私は醜い
すぐに帰ってくるつもりが王都の暗殺者ギルドの本部にまで行ってきたので五日もかかってしまいました。
まあ本来ならば王都までは二週間ぐらいかかるのですけど私にかかればかなり短縮できるのです。
まあこの二週間というのは宿に泊まったり馬車の馬を取り替えたりという速度もあわせたものですけど
それでもこれは相当早いです。
馬車より速い竜車なら一週間でいけますがそれも行きのみでですから往復と用事を済ませて五日というのは奇跡的です。
一睡もしないで魔法で空を飛んで行ったかいがあります。
まあ別に魔術で体を改造した私にとっては精神的にはともかく身体的には問題ありません。
おそらく一か月まで魔術併用ならで頑張れるはずです。
なぜそんなに急いだのかって?
それは私の家にある食糧が四日分ぐらいしかなかったからです。
多分クロにはひもじい思いをさせているでしょう。
なので私は急いで家を目指します。
家の近くに来ましたが周りには変わったところはありません。
クロが任務に失敗したので殺されたりしないか心配だったのですがこれなら大丈夫でしょう。
私は安心して家に入りました。
「クロ―、帰ってきたよー。」
そういいましたが返事がありません。
まさかクロがいなくなったのかと思いましたがお風呂場の方に気配があります。
おそらくクロはお風呂に入っているのでしょう。
ここで私はいいことを思いつきました。
クロのお風呂に乱入してやろうという楽しいいたずらを。
「はー、お風呂っていいな。」
さあてクロはリラックスしている様子。
つまり油断している。
さあ一気に行くよ。
脱衣所とお風呂場の仕切りを遮るドアを
バーン
「クロっ!ただいまっ!」
「えっえっなっなに!?」
そこにはクロがお風呂でくつろいでいたところに急に私が現れたことで混乱してました。
「ごめんねえ。もっと早く変えって来るつもりだったんだけど遅くなって
おなか減ったでしょう。」
そこまで言ったところでクロがやっと体を隠しました。
「ふふふ、反応が遅いよ。もっと早く反応しないとやられちゃうぞ。」
そこまで言ったところでクロは急に泣き始めました。
「えっちょごめん。おなか減ったよね。もっと早く帰ってこればよかった。
ごめんって、泣きやんでよねっね。」
どっどうしたら?
私泣いている人を慰めるなんて前世と今世とあわせて初めてなんだけど。
「なんで泣いてるのか教えてくれる?」
とりあえず私は出来るだけ優しい声で声をかけます。
「だってせっかく優しくしてくれたのに嫌われちゃう。」
クロの言葉遣いはかなり優しいものになっています。
おそらくこちらが素なのでしょう。
素で接してくれるのはうれしいのですがなんで泣いているのか理由がわかりません。
「私はクロのこと嫌ってないよ。
だからなんでクロのことを嫌ったって思ったのか教えてくれる?」
「ほんとう?ほんとうにきらってない?」
これが素だとしたらこの子は相当精神年齢が幼いのではないだろうか?
多分幼少期に親から離されたから今まで甘えれる人もいなかったんだろうね。
それで私が甘えられるから今までの分甘えていると。
それに今まで暗殺者ギルドで育ったから、
正しい意味での人との触れ合いの機会なんかなかったからね。
私のことを親のように思ってるんだとおもう
「大丈夫よ。嫌いになる理由からわからないもの。」
そういうとクロはおずおずと話しだしてくれる。
「だって俺の体は醜くって気分が悪くなるって。
お前のような奴は見たくもないって。見たらだれでも吐き気がするって。」
ああ多分あれね。これは他の人に助けを求めないように情を殺すためにやったものね。
それに拷問に耐える訓練のために結構体を痛めつけているから
クロの体はやけどや切り傷だらけでその・・・・・
クロの言ったように・・・・・あんまり見ていて気持ちのいいものじゃない。
「大丈夫よ、私はそんなことで嫌ったりしないわ。」
「うそだっ!だって私の体はこんなにっ・・・」
あーこれは根深そう。
私はクロに近寄って抱きしめて頭を撫でた。
「大丈夫、大丈夫。」
「いやあ、やめてっ!ちかよらないでっ!
嫌われるくらいなら最初から優しくされたくないのっ!
こんな醜い体もういやっ」
そういってクロは暴れる。
これは・・・・・・荒療治が必要ね。
クロを傷つけるけど・・・・ごめんね。
私は腕の中で暴れているクロを突き放す。
クロは突き放されてきょとんとしている。
近寄らないでと言いながら私が放すことを想像してなかったんだろう。
胸が痛い。
クロは無条件で私のことを信頼していたということだ。
幼い子供が両親にむけるような。
私はできるだけ見下したような顔を作って言う。
「お前は醜い。元はそこまでじゃなかったのだろう。
だけどその傷がやけどの跡がお前を醜くしている。
見ていると吐き気がするような体。お前の体を見たものは皆お前を嫌うでしょう。」
そう私が言ったときクロはすごく情けない顔をしていた。
もうどうすればいいのかわからないという感じの。
迷子の子供が見せるような。
そして今にも泣きだしそうな。
私はクロが泣き出す前に私はクロを魔法で気絶させた。
はあ、きつい。




