暗殺失敗
別館で引きこもって暮らしていると十歳になりました。
十歳というと学園に行く年齢ですが、私は行くつもりがありません。
親から行くように、いえ言ってはくれないかという懇願の手紙が届きましたが私は無視するつもりです。
両親にも世間体があるのでしょうが私はまた感情のままに行動してしまいそうなので外に出るつもりはありません。
この別館で一生暮らしていくのもいいかもしれません。
今は前世の私が完成させられなかった魔法の研究をしています。
子供の頭がいいのかいろいろとアイデアが浮かんでくるのです。
逆に前世の私にここは勝てないと思う部分もたくさんあります。
その魔法の研究が今あまりうまく進んでいません。
やはり設備が悪いようです。
ゴーレムにいろいろ金属とか採取させてきて合金とか作って何とかごまかしてやってきましたが、
やはり希少金属とか高位の魔物の素材とかが足りないようです。
そんな行き詰った研究に気分転換をしようと湖に遊びに行きました。
外の時間を気にしない生活を送ってきたので外に出てみると夜でしたが問題ありません。
そもそも私は盲目なので魔法によって周りのものを把握しているため光の有無は関係ありませんし、
魔道具で周りの温度を適温にしていますので寒さも関係ありません。
湖を散歩していますと後ろから人がついてきています。
その人は気配を消して歩いてついてきているのですが、
魔力の隠しかたが少し雑です。
おそらく暗殺者でしょうか?。
ただの狩人か冒険者かとも考えたのですがついてきてる時間がもうずいぶん経ちますし、
明らかに私を狙ってるのでそれはないでしょう。
と考えていると後ろの暗殺者さんが急接近してきてナイフを振りかぶり
自動で発動する護身用の魔道具に倒されました。
「えっ」
と私は声を出してしまいました。
いえ一応外に出るときは自動で発動する魔道具を持ってきているんですけどその存在を忘れてたんです。
この魔道具攻撃を感知すると自動で電撃で応戦してくれる優れもの、
おねだんなんと・・・・・・いくらぐらいなんでしょうね?
まあおふざけはおいといて
暗殺者さんよりも私のほうがびっくりしてたんじゃないですかね?
魔力の揺らぎから判断して攻撃されたことも気づいてなかったようですし。
とりあえずこの暗殺者さんどうしますかね?
一応人殺しにはなりたくないため簡単な治癒魔法をかけておきましたがどうしましょう。
とりあえず覆面を外してみます。
いえ外す必要はなかったんですけどね。私の周りを把握する魔法、これ実は相手の服があっても中を把握することができるんですよ。
思春期の男子がうらやましがりそうですね。
まあ色とかはわからないのでがっかりしそうですが。
とまあ説明はおいといてこの暗殺者さん私と同い年ぐらいっぽいですねえ。
とりあえずしばって起こしてみますか。
なんで私が殺されかけたのか興味がありますし。
この少年が使っていた魔法も見覚えがないものでした。
魔法で縛ってついでに少年の魔力を奪ってから水をぶっかけてみました。
「ぶはっ、げほっげほっ」
少年はむせたのか苦しそうです。
扱いがひどいって言わないでくださいよ。
実害はなかったけど殺されそうになったんですから。
少年はこちらに気付いたのか身構えようとしたのか一回跳ねましたが動けないことを悟るとこちらをにらんできました。
「ごきげんよう、暗殺者さん。
いい夜ですわね。ところで今夜はどうして私のもとにいらしましたの?」
友好的にいこうと本で読んだ貴族の令嬢のしゃべり方で話しかけてみました。
「ごきげんもなにもねえだろっ!
殺すなら殺せ!おれはなにもしゃべらねえぞ!」
失敗のようです。コミュニケーションというのは難しいものですね。
ここ三年ぐらい人と会話していなかったのでどうすればいいのかわかりません
なので素で話すことにしました。
「ええっとあなた暗殺対象間違えてません?
私人に恨まれるようなことは・・・・・・ちょっとしかありませんけど?」
恨まれるしたことないと言いたかったのですが三年前の自分の愚かさは忘れられません。
「あるんじゃねえか!
一応確認しといてやるがおまえシャーリーン・ラドクリフだよなあ。」
「ええーっと私ってそんな名前でしたっけ?」
これに少年はまさか対象を間違えたのか焦っています。
そういえば私自分の名前を憶えてないのです。
五歳の時私は生死をさまよいそれ以前のことはほぼすべてを忘れ、
それ以降は感情のままに魔法を使ってたので人が寄り付かず、
七歳からはずっと引きこもっていたので自分の名前を知らないのです。
というわけで本人確認をできないのです。
そういうわけで私は少年に
「その暗殺対象の詳しい容姿を教えてくれないかしら?」
あくまで優しく聞きます。
「えーっと銀髪で青い目だって」
少年無関係な人を襲ってしまったのかと思い態度が柔らかくなっています。
暗いのでわからないかもしれませんが私も銀髪で青い目をしています。
「ほかには?」
それだけでは私だとは限りません。
引きこもってちょっと長くなりすぎた髪を切ろうかな?と思いながら聞いてみました。
「それ以外わかんないってよ。
だからあの別館から出てきた人を襲えばいいって、
一人しか住んでないからって。
あんたには悪かったな。人違いで襲っちまって、
もう衛兵でもどこでも突き出してくれ。」
なんか勝手に納得してしまっているのですがそれだと私しかいません。
何せこの三年間一人も人を入れたことはありませんから。
そして私の中には衛兵につきだすという選択肢はありません。
人と会いたくありませんし。
「一人で勝手に納得しているとこ悪いけど多分その暗殺対象わたしよ。」
「ってめ、だましたなっ!」
「いえだましたも何もあなたが勝手に勘違いしただけなのだけど。」
「いーや、自分の名前もわからないなんてあるかっ!
だまして何のつもりだっ!」
「はぁー」
なんかもういー加減めんどくさくなってきたので魔法でまた気絶させることにしました。
「ではちょっとびりってしますよー」
「あってめっなんのつもり・・・・」
はい気絶した少年の出来上がり―。
まあ事情については後で記憶でも覗けばいいやっととりあえず
家に運ぶことにしました。
背中ずりむけてたらごめんねー
と引きずってる少年に心の中で謝りながら。
ちなみに記憶を除く魔法は禁呪です。国の法律で使うのは禁止されています。
国の軍などでは特例として許可を取れば使うことができます
そのうえ制御が難しいため一握りしか習得できない魔法なので一般的ではありません。