帰らぬ日々を想う
澄みわたる空は、海のように。
頬撫でる風は、幼き日の母の手のように。
あの日と変わらずここにある。
それでも今、石でできた貴女の墓標の前にて、言葉ではとても形容できぬ空白を感じている。
懐かしいあの頃、幸せだった日々は、もう帰らない。
貴女に「ただいま」と言えないように、あの日々の幸福を「おかえり」と迎えることも、今はもうできはしない。
分かっている。
森羅万象はいつか朽ちゆくと。
分かっていた。
貴女ともいつか別れがくるのだと。
ただ、その回避できぬ別離が、想像していたより少し早かっただけのこと。この雄大な世界の中では、ほんの些細な、話せば笑われそうなほどにちっぽけなこと。
それでも、今でも考えてしまうことがある。
もし、貴女があの日、助かっていたら。
もし、あの日の貴女に、私がなれたなら。
あの悲しみの日以来、私は、訳もなくそんなことばかりを考えてしまう。
私はただ、貴女に会いたい。
貴女のその宝玉のような瞳を見つめ、貴女が微笑むのを誰よりも近くで見守る。ただそれだけでいい。多くは望まない。
だが今は、それすらも叶わぬ夢に過ぎず。
けれども私は、愚かなほどに、まだ夢を抱き続けている。
ありがとうございました。