の増して同じ布団の中に葵の姿がある。


「なんでって、一人じゃ寂しい……でしょ?……」


「いや、そんなことはないが」


 なぜここに来たかは不明だが、この状況を見られるとヤバい。


 これからの生活で俺のあだ名が凄まじく酷いことになってしまう。


 きっと『ヤリ〇ん王子』や『寝盗り王子』などと異様な異名を付けられて色んな意味で殿堂入りを果たしてしまう。


 ……それだけは避けなければ、でもこの甘々モードに入った葵はどうしようもない。


 下手な抵抗をしないで、発散させるか。


「……その、そろそろ離してもらえると……」


 手先に視線を向けると葵の臀部へと伸びている。


「すっすまん!」


「……和くんなら、いいよ……」


 咄嗟に臀部から手を離す。


 ……ごちそうさまでした。


「近いね……私たち♪……バレたらやばいね」




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