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エルフさんは飢えている  作者: 四ノ宮士騎


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第二話 焼き鳥

「腹減った」

 俺は自分の腹を抱え、力なく呟きながら木々で覆われている森の中を見回して、いつも食っている草を見つめながら呟いた。

「かといって草はもう食いたくねぇし、どうすっか?」

ちなみに俺の今の格好はこうだ。

草木の繊維で編み込んだ服に、草をなめした草革の靴。お尻に短剣と腰に細身のショートソード。背中には弓。典型的な森エルフの格好だ。

「ん、そういえば着の身着のままで来たから仕方ないが、この格好も変えないとな。かといってかえの服はないし、どこか人間の村にでもついたら服を交換してもらおう」

楽観的に考えて自分の服装については考えるのをやめた。

とそんな時空の上に気配を感じた。鳥だ。名前も知らない鳥が飛んでいるのを見つけ、木にとまるのを見届ける。

「おっあれ狙ってみるか?」

エルフの大森林では殺生自体禁じられていたが、今俺の居るこの森はエルフ大森林からだいぶ離れているから大丈夫だろう。そう思った俺は、エルフの国の防衛のためにと日々いやいややらされていた弓の弦に指をかけ矢筒から矢を一本取りだして弓の弦に矢をつがえる。そして、一瞬ののち木にとまっていた一メートルほどの鳥を射抜くことに成功していた。


 鳥を落とした俺は羽をむしり鳥の下処理をした後さばきにかかった。

「肉だ肉。まず食べやすい大きさに切ってと」

 アイテムボックスから取り出した丸太のテーブルに木でできたまな板で鳥をさばき始めた。

数分後にはあら不思議。食べやすい大きさに切られた鳥が、俺の目の前のまな板に乗っていた。

俺は適度な大きさに切り分けられた鶏肉を、近くの木の枝を削って作った串に突き刺していく。

 その後焚火を起こし、串に突き刺した鶏肉を焚火の周りに刺して、時々ひっくり返したり塩を振りながら遠火の弱火であぶっていく。

すこしすると焼き鳥の完成だ。

「おおっ夢にまで見た焼き鳥!! まさかこんなところで食べられる日が来るとは思わなかった。では、いただきます!」

 日本式に手を合わせて食前の儀式を行う。そう日本式でだ。

そう何を隠そう俺は元日本人の転生者だったのだ。

そういうわけで簡単な調理法ならば知っているし、日々の草生活に我慢ができなかったのである。

焼き鳥を貪り食いながら感想を漏らす。

「やっぱうめえ! 焼き鳥最高!! もう死んでもいい!!」

「そんなにおいしいのかい?」

どこからともなく声が聞こえてくる。

「ん? ああこれはたまらないぜ!」

「そんなにかい?」

「ああ、たまらないな」

「そこまで言うなら僕にも一つ分けてくれないかい」

 俺の服のすそを引っ張ってくる。

そちらを見ると見慣れた格好をしたエルフがいた。

「ってエギルッお前ついてきてたのかよ!」

「うんアル。まぁ僕は君のお目付け役みたいなものだからね。当然だよ」

 エギルが笑顔で笑いかけてくる。

「そんなことよりっアルフレッド・フェンリル・ドヌーシャ。僕にもその焼き鳥、という物を食べさせてくれやしないかい」

「まぁいいぜ。たくさんあるし」

「本当かいっありがとう」

いうなり電光石火の早業で焚火の周りに刺している串を一本つかみ取り、これまた電光石火の様な早業で口へと運ぶ。

むぐむぐむぐむぐむぐ。

「なっなっなっなんなんだいこの食べ物は、ただ塩をかけて焼いただけなのにっ暖かくて弾力があって噛めば噛むほど味が出てくるっこんぬあおいしいものたへたことがないひょ!」

 焼き鳥のあまりのうまさにエギルの口が止まらない。

「エギルッうまいのはわかるが、行儀が悪いから口の中のものは飲み込んでからしゃべれよ」

「あっうっうんごっごめふっ」

ごくんと咀嚼していた焼き鳥を飲み込む。

「ふぅ~~ほんとアル僕はこんなおいしいもの初めて食べたよ」

「そうかっまぁ焼き鳥はうまいからな」

「この料理は焼き鳥っていうのかい?」

「ああ」

 エギルに答えながら鶏肉を串にさして、次の串を焼き始める。

 俺の動作を見つめながらエギルも俺が焼き始めた串焼きを見つめながら声を出す。

「にしてもアルフレッド・フェンリル・ドヌーシャ。君の作る料理はいつもおいしいね」

「そうか? 俺は毎日草料理ばっかりだったからな。飽き飽きしてたんだがな」

「う~ん君はそうかもしれないけど。エルフの里では味のついた草料理ってだけでも僕にとってはごちそうだったからね。ほら長老たちやほかのエルフたちは食事に味をつけるってことじたいしていなかったじゃないか?」

「まぁ確かにな」

 長年生きているエルフはやりたいことはやりつくしていて、生きることへの執念?みたいなものがない。そのため日々食べる料理も、ただの栄養補給という面が強くて、ほとんど味がついていないのだ。そのためアルが作る料理以外は味がないかただの塩味だけの味気ないものになっていた。そしてたいていのエルフたちがそんな生活をしていたせいで、若ボケが進んでいったのだ。

「でだエギル。お前は俺について人間の国にくるのか?」

「当り前さなんてったって、アルフレッド・フェンリル・ドヌーシャ。僕は君のお目付け役だからね」

満面の笑顔で焼き鳥をほおばりながら答える。

「だったらその長ったらしい呼び方はやめてくれ」

「長ったらしい呼び方って君の名前のことかい?」

「ああ、そんなエルフ独特な呼び方をされたら俺が一発でエルフだってばれちまう」

「う~ん確かにそうだね。だったら何て呼べばいいんだい?」

「アルだ。俺のことは名字のないただのアルと呼んでくれ」

「わかったよアルフレッド・フェンリル・ドヌー……いやアル」

「よしそれでいい。それともう一つ」

「なんだい?」

「その私はエルフですよと吹聴して回っているようなその長耳をどうにかしろ」

「う~んそんなこと言われても。僕は君みたいに耳を切り落とすつもりはないよ」

「じゃあ帰れ」

「まぁまぁ待ってよ。ようするにアル。君みたいに長耳を切り落とさなくても、このエルフの特徴たる長耳をどうにかしたらいいんだろう?」

「ああまぁそうだな」

「だったら……」

エギルが古代語を唱える。

すると、エルフの長耳が人間の耳へと姿を変えた。

「なっ⁉ そんな便利な魔法があるならどうして俺に教えてくれなかったんだ! 教えてくれさえすれば俺が長耳を切り落とさないで済んだのに!」

憤る俺を見てエギルが呆れたように答える。

「それはアル。君が僕の意見を聞かずに先走ったからだろう?」

「うっくっそれはっ」

「まぁ今からでも遅くはないよ。その切れた長耳、僕の回復魔法で治してあげようか?」

「う~ん。やっぱいいや、これは俺のけじめみたいなもんだからな」

「そうかい? それなら無理にとは言わないよ」

「まぁ必要になったら頼むわ」

「うん。わかったよ」

こうして俺とエギルは二人でさらなる美食を求めて人間の国へと旅立って行った。


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