7.二人の親友。
「と、言う訳なんだが。」
新太郎は、晩御飯のあと、今日あったことを凛に話した。
「はぁ・・・私、全部知られてるお兄ちゃんの友達に会うの恥ずかしいんだけど。」
凛はベラベラと全て話した新太郎をため息をつき、不満気に睨んでいる。
「すまん。凛は?誰にも言ってないのか?」
「・・・。」
「言ったな?」
「はい。親友に。」
「俺も涼は親友だと思ってる。」
「なら・・・許そう。
で、その涼くんに誰かいい子がいないかって話だったよね。」
「あぁ。まぁ、いなければ謝っとく。」
「う〜ん。私もその親友くらいしか紹介できる子はいないけど。」
「涼は、良い奴だし、心配無いぞ?」
「うん、ただその子、ひよりって言うんだけど、男の子と話すのが苦手なのよね。」
「涼は良く話すし、丁度いいかもしれん。」
新太郎は、腕を組み、涼を思い浮かべた。
「まぁ、暗いお兄ちゃんの相手をしてくれる人だもんね。」
「おぃ。」
「あはははっ。分かった、聞いとくね。」
「助かるよ。」
「お兄ちゃん、今日からは別々に寝ようか。」
「何で?」
新太郎は少し寂しそうにする。
「だってお兄ちゃんが寝不足で倒れそうだし。それに、お母さん達が帰ってきたら一緒には寝れないでしょ?」
「まぁ、そうだな。分かった。」
「じゃぁ、私、ひよりに電話してくるね。おやすみ。」
チュッ。
「うっ・・・あ、あぁ。おやすみ。」
突然キスされた新太郎は顔を赤くする。
「照れてる〜可愛い。」
「う、うるせぇ。」
凛は、自分の部屋へと階段を上がっていった。
新太郎は、少し寂しい気分になりつつも、今日はぐっすり寝ようと心に誓った。
「おぃ、貧乏ゆすりやめろ。」
「・・・あ〜無理〜、自分から頼んだものの、緊張する。」
新太郎と涼と凛は、凛の通っていた高校近くの居酒屋で、ひよりを待っている。
「あはははっ!涼くん、緊張しすぎー!」
「だってさ。」
「涼くん、いつもお兄ちゃんと仲良くしてくれてありがとう。」
凛は、涼の緊張をやわらげようと、話しかけた。
「い、いや、こちらこそ新太郎がお世話になっております!」
「あはははっ!何それ〜。」
「俺はお前の子供か何かか。」
新太郎は不満気だ。
「まぁ、二人が幸せそうにしていて、俺は嬉しいよ。」
「ありがとう。」
凛は、嬉しそうに新太郎を見ると微笑んだ。
「ひよりは美人だよ〜?」
「えっ?そうなの?」
涼は期待と不安に押しつぶされそうになっている。
「がんばれ〜!私とお兄ちゃんの親友同士が仲良くなってくれたら、私も嬉しいし!」
「うん・・・善処します。」
「かったーぃ。あはははっ!」
「ごめ〜ん!遅れた!
近くまで来てくれたのに遅れてごめんね。」
涼の緊張がほんの少しやわらいだ所で、ひよりが到着する。
「大丈夫だよ。いきなりごめんね。」
凛は、ひよりとの久しぶりの再会に嬉しそうにする。
「久しぶりだね。」
ひよりも嬉しそうにしている。
「うん。久しぶりに会えて嬉しいよ。」
凛は、再会を喜びながらも、固まっている新太郎と涼を睨む。
「涼くんはともかく、お兄ちゃん、ひよりに見とれてない?」
不満気に凛は新太郎を睨む。
「いや、すまん。」
「ゔ〜。お兄ちゃん最低!」
凛は怒っている。
「凛、仲がいいのは分かったから〜、私も注文していい?」
ひよりは、人見知りがひどく、一刻も早くアルコールのお世話になりたかった。
「ごめんごめん。注文どうぞ。」
凛は、注文用のタブレットをひよりに渡した。
ひよりが注文し終わったのを見て、凛は立ち上がる。
「それでは、こちらが私のお兄ちゃん件、彼氏の新太郎で、
こちらが電話で話した涼くん。」
「あっ、どうも。山田 涼です。」
「は、はじめまして、橋本 ひよりです。」
ひよりは、ハッとしたような顔をしたが、涼と目が合うと、俯く。
「二人とも固すぎー!」
少しアルコールの入った凛は、楽しそうに笑っている。
ひよりもカクテルを注目し、テーブルに運ばれてきた。
「じゃぁ、緊張しすぎの涼くんの変わりに、私が乾杯の挨拶をしまーす!」
凛がグラスを手に取り前に出すと、残りの3人もつられてグラスを前に出した。
