9.似た者同士。
「なー、凛。ひよりちゃんって連絡とれたか?」
「取れないのよ。」
次の日、朝帰りした新太郎と凛はリビングのソファーに座っている。
「ちゃんと帰れたかな〜。」
凛は心配そうにスマホを見つめている。
「涼も連絡とれないし・・・あっ!」
「何?連絡きた?」
「あぁ、とりあえず二人ともちゃんと帰れたから大丈夫だ!
だとよ。」
「あ〜、良かった〜。」
「うん。でもこれ、あの二人何か進展あったな。」
「そんな気がする~!」
凛は嬉しそうにしている。
「よし、月曜日に問いただしてこよう。」
「あははっ!私もひよりに聞こーっと!」
新太郎と凛は嬉しそうに笑った。
「何、なに?二人共楽しそうね。」
凛の母がキッチンから話しかけてきた。
「そうなんだ〜!お母さん!ひよりに彼氏ができるかも!」
「えっ!?ひよりってあの男の子が嫌いなひよりちゃん?」
母は目を丸くしている。
「そう!お兄ちゃんの親友を紹介してみたんだ〜。そしたら、何でか分からないんだけど、ひよりすごく気に入ったみたいで。」
「まぁ、不思議な事もあるのね。」
「うん!」
凛は、親友の幸せを願いながら微笑んだ。
「さぁ、何があったか話してもらおうか!」
月曜日、新太郎と涼は大学の人気のないベンチにいた。
「・・・。」
「おぃ!黙るな!
涼よ、お前、俺の事は面白おかしく聞いてきたよな〜?」
「分かったよ。」
「何だ?やけにモジモジしてるじゃないか?」
「いや、全てを話すと俺の男としての威厳というか、面目が。」
「何だそれ?」
「あー!もういい!新太郎には感謝してる。話すよ。」
「よろしい。」
涼は、つつみ隠さずにあの夜の出来事を話した。
「と、言う訳で、ひよりちゃんと付き合う事になった。」
「そうか、良かったな!
そうか、そうか。」
新太郎は嬉しそうにしている。
「良かったのかな。
その後は最悪だった。」
「最悪?」
「ひよりちゃんと俺は、お母さんにバレないように、洗面所にこっそり忍び込んで、俺は風呂で体を洗い、ひよりちゃんは俺の下着を洗濯してくれた。」
「それはご愁傷さまだな。」
「それだけならまだましだったんだ。
いや、既にきついが。」
「まだ何か?」
「洗面所を二人で出たら、お母さんが立っててさ。」
「で?」
「ひよりちゃんが、お母さんの言う通りにしたらこんな事になったじゃなーい!ってつつみ隠さずに話し出してさ。」
「きっついな〜。」
「だろ?」
「あぁ、ご愁傷さまだ。」
「お母さん、一人でひよりちゃんを育てたからか、男気ありすぎなんだよな〜。
それを聞いてお母さんなんて言ったと思う?」
「何て言われたんだ?」
「ちっ、童貞だったか。
だとよ〜。」
「お前、良く頑張ったな。
俺はその場で正気を保っていられる自信がないぞ。」
新太郎は、涼を誇らしげに見つめた。
「わ、笑わないのかよ?さっきからやたらと共感してくれるよな?俺は散々お前をヘタレ呼ばわりして笑ったのに。」
「・・・それについては、後で話そう。」
新太郎はモジモジしている。
「いや、お前も何かあったのかよ?」
「そうだな。男の威厳と言うなら、俺は涼を笑わない。
・・・いや、笑えない。」
「ん?と言うと?」
「あの日、俺達も家まで帰るのしんどくてさ、その、ラブホテルとやらに入ったんだ。」
「ま、マジかよ!」
「あぁ。マジだ。」
「で?」
「俺はあの日、卒業するつもりだったんだ。」
新太郎は、悪夢を思い出すかの様に、あの日を思い出す。
バサッ!
「わぁ〜!ベッド大きいー!」
凛は楽しそうにベッドに飛び込んだ。
「お兄ちゃんも来てよー!」
「あぁ。」
新太郎は緊張した様子でベッドにゆっくりと座る。
「いや、飛び込むとこでしょ?」
凛は、ガチガチに緊張した新太郎を目を細めて睨む。
「すまん・・・えっ?」
新太郎は、何かを見て固まっている。
凛は新太郎の目線の先を見た。
「わぁ〜ここからお風呂丸見えだね。」
二人の視線の先には、透明なガラスで囲まれた風呂がある。
「すごい所だな。」
「そ、そうだね。」
「凛、先に入れよ。」
「え〜、お兄ちゃん絶対見るでしょ?」
「まぁ、否定はできんな。」
「見られながら入るのはちょっとな。」
「仕方ないだろ?」
「じゃあ一緒に入ろうよ!」
「えっ?」
新太郎は、ドキドキが止まらない。
「見られながらよりは、一緒に入った方が恥ずかしくないし。」
凛も顔が少し赤い。
「そ、そうだな。」
湯船にお湯がたまると、
お互い、背中を向けて服を脱ぎだした。
新太郎は先に脱ぎ終わると、凛の後ろ姿を見ている。
「えっ?何?お兄ちゃん、見過ぎ。」
凛は恥ずかしそうにする。
「いや、これ。」
「キャッ!」
新太郎は、凛の尻に指先で触れた。
「あっ、すまん。つい。」
「な、何?何か付いてた?」
「いや、ここにハート型のホクロが。」
「そんなのあるんだ。
私からは見えないな〜。」
凛は体をひねっている。
「なんか可愛いなと思って見入ってしまった。」
「そ、そう。」
凛は恥ずかしそうにしている。
「入るか。」
「う、うん。」
新太郎と凛は、一緒に風呂に入り、体を洗った。
先に洗い終わった新太郎は、湯船に浸かった。
「あ〜。酒飲んだ後は風呂が気持ちいいな〜。」
「ははっ。それは良かった。」
体を洗い終わった凛は、足を伸ばした新太郎をまたぎ、太ももに座ると、もたれかかった。
「お、おぃ、凛。」
「なに〜?」
「いや。」
新太郎は、余裕を見せている凛に仕返ししてやろうと、凛の胸元に手を回した。
「うっ。」
凛は声が出そうなのを耐えている様子だ。
「お兄ちゃんのえっち。」
「余裕そうにしてるから仕返しだ。」
「ふ〜んだ。
・・・何かお尻に当たるんですけど〜?」
凛は、手を伸ばしてきた。
「ま、待て!今ダメだ凛!」
凛がいたずらな顔をしてそれを握った。
「・・・えっ?」
驚いた顔で凛は振り向いた。
涼は、同士を見つめる様な眼差しを新太郎に向ける。
「そ、それはご愁傷さまだな。」
「あぁ。お互い大変だったな。」
新太郎は、涼を見て苦笑いした。
「だけどさ、新太郎、その後は?」
「後?」
「風呂出てからだよ。」
「あぁ、酒のせいか、精神的ダメージのせいか、反応しなかったよ。」
「そ、そうか。」
涼は、新太郎の肩に手をおいて笑った。
「まぁ、俺の話は以上だ。」
「そ、そうか。」
二人は、ベンチで並んで俯いた。




