第八話:気絶から目覚めたあたしは狼狽する
気がつくと、あたしは明るい部屋にいる。
部屋の大きさは十畳くらい。
白いマットレスの上に寝転がされていた。
しかも、全裸。
首輪が付けられている。
頑丈ではずせそうもない。
それが壁の金庫に、これまた頑丈な鎖でつながっている。
引っ張ってみるがびくともしない。
何度も引っ張ってみるが無理。
眼鏡がないので、周囲がボンヤリとしている。
これは現実なのだろうか。
気絶してから、何時間経ったのかわからない。
おまけに、体中がヒリヒリする。
毛を剃られている。
大きい姿見が部屋の端に置いてある。
よく見えないが、あたしは派手な化粧しているようだ。
側に水着が置いてあった。
メモがある。
『これを着ろ』
裸よりましだと着てみたが、少しサイズがきつい。
突然、背の高い男が入ってきた。
ダブダブの服を着て、やせてひょろりとしている。
全身を黒づくめにしている。
上は黒いトレーナー。
下は黒いジーンズ。
フェイスマスクを付け、目もとは黒いゴーグル。
全然、顔が見えない。
『ここは東京から二百キロ離れた山奥にある家の地下室だ。防音室でいくら大声を出しても無駄。こうなりたくなかったら、一切逆らうな』と汚い字で書いた紙を見せられた。
あたしが目を細めていると、近眼で良く見えないと思ったのか、紙を顔面の前に近づけてくる。
その後、何枚か写真を見せられる。
残虐に殺された女性の写真だ。
あたしは恐怖に震えた。
変態殺人鬼に誘拐されて、監禁されてしまった。
あたしが帰ってこないことを、ひきこもりの兄は気づいてくれるだろうか。
いや、気づいても何もしないかもしれない。
会社も終了したし、無断欠勤だから連絡してくるなんてこともない。
誰もあたしが居なくなったことに気づかない。
どうしよう。
怖くて、頭が混乱状態。