バスタイム
里子も慣れない育児に奮闘しているが、史郎も奮闘中だった。
史郎はハルのお風呂担当である。
残業にならないようせっせと仕事をこなし、定時には颯爽と会社を後にする。
疲れて帰ってきた後のハルとの入浴は格別なものがある。
まずは湯船のお湯の温度。湯船に浮かべた温度計と史郎の手でチェック。温からず熱からず。
すでに史郎はハルが一番気持ちよく入れるベストな温度を熟知していた。
次はタオルの用意。
ハルの体を優しい洗うガーゼのハンカチ。ハルが湯船の中で不安にならないための胸にかけておくタオル。湯上がりのハルを優しく包む柔らかいバスタオル。
最後に石けんを用意。赤ちゃんの繊細な肌を優しく洗い上げる専用のベビーソープ。
全ての用意が済んだらまず史郎が体の隅々まで念入りに洗う。
湯船に入りお湯の温度を最終チェック。「いいよ〜」
裸になったハルを里子から預かってレッツバスタイム。
胡座をかいた膝の上にハルを乗せ怖がらないようにお湯をかけてやる。
頭を洗いガーゼで優しく顔を拭く。よく泡立てた石けんで優しく体を洗っていく。最近はようやくなれたものの、最初は悪戦苦闘だった。
まだふにゃふにゃの体の上、石けんをつけると滑ってしまい何度かヒヤッとしたことがある。
丁寧に体を洗った後はしっかり抱いて湯船の中へ。耳に水が入っては大変。ここでも気を抜かないよう細心の注意をはらう。
しっかり耳を塞ぎ軽くお尻に手を添えて温かなお湯にハルの体を委ねる。「ふーっ。気持ちいいな、ハル」
お湯の温かさにうっとりと目をつむるハル。
「父ちゃん最高だよ!」
と言ったか言わないか、史郎にはそう聞こえるらしい
「そうか!気持ちいいか!父ちゃんもハルと入る風呂は最高に気持ちいいぞー!!今日はどうだった?いっぱい寝ていっぱい飲んだか?」
男同士の会話は進む
「今日はいい天気だったよな。もうちょっと大きくなったら一緒に散歩に行こうな、外は気持ちいいぞ。」
史郎の独り言を聞きながらハルはお風呂の気持ちよさに大あくびをした。「おーい、出るよー。」
バスタオルを持って風呂場に来た里子にハルを渡し、史郎もすぐに風呂から上がった。
「お風呂お先。ふーっ、気持ちよかった。」
ビールを片手に部屋に入ると、里子が頬をほんのりピンク色に染めたハルに服を着せ終わったところだった。
「さて、お風呂上がりの一杯と参りましょうか。」
史郎はビール、ハルは母乳で喉の渇きを潤した。