遅い冬の始まり
「お前って、胸全然ないのな。」
「ほら、私ってスレンダーでしょ?胸なんて所詮肉の塊りってゆーか…」
小学生の頃から全く成長しない私のコンプレックス。
女友達にネタにされた時はいつもこんな風に言いかえして笑いが起きていた。
だけど今は…。
沈黙がベッドの上の二人を包む。
「やっぱこーゆーの俺たちにはまだ早いかな。」
何が「まだ早いかな。」だ、バカ。
「今日は夜まで俺んち親いないから」とかべったべたな伏線張って私を誘ったくせに!!
「ほら、制服着ろよ。カゼひくぞ。」
制服を着た方がカゼをひきそうなくらい、手渡されたブラウスはひんやりとしていた。
くやしい?いや、違う。
腹立たしい?これも違う。
虚しい?うん、そんな感じ。
魅力ない女って思われちゃった…そんな虚しさ。
「女のコの体の事言ってくる男なんてサイテー!」
普段なら知らない男子にでも面と向かってそんな事を言ってのける私も、彼の前では別人なのだ。
それだけ彼の事を愛している。
結局、その後は無機質な会話のキャッチボールを1時間ほど続け、予定より早く彼の家を出た。
もやもやした私の心とは裏腹に、町は目前に迫ったクリスマスを心待ちにするかのように浮き足立って
いる。
「クリスマスデートどうなっちゃうかな…。」
そんな事を考えながら帰りの電車に揺られていた高校2年の12月。