第二十話:戸惑うあたし
頭が混乱。
何で犯罪者がいきなり土下座してんの!
しかし、とにかくこの首輪を外してもらうのが先決だ。
男は変態女のポケットから鍵を取り出す。
首輪を外す。
正直、あたしは戸惑っている。
洋服を渡された。
「申し訳ありません。あなたの服は姉が捨ててしまいました。あと、眼鏡や携帯電話も」
「はあ」
「自動車で送ります」と男が言った。
何だか気の弱そうな男だ。
ここは慎重に行動した方がいいかもしれない。
「すいません。腰を痛めていて、スーツケース持ってください」と無精髭の男から頼まれる。
仕方が無く、スーツケースを持つ。
高級外車の助手席に乗る。
車庫のシャッターが開く。
目の前に見えるのは、あたしがいつも使っている道じゃないか!
山奥ではないだろうと疑っていたけど、まさかあたしの家のすぐ近くだったとは。
唖然としていると、すぐに家に着いた。
男はあたしを降ろすと、
「撮影した写真はすぐに消去しますから」とペコペコしながら戻っていった。
家にあがって、走って居間の置き電話の受話器を取る。
警察に連絡!
許せん、変態女め!
と思ったんだけど、このスーツケースのお金はどうなるんだろう。
証拠品として、警察が押収?
うーん。
警察に連絡して、あの変態女が逮捕されても、出所後、復讐に来るかもしれない。
あのスーツケースは変態女が部屋に持ってきた。
最初から渡すつもりだったのか。
よくわからない。
自分の部屋にスーツケースを持って行く。
一億円か。
中身を確かめてみる。
本物のようだ。
どうするか。
考えてたら、疲れた。
ろくに寝てなかったからなあ。
横になる。
五分眠らせてくれ。
五分のつもりが、ぐっすりと寝てしまった。
気がつくと、昼だ。
窓のカーテンを開けて外を見る。
ちょうど、目の前の道を廃品回収業者の軽トラックが通り過ぎようとした。
白いマットレスを荷台に載せている。
あれ、あたしが監禁されていた時に使っていたやつじゃん。
あわてて外に出て、おそるおそる例の家の近くまで行ってみる。
解体業者が防音室のパネルとか取り外して、大型トラックに積んでいる。
もう、証拠隠滅してやがる。
一旦、家に戻って考える。
あの変態女に誘拐されて、監禁されたのは事実だ。
しかし、何をやらされたかというと、水着を着て写真を撮られただけ。
その後、一億円くれた。
こんなことを信じてくれるだろうか。
あのK県警が。
最近、ネットを介して自殺志願者を大勢家に引き込んで、殺害するという猟奇大量殺人事件が起きたけど、K県警は集団自殺と思っていたらしい。
あてにならないK県警。
警察に駆け込んでも、
「そんな話信じられない」
「この一億円はあんたがどっかから、盗んだんじゃないの」
「示談金受け取ったんだから、民事不介入ってことで当事者同士で話してくんない」
なんてことを、あのK県警なら言われかねない。
何だか疲れた。
トイレに行こうとして、兄と廊下でばったり会ってしまった。
兄はびっくりして、二階に逃げていった。
いまだに、ひきこもりが治ってないなあ。
用を足した後、鏡で自分の姿を見る。
こんな服捨ててやると思ったのだが、鏡で見ると、あれけっこうイケてる。
鏡に顔を近づけて、化粧した顔見る。
これまたイケてる。
予備のメガネをかけて、自分の部屋の姿見で全身を見てみる。
あれ、あたしイケてるぞ。




