第十四話:あたしは冷静になる
男がカメラを持って、指示を出す。
殺されるのは嫌なので、従うしかない。
いろんなポーズをとらされる。
何がしたいんだ、この変態男は。
おまけに、
『お前は美しい!』と書かれた紙を見せられた。
なにが、お前は美しいだ。
ふざけんな!
恐怖よりも怒りが沸々と湧いて来た。
あたしは美しくないぞ。
人を弄んで楽しんでいる。
この変態男!
以前、『世界びっくりニュース』というテレビ番組で見たアメリカで起きた事件を思い出す。
誘拐された女性が、監禁されている間に犯人に飼いならされて、一度逃げ出したのにどうしていいかわからなくなって、結局、犯人のところに戻ってしまったという事件。
あたしはそんな風になりたくない。
あの変態男は最後はあたしを殺すつもりだろう。
さっき警察が来たのに、あっさりと帰って行ったようだ。
なんで突然、警官が来たのだろう。
変態男がすぐに音量を切って、素早く部屋を出ていったので、警官が何をしにきたのかわからなかった。
もしかして、山奥というのは、あの変態男の嘘かもしれない。
どっちにしろ、いくら大声を上げても、この防音室では誰も気づいてくれないんだ。
自ら行動しなくてはいけない。
何とか逃げる方法を探さなくては。
首輪の鍵は、あの変態男が持っているに違いない。
この部屋は鍵が付いてない。
男が出入りする時に気づいた。
寝たふりして、男が近づいてきたら、股間を思いっきり蹴って変態男は悶絶。
首輪の鍵を奪って逃走。
他に方法がない。
蹴りには自信がある。
女子サッカーをやっていた。
小学生の時だけど。
こんな変態に共犯者はいないだろう。
あたしが気絶する寸前に側に停車していた、あの外車が怪しい。
普段はあの駐車場にあんな高級外車は駐車していなかった。
自動車で誘拐されたのなら、すぐ近くに道路があるはず。
もし山奥でも、この日本なら助けを見つけられるはずだ。
今度、この部屋に入ってきたら決行してやる。
覚悟しておけ、変態野郎!




