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命、再び



一年後、里子は再び妊娠した。



うれしい。だけど怖い……素直に喜べない。喜びよりも不安が大きい。前回の事が頭をよぎり里子を不安にさせた。


またダメになったらどうしよう…

「そんな事考えちゃダメだよ!」と史郎に怒られたが前回の事が頭から離れない。



自然と病院へも足が遠のいた。


妊娠発覚一週間後、やっと病院へいく事ができた。



「こんにちは。お久しぶりですね。」

先生と看護士は里子の事を覚えていた。



「診察の結果、今5週目に入ったところですね。まだ小さくて赤ちゃんは見えませんが。2週間後にまた来て下さい。

今度は頑張りましょうね。」


先生は里子の手を握りしめ言った。


2週間がとても長く感じた。細心の注意を払って2週間を過ごしたのち、不安でいっぱいな気持ちで診察室へ。


「そんな顔しないで大丈夫。赤ちゃん大きくなってたよ。心拍も確認できたし次回は母子手帳持ってきてね。」


里子は不安気持ちを先生に打ち明けた。

「前回の妊娠が9週でダメになっちゃったので不安で…」


先生はカルテを見て言った。

「そうだね、不安だよね。でも続けていなくなる人は少ないから。少しでも不安な事があればいつでも来て。電話でもいいから。いつでも待ってるからね。」


−−いつでも待ってるからね。

先生のその言葉に不安感が緩んだ。



次の健診日。

初めて母子手帳に赤ちゃんの事が記入された。


これからこの手帳は赤ちゃんの成長で埋め尽くされるんだろうな。


里子は嬉しかった。月日がたつにつれ、母子手帳は赤ちゃんの成長が書き込まれうまっていく


そして、順調に大きくなっていくお腹。



5ヶ月を過ぎた頃には胎動を感じるようになり喜びが増した。


元気に動く赤ちゃん。毎日お腹に話し掛けてる史郎と里子。毎日が幸せに満ちあふれていた。

更に月日はたち出産予定日を4日過ぎた朝。


里子は史郎立ち会いのもと陣痛に耐えていた。



分娩室に入って何時間がたっただろう。

あまりの陣痛の痛さに里子の体力も限界に近づいていた



「もう一息で赤ちゃんに会えるわよ。頑張って!はい、いきんで!」



朦朧とする意識のなか最後の力を振り絞った




「おめでとうございます。男の子ですよ。」




里子は元気な男の子を出産した。



外は昨日までの雨が嘘のように、雲一つないすっきりとした青空が広がっていた。


看護士さんは生まれたばかりの赤ちゃんを胸の上に抱かせてくれた。



「初めまして、赤ちゃん。やっと会えたね。」


「初めまして、パパでちゅよ〜。」


史郎の赤ちゃん言葉に里子はちょっと引き気味……





そんな様子を『(はる)』と名付けられた赤ちゃんはちらっと目を開け二人を見ると、大きなあくびをして寝てしまった。

「里子、お疲れ様。俺達の赤ちゃんを産んでくれてありがとう。」


無事出産という偉業を成し遂げた紀代子を史郎はねぎらった

「なんか俺も一緒生んだ感じ…疲れた…」


みると里子にも負けず劣らず、汗びっしょりになっている史郎を見て里子は笑った。


「ぶっ!史郎もお疲れ様」



「さて、みんなに連絡してくるね」


史郎はそれぞれの両親に電話で報告。しかしあまりに興奮してたため


「里子が産まれたよ!」と言ってしまった。


電話の向こうでは「?」の顔。間違いに気付き

赤ちゃんが無事生まれたこと、母子共に健康である事改めてを報告した。

連絡をうけた子の両親は初孫の誕生を喜んだ。



特に父親はとても喜んだ。連絡を受けた10分後には病院へ向け車を走らせていた。




病院に到着した里子の両親は史郎に案内され早速ハルと初対面。


新生児室のガラス越しにハルを見た父親は

「おおーっ。かわいいなー!」

と歓喜していた。一旦病室へ行き里子をねぎらったが、直ぐに新生児室の前に戻って行った。



「やっぱり娘より孫がかわいいよね…。」

病室で母親とこんな会話がされている事はつゆしらず、その後父親は1時間近くも新生児室の前から離れなかった。



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