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3.決意表明

今回はユーリアと翠の邂逅です。


長い長い夢を見ていた気がする。


それは昨日までの自分の過去のようでありながら、自分が知らない知識のオンパレードで不思議な感覚からなかなか抜け出せなかった。



「.......ん。あれ、ここって.......。」


「!!お嬢様!!お目覚めになったのですね!....すぐに奥様方に知らせて来ます!まだ安静になさっていて下さいね!!」


言うだけ言って、部屋を出ていってしまったので返事もできなかった。


(今の美人メイドさん。涙目だった。)


(ここは、どこだろう。.......体は動く。)


ゆっくり両手を天井にかざし、見つめてみる.......。


「何コレ、まん丸なんですけどーーー!?」


がばりと上半身を起こす。ぺたぺたと頬や体を触ってみる。


(え!?.......むちむちですやん。)


(どっ、どうなってるの!? ここは.......どこだ??)


キョロキョロと部屋を見渡してみると、ぼんやりと思い出してきた。


(間違いない。ここは私の、ユーリアの部屋だ.......。

でも私は、翠は一度、死んでる.......。)


ポロポロと涙がこぼれる。止まらない。


これはきっと前世の私への、(みどり)への追悼の涙。




静かに泣き続けているうちにだいぶユーリアとしての意識と記憶が戻ってきた。どうやら私はお母様の言葉に倒れてしまったと思い出す。扉の向こうが騒がしくなってきた。きっとマリアたちが戻ってきたん.......


バァーーーン


と、物凄い勢いで開いた扉に涙が引っ込んだ。


「「ユーーリアーーーー!!!」」


お母様とお父様が、声を揃えて私に抱きついてきた。


二人が落ち着いたのを見計らって声をかける。


「.......おとうさま、おかあさま。しんぱいをおかけしてもうしわけありません。マリアもありがとうね。」


二人の様子からしてだいぶ心配をかけたのだろう。二人とも目の下のクマや髪のツヤなんかが酷い有様だ。私のせいだと思うと申し訳なくて謝ってしまった。マリアには夢現に声を掛けて貰っていたことを思い出しお礼を伝える。この行為は翠の意識が少なからず影響しているのだと、冷静に考えることが出来た。


待てども返答がないので、改めて小首をかしげながら両親の方を見てみると、二人ともポカンとした顔をして微動だにしない。


「ど、どうなさったんですか??おとうさま?おかあさま??」


「.......ユーリア。ごめんなさい。私、私が貴女に酷い仕打ちを告げてしまったから.......。きっとまだ具合が悪いのね。もう少し。寝てなさいね。」


と告げるお母様は涙を目にいっぱい溜めている。


「そ、そうだぞ。ユーリア、まだ休んでいるんだ。その、う、上手く言えないが様子がいつもと全然違う.......。」


お父様は、本当に困惑しているようだ。


確かに、今の私は翠の記憶によって精神年齢が一気に上がり過ぎた。思考はしっかりしているのに、喋ると平仮名表記される、みたいな齟齬を感じる。きっと、二人ともそこに違和感を感じているのだと思う。わたしだって、どうするべきなのか分からない。どうせどこかでボロを出すなら、早めに今のユーリアに慣れて貰う方がいいだろうと私は考える。もう一つの懸念もあるし、心配事は少ない方がいいだろう。



「おとうさま、おかあさま。わたしはもう大丈夫です。それと、ねこんでいる間にかんがえていたのです。わたし、おかあさまのいいつけどおりにがんばろうと思うの。」


「.......!!いいえ、ユーリア。まだ少し早かったわ。貴女は元気に過ごすことだけ考えてちょうだいな。そうやって少しでも考えてくれただけでお母様は嬉しいわ。だから.......」


「いいえ!おかあさま、わたしはもう決めたのです。今まで、ほんとうにあまえすぎていたのです。ザックさまのことはもう悲しくはないけれど、ザックさまの言うことは正しかったもの。」


ここで真っ直ぐにお母様を見つめ、手をぎゅっと握る。


「おかあさま、どうかわたしにがんばらせて下さい。」


「.......っ!!!ユーリア!!!分かったわ。貴女の本気を信じます。でも、本当に無理ならいつでも言いなさい。お母様はいつだって貴女の味方ですよ。」


これは、蒼兄にお願いをする時によく使った手だったが、どうやら上手くいったみたい。.......わたし、性格悪くなってる??


「お、お父様にもいつでも言いなさい。」


「あら、あなたはダメよ。あなたは甘いんじゃなく、甘過ぎるの。ユーリアの為を思うなら大人しくしていてちょうだい。」


「そ、そんなぁ。ローゼぇぇ。」


しばらく続いたそんなやり取りにまた胸が熱くなる。笑えるやり取りのはずなのに、また泣いてしまいそうだ。もう翠の兄弟たちには会えないけれど、ここにも確かに私の大切な家族がいるのだ。そのことは私にとても勇気をくれた。



「おかあさま、わたしがんばります。おとうさまはわたしのことをどうかみまもってて下さいね。」


儚げな笑顔を添えて。お父様には余計なことをしないよう釘を刺しつつ、蔑ろにしている訳でもないとさりげなく伝える。これは紅兄に有効な手であった。.......やっぱり、私性格悪い??






ここはゲームの世界だ。そんな確信が、私にはある。


翠の記憶で少しの傷心に浸っていたが、受け入れた今は正直.......


(嬉しすぎるーーーー!!!

ゲーム好きとしてこれ以上の喜びってなくない!?!)


もう、踊り出したいくらいにはウハウハである。


両親の手前、大人しくしているだけである。



(.......ところでこれなんてゲーム?見覚えはないけど、私が貴族であるってことと、この中世っぽい部屋や服装をみただけではゲームの特定は無理だ。でも、もし!もし私の大好きなRPGなら剣と魔法で冒険だー!!)



.......そのためには、今のこの体型はまったくもって頂けない。ありがとう、ザック様。貴方がくれたきっかけとお母様の助力は最大限に活かし、まずは痩せてやろうじゃないの!!!



ということで、


「おかあさま、よろしくおねがいします!!」


「ふふふ。3日間も寝込んでいたときは心配で夜も眠れなかったけれど、この経験が貴女を変えたみたいね。一緒に立派な淑女(レディ)を目指しましょう。」


何となく流れで、お母様と誓い?の握手をした。何だか一人の女性と認められたような気がして、恥ずかしいけど嬉しかった。私の変わりようも今回の体調不良がきっかけってことになったし、めでたしめでたしである。



「あぁ、でも流石に今日からではないわよ。まずは体調を万全にしてからです。いいですか?」


「はい!おかあさま。わたししっかり休みます!」


「ふふふ、よろしい。ではゆっくりお休みなさい、ユーリア。」


「ちゃんと休むんだぞ!ユーリア、おやすみ!」


「おやすみなさいませ。おとうさま。」


.......お父様まだいらっしゃったのね。


二人は私の頬にキスを落とし、部屋から出ていった。


そして、私はもう一度夢の世界へダイブした。



ここまでお読み下さってありがとうございます。


次回は翠のターンの予定です。

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