置き手紙
次の日仕事から帰ってきた史郎は、いつもは点いている玄関の外灯が点いていないことに気がついた。
疲れて寝ちゃったのかな?
そんな事を思いながら呼び鈴を押したが反応がない。
何度か呼び鈴を押してしばらく待ったが誰も出てこない。
仕方なく自分の鍵を取り出し玄関を開けた。
「ただいまー。」
いつもなら廊下を走り史郎を出迎えてくれるハルの姿もない。それどころか家の中が暗く人の気配はない。
不思議に思いながら台所の電気を点けると、ダイニングテーブルの上に紙切れが一枚…
「しばらく実家へ帰ります」
紙切れを手に史郎は呆然とした。
なぜ?
何があった?
俺が何かしたか?
なんでだ?
頭の中で考えてみたが史郎には思い当たる節がなかった。
とりあえず里子の携帯へかけてみた。
「お客様のおかけになった電話は電波の届かない……」
携帯を切っている。それならばと里子の実家へかけてみた。
「…こんばんは。夜分遅くにすみません、史郎です。えっと…里子はいますか?」
義母が里子を呼んでくれた。
「……里子!?あっすみませんお義母さん…。…はい…はい、そうですか…。いえ、きっと何か勘違いをしているのかと……。……分かりました。ではよろしくお願いします。夜分遅くに失礼しました。…はい、おやすみなさい」
里子は電話に出なかった。
それどころか、電話にはでたくないと言ったそうだ。
義母の話によると、今日の午前中に突然ハルとリョウを連れてやってきたらしい。そしてしばらく泊めてほしいと。
理由を聞いても何も言わないそうだ。
何かとても思い詰めている様子だったらしい。
史郎はネクタイをむしり取りソファーに座ると考え始めた。
今朝はいつもより口数が少なかったけどいつも通り送り出してくれた。
今朝じゃなかったら昨日?昨日はなにをしたっけ?
休みだったから遅くまで寝てたな…。まあ、それは毎週同じ…。
そういえば午前中にみんなで買い物に行ったな。別に変なものは買ってないし。
午後はのんびりとテレビみながらゴロゴロして、ハルとも遊んだ。久しぶりのスキンシップ、楽しかったな。
夕飯も相変わらず美味かったし…
里子も普段と変わらなかったと思う…
昨日じゃなければもっと前?なんかあったか?
「あー!!なんだ?何でだよ。なにが不満だったんだ!」
里子がいくら考えても思い当たる節は思いだせなかった。
もう考えても埒があかない。
適当に夕飯を食べ風呂を沸かし湯船に浸かった。
いつもはリョウを入れた後にハルが入ってくる。だが、今日はひとりだ。風呂場が広く感じる。