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奈々子結婚

和代の退院から半年後、菜々子の結婚が決まった。


出会ってから5年の付き合いだったらしい。菜々子より2つ年上の榊原晃(さかきばらあきら)という男性。

里子も何度か合ったことがある人でしっかりとしている印象を受けた。

しかし、気の強い年下の菜々子にしっかり尻に敷かれている様子だ。



その半年後、結婚式場。

里子が控え室へ行くといつもの勢いはどこへやら、菜々子は白無垢姿で緊張で強張った顔で座っていた。


「菜々子おめでとう。すごくきれいね」

黒のロングドレスに淡いピンクのショールを肩に掛けた里子が言うと、よそ行きのおめかしの服がとてもよく似合っている4歳になったハルも目をキラキラさせ

「ななちゃんきれい!」と菜々子を絶賛した。

菜々子はハルの言葉にニッコリした。ハルの隣では——こちらはよそ行きの服が窮屈そうな2歳のリョウが——いつもと様子の違う菜々子に戸惑った様子でキョトンとしている。



式が終わり、義弟の晃に「お義姉さん」と言われ不覚にも里子は照れてしまった。男兄弟のいない史郎は隣で嬉しいがっていた。




披露宴は滞りなく行われた。

袴姿の晃と色打ち掛けの菜々子。お色直しで晃は白いタキシード菜々子は淡いオレンジ色のカクテルドレスで登場。

ひとつひとつのテーブルを回りキャンドルサービスをし、ケーキ入刀の後は2人が向き合いお互いにケーキを食べさせた。


幸せそうな菜々子に里子と和代は胸が熱くなった。同じテーブルでは、食事に夢中のハルとリョウ、史郎と照良はほろ酔い気分になっていた。





菜々子の式から2ヶ月経った頃、里子は体調の変化に気づいた。

そんな時菜々子から電話がかかってきた。


「あら菜々子。どう、新婚生活は?ちゃんと主婦もしてるの?」

「もちろんよ。あたしこう見えても家庭的なのよ」

「あら、知らなかったわ」

お互い「ふふふ」と笑いながら最近あった事を話した。

「それでねお姉ちゃん——あたし赤ちゃんできたの」

菜々子の突然の報告に里子は喜んだ。

「おめでとう!体調は?仕事はどうするの?」

「うん、ちょっと悪阻が始まったみたいで気持ち悪いんだ。仕事はこれを気に辞めたんだ」

「そうなの……」

何か言おうとして里子は黙った。

「どうしたのお姉ちゃん?」「うん……もしかしたらあたしも出来たかもしれないんだ」

「本当?おめでとう。お姉ちゃんと一緒だと心強いな」



しかし、それから二週間後2人共残酷な運命を強いられる事となった。


あの電話の後から悪阻が酷くなり入院して頑張っていた菜々子だったのだが……。


「同じ時期に妊娠して同じ様にお空に返しちゃうなんて……いくら仲良し姉妹だからって神様は意地悪だね」

しばらくショックで落ち込んでいて連絡が途絶えていた菜々子だったが、少しずつ落ち着いた後にこんなメールが送られてきた。


初めての妊娠にあんなに喜んでたのに…

本当に神様って意地悪……。


里子も大切な宝物を二度も空に返してしまい落ち込んだ。


しかしハルとリョウがいる。大切な子供たち。里子たちを守ってくれる史郎もいる。


里子はカラッと晴れた空を見上げた。


あたしのお空の赤ちゃん、菜々子のお空の赤ちゃん、仲良くしてる?遊び終わったらまたママのところに帰っておいで。

今度はこっちでママと遊ぼう。


ずっと待ってるからね。





二年後菜々子は長女を出産しその三ヶ月後里子も三人目となる男の子を無事出産した。



「かわいいね」

「そうね」


並んで寝ている二人をみて菜々子が微笑む。


「晃くんなんて桃香(ももか)にメロメロでしょ?」

「そうなの、もう可愛い可愛いってすごいわよ。この間なんか『お嫁には出せないわね』って冗談で言ったらすごい剣幕で怒り出してね」

里子と菜々子は大笑いした。

「お姉ちゃんはもうベテランね」

「そんなことないわよ。結構忘れてるものよ。蒼空(そら)を初めて抱っこしたとき『赤ちゃんってこんなに小さかったかしら』って思ったもの」


今では幼稚園に通うハルとリョウが庭で遊んでいる。

「あの子達もこんなに小さかったのよね」とにっこりした。


二人は毎日のように兄弟喧嘩をし毎日里子の怒る声が家中に響き渡り、毎日が騒がしい坂上家。

そして日々逞しくなっているハルとリョウ。


里子と菜々子が育児について楽しく話している静かな時間は突然終わりを告げた。



「ママーお兄ちゃんがー」

「違うよ!リョウが!!」


泣きながらリョウが家に飛び込んできた。ハルも続けて入ってくる。


「もーなんで喧嘩ばっかりなの?」

水遊びでびっしょりになったハルとリョウ。里子はシャワーを浴びさせるため二人を風呂場に連れて行った。

小さな二人が寝ている部屋まで風呂場の大騒ぎが聞こえてくる。


そんな中でも桃香と蒼空はぐっすりと寝ている。

「お兄ちゃんたちスゴいね蒼空。お前は逞しくなるんだろうね」

菜々子は寝ている蒼空を見つめて言った。



外は夏の日差しが照りつけ、雲一つない青い空が広がっている。



あたしの育児はこれからね。お姉ちゃんにもいろいろ教えてもらわないと。



明日はどんな発見があるのかしら。

明後日は?

そのうち桃香も蒼空も大きくなりあっという間に歩き出すんだろう。

楽しみだわ。




風呂場からの騒がしい声を聞きながら菜々子は思った。




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