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帰らぬ日々を想う

作者: 四季

 澄みわたる空は、海のように。

 頬撫でる風は、幼き日の母の手のように。


 あの日と変わらずここにある。


 それでも今、石でできた貴女の墓標の前にて、言葉ではとても形容できぬ空白を感じている。


 懐かしいあの頃、幸せだった日々は、もう帰らない。


 貴女に「ただいま」と言えないように、あの日々の幸福を「おかえり」と迎えることも、今はもうできはしない。


 分かっている。

 森羅万象はいつか朽ちゆくと。


 分かっていた。

 貴女ともいつか別れがくるのだと。


 ただ、その回避できぬ別離が、想像していたより少し早かっただけのこと。この雄大な世界の中では、ほんの些細な、話せば笑われそうなほどにちっぽけなこと。


 それでも、今でも考えてしまうことがある。


 もし、貴女があの日、助かっていたら。

 もし、あの日の貴女に、私がなれたなら。


 あの悲しみの日以来、私は、訳もなくそんなことばかりを考えてしまう。


 私はただ、貴女に会いたい。


 貴女のその宝玉のような瞳を見つめ、貴女が微笑むのを誰よりも近くで見守る。ただそれだけでいい。多くは望まない。


 だが今は、それすらも叶わぬ夢に過ぎず。


 けれども私は、愚かなほどに、まだ夢を抱き続けている。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美しい文章ですね。とってもすてきです。
2019/11/07 01:21 退会済み
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[良い点] あなた、が誰か、どのような失くなり方をしたかわからないがゆえに、喪失の悲しみが鋭く出ていますね。 美しい風景と合間って、なんともいえず物悲しい…… えーと感覚的な語りで申し訳ないんですが、…
[一言] 諸行無常ですね。とは、言ってもそれが理解できるほど人間は強くないのが現実ですね。 別れはつらいものです。
2019/08/24 17:38 退会済み
管理
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