1.プロローグ
俺の名前はゼーク。サクロ高校の生徒だ。今日、俺は筆記と実技の試験を終え家に帰ろうと学内を歩いていると、ある集団に声をかけられた。
「ようゼーク!お前また実技試験でビリだったらしいな!」
「はは、まあね」
声をかけてきたのは実技試験で真ん中らへんにいる人たちだ。
そして俺は落ちこぼれだ。筆記試験はまあ普通くらいだが、実技試験の点数が取れない。一生懸命やっているのだが、どうにも上手くいかないのだ。
「しかしまあ何でそんなに出来ないんだ?学校やめたら?」
「いや、俺将来すごい魔法師になりたいから......」
「お前がか?あはっ、ははははは!無理!無理に決まってるだろう!そんなこと!」
「わ、分からないじゃないか」
「いや分かるって。お前、努力してそれなんだろ?どうあがいたって無理!」
くそっ、こいつら、俺が努力してるの認めてくれてるんだよなあ。その上でいじってくるのがタチ悪い。
「ま、本気でやりたいなら止めはしないけどさ、やめといたほうがいいぜ。虚しくなるだけだ」
ポンと肩を叩かれ、あいつらはどこかへ行ってしまった。いい奴らなんだよな。いじってくる以外は。
まあ、正直俺も無理なんじゃないかとは思ってる。そろそろ、諦める時なのかな......。でもなりたい、なりたいんだよなあ。
そんなことを考えながら、俺は自分の家に着いた。家に両親はいない。実家はこんな都会ではなく、辺境の村にあるからだ。
俺は村の中では一番の魔法使いだった。なので村のみんなから援助をしてもらい、ここにやってきたのだ。
けど、いざ来てみると俺は魔法を使えると思っていたのにレベルが違った。
例えば、俺は直径10cmまでの炎の球を出せるのだが皆は30cmくらいのを出せる。
大きさだけじゃない。密度も、出す速度も圧倒的に俺の方が悪いのだ。ちゃんと努力しているのにも関わらず、だ。
とはいえ、嘆いていたってしょうがない。村のみんなの期待に応えるためにも俺はやらなきゃいけないんだ!
「よーし、頑張る......ん?何だこの音」
突然、ギュウウウウン!という音が部屋の中に響いてきた。
「一体なんなんだ?こんな音聞いたことがない」
音がしているのは俺の目の前だ。だが、何もない。何故こんな音が鳴っているのか全く分からない。
そのまま呆然としていると、いきなり、空間に小さな渦巻きが出てきた。
「うわあっ!なんだ⁉︎」
逃げようかとも思ったが、恐怖で足がすくむ。動けない。
渦巻きはどんどん大きくなり、直径1mほどになった頃、光が渦巻きから漏れてきた。そしてなんと、一人の男性が渦巻きからドスンと落ちてきた。
「えっ?」
「い、いてて......ここは?」
「だ、誰ですか、あなたは」
「聞きたいのはこっちなんだが。まず、ここはどこなのか教えてくれ」
「えーっと、ここはシャーフという国のサクロっていう街です」
「聞いたことないな。どこなんだ一体」
「今度はこっちの番ですよ。あなたは誰なんですか!」
「俺は佐田浄太っていうんだ。日本っていう国から来たんだ」
「ニホン?聞いたことない国ですね」
「聞いたことない?そ、そうかあ。結構有名な国だと思ってるんだけどなあ」
そんなことを言われても知らないものは知らない。
「まあいいや、じゃあ俺は帰るから。なあ、日本の領事館って......知らないよな」
「リョウジカン?なんですかそれ」
「うーん、まあいいや。じゃあ自分で探すから。ああそうだ、その前に。水を一杯くれるか?喉乾いちゃって」
「ああ、どうぞ」
さっさと出て行ってくれるならこっちとしても都合がいい。早く渡して帰ってもらおう。
コップを取り出し、右手をかざし、水を出した。
「はいどうぞ」
「ん?今どうやって水出した?」
「どうやってって......魔法で出したんですけど。文句言わないでくださいよ?別に僕の魔法で出したやつでもいいじゃないですか」
「は?え?いや、魔法?」
「え?まさか魔法を見たことがないんですか?へー、そういうこともあるんですねー」
「な、なあ。一応聞くがこの星って地球だよな」
「いや、ターゼですけど」
「やっぱりか!ここ地球じゃない!っていうか、異世界か⁉︎もしかして!」
ん?異世界?
「なあ?俺の世界だと魔法がないんだ。この世界にはあるんだろ?どうにかして元の世界に戻る方法ないか?」
「いや、異世界なんて聞いたこともないですし。多分無理ですよ」
「ま、まじかあ......」
男はがっくりと肩を落とし、うなだれた。そして顔を上げたと思ったら、こんなことを言ってきた。
「じゃあ悪いけどさ、ちょっとの間泊めてくれないか?」