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新しい家族

ハルが可愛いお尻をフリフリしながらハイハイをするようになってしばらく経った頃、里子のお腹には新しい命が宿った。



つわりはあったが、元気なハルを追いかけていたため、気分の悪さに気を回せず軽くすんだように感じた。




1才をすぎた頃にはハルも歩き始め、さらに追いかけるのに一苦労。

あっと言う間につわりのつらい時期を乗り越えた。

妊娠6ヶ月目の健診の日病院を訪れた時先生に


「そろそろ赤ちゃんの性別が分かりますが、どうしますか?」


と聞かれた。

ハルの時も性別は生まれからのお楽しみにしていたので


「生まれからの楽しみにしているので教えないで下さい。」と里子は答えた。




先生は「わかりました。ではエコーをお腹の赤ちゃんを見てみましょうね。」といい健診開始。

里子と一緒に健診のベッドに乗り、不思議そうにエコーを見るハル



トクトクトクと赤ちゃんの心音も元気よく聞こえる



エコーが終わり服を直して先生の前の椅子に座る里子とハル。


「赤ちゃん元気いっぱいだよ〜。順調だね。性別もばっちりわかったからね。お母さんには生まれからのお楽しみ」机に向かって健診結果を書いている先生。


その時里子は耳にする。




「……男の子っと」







先生〜!!!!


聞こえちゃったよ〜!

書きながら小声で言っちゃった…




ああ、お楽しみが……でも無事生まれてくれれば性別はどっちでもよかったし


男の子は大歓迎だし。




聞こえなかったふりをして健診終了。



聞こえちゃった事は里子とハル2人の秘密にして、史郎には生まれるまで内緒にしておこう。洋服選びは男の子色ばかり買わないよう慎重に。

まあ、ハルのおさがりがあるからあまりいらないけど。





その後の経過も順調にいき、ハルを抱っこするときは大きなお腹に乗っけるようにしていた。


お腹の赤ちゃんは分るのか、里子がハルを抱っこすると

「兄ちゃん!重いよ〜」と言っているかのようにお腹の中からキックやパンチを繰り出した。





その後の健診も問題なく予定日を4日過ぎた日の深夜、里子はお腹の痛みで目が覚めた。



しばらく痛みの間隔を計り様子をみていたがどうやら陣痛のようだ。


病院に電話をして、経過を報告すると「すぐにきて下さい」と言われ、寝ていた史郎とハルを起こし荷物を持ち病院へ急いだ。病院へ向かう車の中で徐々に陣痛の間隔が短くなり痛みも強くなってきた。


眉間にしわを寄せ痛みに耐える里子。



「大丈夫か?急ぐから頑張れ!!」


史郎は迅速かつ安全に車を走らせた。病院につくと看護士が待っていた。

「痛みの間隔は?おしるしや破水はあった?」

里子に質問しながら分娩室へ向かった。




残された史郎は眠っているハルを膝に抱き廊下の椅子にすわって待っていた。


こんな時、男って待ってるだけしかできないんだよな…

史郎はなにもできない歯がゆさに少々苛立ちを感じた。しばらくして

「坂上さん、奥さんがお呼びですよ」と看護士が史郎を呼びに来た。



「はい。あっ、でも…」

と史郎は膝の上で寝ているハルを見た。



「お兄ちゃん寝ちゃってるのね。じゃあ、こっちのベッドに寝かせてあげて。看護士がいるから大丈夫よ。

旦那さんは奥さんのそばについていてあげて」

と分娩室の隣の部屋の空いているベットを指差した。

「ありがとうございます」


史郎はハルをベッドへ寝かせ里子の元へ向かった。


史郎は分娩着(帽子とエプロンのようなもの)を着て分娩室へ入った。


分娩室では出産前の準備(点滴や分娩着への着替え)を終えた里子が分娩台の上で陣痛に耐えていた。


史郎は里子の陣痛の波が引くのを待ってから声をかけた。


「もうちょっとだな、頑張れよ。はい、リップとお茶」




ハルの時は何をしていいか分からずただオロオロするだけで看護士には邪魔扱いされ、結局里子の手を握ってやる事しかできなかったという苦い経験がある。


なので今回はリップクリームとストロー付きの飲み物を持参し準備も万全で出産(の立ち合い)に臨む史郎であった。






「ありがとう。のど乾いちゃったよ〜」

里子は差し出されたお茶を飲み乾いた唇にリップを塗ってもらった。



「あれ?ハルは?」

看護士のはからいで隣の部屋にいる事を告げた。

「そう。じゃあ安心して産めるわ。今回は……(陣痛が)きたからちょっと待って…………」


陣痛の波のが去った後、横にいる史郎と雑談をするという前回にはない余裕をみせる里子。



「赤ちゃん、だいぶおりてきたよ」と助産師に言われ余裕をみせていた里子だったが、いよいよ会話どころではない状態になってきた。

激しい陣痛が休みなく襲ってくる。


「これで終わりだよ。最後にもう一回頑張って」







「───おめでとうございます。男の子ですよ!」




その日は凛とした気が張りつめ月が美しい夜だった。

生まれた新しい家族には『良夜(リョウヤ)』という名前が付けられた。


生まれたばかりの良夜を胸の上に置かれカンガルーケア。


「初めまして、リョウ。会いたかったよ。」

リョウは小さな手で里子の人差し指をギュッと握った。


里子は出産後様子を見るため分娩室でしばらく休んだ。


数時間後病室へ移されると、そこにはまだ夢の世界にいるハルと産湯につかりきれいになったリョウが史郎に抱かれていた。


「お疲れ様。赤ちゃんって小さいなー、ハルもこんなに小さいかったんだよなー」


「そうだねー、ハルも大きくなったんだね」


2人は寝ているハルとリョウを交互にみて微笑んだ。「史郎はどっちが生まれると思った?」



里子が聞くと

「そうそう!その事なんだけどさ…」と史郎が話しをした。



ハルをベッドに寝かせて里子のところに行く時見送る看護士に


「次の子も男の子ですってね」と言われたらしい。


史郎が「えっ?男の子なんですか?」と聞き返したところ看護士が気まずい表情で


「あらっ!内緒だった?ごめんなさいっ」と性別をばらしてしまったらしい。2人が話していると眠っていたハルが目を覚ました。


「ハルおはよー。ハルは今日からお兄ちゃんだよ」


里子は生まれたばかりのリョウをハルにみせた。

「弟のリョウだよ。お兄ちゃん初めまして」


里子に抱かれたリョウを見てキョトンとするハル。「ママ、あーたん?」

(里子達は、お腹にいる赤ちゃんを「あーちゃん(赤ちゃん)」と呼んでいた)

ハルは自分のお腹をポンポンと叩いてみせた。


「うん、そうだよ。赤ちゃんだよ」



まだ理解できないハルは里子のお腹もポンポンと叩いた。




あれ?おなかぺったんこ…なんで?



何度も里子のお腹を叩いて確認するハル。

「ママ、ポンポン!ポンポン〜!」



「ハル〜、痛いよ〜」しばらくするとハルはリョウの顔を覗き込んだ。


ママに抱かれてるこれはなんだろう?どこからきたんだろう?ママのお腹がぺったんこなのとなにか関係あるのかな?お腹のあーちゃんはどこ?



いろいろ考えながらリョウのほっぺをつついてみた。


寝てるみたいだけど……






ハルがリョウの事を認識するまでしばらく時間がかかりそうだ。



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