第十七話:私はスーツケースを用意する
私は実家の押し入れからスーツケースを引っ張りだした。
デカい。
人が入れそうだな。
え? ところで、お前は結局のところ、女に競泳水着を着せて写真撮影したかっただけなのかって?
そうですが、何か?
明日、日曜の早朝に、またスタンガンで気絶させて、この女の自宅近くの公園ベンチに放置する予定。
それで、終了。
え? そんなことのために、大金かけて防音室を作ったのかって?
そうですが、何か?
私にとって、はした金ではあるがね。
それに社長業は忙しい。
当分この部屋は使わない。
まあ、時間が空いたら、いずれ新しい獲物を捕まえるつもりだ。
次の女にはブラックの競泳水着を着せるかな。
イヒヒヒヒ!
え? そんなの、スタジオ借りてプロのモデルさんに頼めば、いくらでも可能だろうって?
なんで、一般人を誘拐監禁しなきゃいけないんだって?
あのねー、年下アイドルさんと食事しただけで株価が下がってしまう。
競泳水着の写真撮影なんかしたら、また株価が下がる。
ナロウタウン社長の変態趣味とか報道されて。
え? だったら、いっそのこと男女のモデルを大勢集めて、『ナロウタウン社長自らファッションカメラマンに挑む!』とか大々的に宣伝して堂々とやればいいじゃないか、春夏秋冬物その他、その中に競泳水着もまぜればいいだろうって?
そだねー!
けど、それでも、マスコミに叩かれて株価が下がる。
私は嫌わている。
あと、モデルさんって痩せすぎだ。
商売柄しょうがないんだろうけど。
とにかくナロウタウンとは一切関係ないところでやらなくてはいけない。
え? バレたら、警察に逮捕、会社倒産だろって?
大丈夫。
奥の手を用意してある。
いざという時は、すぐ解体屋を呼べる。
ギャハハハハ!
それにこれは芸術活動なのだ!
私は本物の芸術家だ!
私は思わず、
ドン! と机を叩いた。
え? お前はやっぱり変態だって?
そう、変態ですが、何か?
うるせーよ!
だいたい、お前も、女性を監禁して性的虐待を繰り返したあげく、拷問して殺すとか期待してたんじゃないのか!
そういう妄想をしてただろ!
お前も変態だ!
人の趣味に文句つけるな、あっち行け!
だいたい、会社経営なんて、変態のやることだ。
変態だから、月旅行に行くなんて言いだす奴まで出てくるんだ!
おっと、同業者の悪口はいけない。
是非、月旅行実現させてください。
応援しております。




