3.魔法について
「くっ、はっ、ああ、うまく出来ない」
今、俺たちはジョータさんが魔法を使えるように試行錯誤している最中だ。
「うーん、この世界に来たら出来るってわけでもないんですね。じゃあ、僕がジョータさんの魔素を流しますから、それで感覚を掴んでください」
「魔素?魔素っていうのはなんなんだ?」
「あ、そうか。ジョータさんは魔法のことを知らないんですね。ならそこからいきましょう」
「おお、よろしく頼む」
「えーっと、確か魔法歴史学の教科書はここに......あったあった。じゃあいきますよ」
「おう、ばっちこい」
「まず、この世界には魔素というのが存在します。これは、宇宙が生まれた時からあると言われています」
「ほう」
「魔素というのは、魔法の源となるもので、世界に充満しているものです。もちろん、生物の中にも存在します」
「なるほど」
「それでターゼ、つまりこの星のことですが、昔は魔素をうまく使えない動物のみだったそうです」
「ふむふむ」
「しかし、ある時状況が変わります。魔臓を持った生物の登場です」
「また分からない単語が出てきたな」
「大丈夫です。説明しますから。魔臓というのは、魔素を魔法に変える臓器のことです」
「えっ、じゃあそれがないと魔法を使えないのか?」
「違います。ちょっと待っててください」
「あ、はい」
「魔法と言っても、肉体強化の魔法です。じゃあちょっと試しに、思いっきり握手をしてみましょう」
「ふっ、いいのか?俺は握力には結構自信があるんだぜ?」
「おっ、頼もしいですね。やってみましょう」
そして俺たちはぎゅっと握手をした。ジョータさんは思いっきり力を込めている。
「どっ、りゃあああああっ!!!はあっ、はあっ、はあっ」
「全然痛くないですよ、ちょっと力を入れてみますね」
「ちょ、まっ、ぎゃああああ!」
あはは、悶絶してる。
「ギブギブ!まいった、降参!」
「っていう感じで、俺たちは魔臓を使って肉体強化をしてるんですよ」
「なるほど、体格的には同じくらいなのに、おかしなもんだなあ」
「話を戻しますね。それで、魔臓を持たない生物たちはどんどん絶滅し、魔臓を持った生物が生き残っていきました」
「そうだなあ、敵うわけがない」
「そして人類が生まれ、千年前。人類は大きな発明をすることになります。それが、魔法です」
「おお!ついに魔法が!」
「最初に出したのは火魔法と言われています。次いで水、そして風、そして地魔法も生み出しました」
「はー、すっごいなあ」
「この四つは元素魔法と呼ばれ、今でもこの魔法以外の魔法は出来ないんですよ」
「あ、そうなの?なんか魔法って色々出来ると思ってたけど、違うんだな」
いや、魔法を何だと思ってたんだろうか、この人は。そんな何でも出来るものではない。
「それで、この時は呪文を必要とする古典魔法でした。しかし五百年前。ある画期的な発見が魔法をガラリと変えました。それが魔素です」
「ああ、この時点で見つけたのか」
「そうです。それまでは魔法を、神から頂いた力だと思っていたのですが、魔素の発見により違うことが分かりました」
「じゃあ魔法っていうのはどういうものなんだ?」
「魔法というのは魔素の流れ、つまり魔流が生み出す物理現象だと分かりました」
「はあ、魔素が魔法になるんじゃなくて、魔素の流れが生み出すのか」
「その通りです。それにより、古典魔法は魔流を呪文によって作っていることが判明したのです」
「確かに画期的だな」
「でしょう?魔素を発見した人類は、もう呪文により魔流を作る必要はなくなり、自分のイメージで直接魔素を流せるようになったのです」
「ほう、するとどうなるんだ?」
「今までは呪文を介して流れを生み出していたのを、直接流すことにより、より強い魔流を生み出せるようになったのです」
「魔法の威力強化か」
「それだけではなく、魔法を出す速度も上がりました。呪文を言う時間が省けるわけですからね」
「威力も速度も上がったのか」
「はい。そう言うわけで、魔法は一段階レベルアップしました」
あ、一つ言い忘れてた。
「あと、言い忘れてたんですけど、魔素には四種類あるんですよ」
「もしかして、火、水、地、風?」
「流石ですね、正解です。体の中にある魔素を頭のイメージによって、例えば火魔法を使う時は魔素を火の魔素に変えて、魔流を作って火魔法を出すというわけです」
「へー、なるほど、分かったぜ」
「まあ、他にも細かいことは色々あるんですけど、とりあえずはここまで分かっていればいいでしょう」
「それで、俺はどうすればいいんだ?」
「まずは魔素を感じてください」
俺はジョータさんの肩に手を置き、ジョータさんの体にある魔素を流そうと力を込める。だが、
「あ、あれ?魔素ない?」
「ええ?俺、魔素持ってないの?」
「多分......」
「じゃあ魔法使えないのかよ!」
「そうなりますね」
「だああああ!!!まじかあ!」
ジョータさんはがっくりと落ち込んでしまった。
「まあ、魔法がほとんど使えない人なんていっぱいいますから。全く使えない人は見たことないですけど」
「何の慰めにもなってないし、全く使えない人はいないのかよ!」
「大抵一つの元素魔法は使えますね」
「なんだよ、ショックだなあ」
ジョータさんは魔法を使えないことが判明した。じゃあ家事できないじゃん。