「それでは、涼くんを代弁しまして、ひより、君との出会いに乾杯。」
凛はニヤけながらグラスを当てる。
カラン。
「ゴクゴク。ハァー!」
4人は、美味しそうにグラスに口をつけた。
「凛ちゃん、今のめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。」
涼は、凛を照れた表情で見た。
「えっ?代弁できてたでしょ?」
凛はニヤニヤしている。
「まぁ。」
涼は恥ずかしそうに俯く。
「ねぇ、涼くん、ひよりに聞きたい事とか無いの?」
「えっ突然言われてもな〜。」
涼は珍しく大人しい。
「ひよりは〜?」
「・・・。」
ひよりは恥ずかしそうに俯いた。
「せっかくこうして集まってるんだし、何かないかな〜。」
凛は不満気にする。
「二人共緊張してんだから、ゆっくりでいいんじゃない?」
新太郎は、凛の空回りを止めようとする。
「ちぇ〜。」
凛は不満気に立ち上がった。
「涼くん、席変わって〜。」
凛は涼を押しのけると、新太郎の隣りに座った。
「お兄ちゃ〜ん。」
凛は新太郎に甘え出す。
「おぃ、もう酔ってるのか?」
新太郎はもたれかかってくる凛を支えた。
「酔ってないよ〜。」
凛は楽しそうだ。
「あ、あの、座れば?」
立ちつくしている涼に、ひよりが声をかけた。
「あっ、うん。ありがとう。」
涼はひよりの隣りに座った。
「凛ちゃん、酒弱いの?」
「そうだな〜、弱いと思う。」
「あれは演技ではないんだな。」
「うん。」
「なんか可愛いな。」
「・・・そ、そうだね。」
「あ!いや、俺はひよりちゃんの方が好きだ!あ!いや!好き?好きって言うのはその!」
「ふふっ。あはははっ!」
「えっ?」
突然笑い出したひよりを見て、涼は固まった。
「ごめん。別に凛が可愛いって言ったからって気分損ねたりしないよー。
すごい焦ってるから面白かった。」
「そ、そう。緊張してちゃんと話せなくてごめん。」
涼は照れている。
「大丈夫。私も、緊張してるから。」
「そ、その、期待してきた?
俺みたいなのでごめん。」
「えっ?私、涼くんの第一印象は悪くないよ?」
「えっ?本当に?」
「うん・・・その、涼くんは?」
「・・・可愛い。いや?美人と言うのが正解か?天使か女神と言われれば信じてしまいそうだよ。」
「ふふっ。何それ〜。
今のはチャラいからマイナス1点。」
「えっ!嘘!?」
涼は落ち込んだ様に俯いた。
「ふふっ。涼くん面白いね。」
「・・・何だか掌の上で転がされてる様だが?」
涼は口を尖らせてスネている。
「そんな事ないよ。
私、男の人と話すのあんまり好きじゃないんだけど、やっぱり涼くんとは不思議と話せる。」
「それは男として見られてないと?」
「ふふっ。どうかな〜。私もこんな事初めてだから良く分からない。」
「・・・まぁ、いい意味として受け取っておく事にする。」
「うん。」
二人は照れた表情で俯いた。
それから、涼とひよりは楽しそうに話している。
「ねぇ、お兄ちゃん。あの二人いい感じじゃない?」
凛は酔いながらも、ひよりが楽しそうなのを見て嬉しそうにする。
「うん。良かった。凛、ありがとう。」
新太郎も嬉しそうに笑った。
「こちらこそ。ひよりがあんなに楽しそうに男の人と話せるなんて驚いたよ〜。」
「そうなのか?よっぽど相性が良かったのかな?」
「かもね・・・お兄ちゃんは残念?」
「ん?意味が分からんが?」
「ひよりに見惚れてたよね?」
凛は新太郎を睨んでいる。
「まぁ、美人だし。」
「最低〜。」
凛はスネている。
「あれだ、例えば山の頂上の景色に見惚れて固まるとか。でも、一緒に山に登った隣りの凛とその後見つめ合って、幸せを感じるみたいな。」
「ちょっと意味分かんない。
ムカつくからキスして。」
「はぁ!?無理。帰ってからなら。」
「じゃあ許さない。それに帰ったらお父さんとお母さんいるけど?」
「ゔ。」
「早く。」
凛は目を閉じる。
仕方なく新太郎は凛に唇を重ねた。
「えっ!?お前ら何してんだよ!」
涼は、距離の近い二人をチラチラ見ていたが、ついにキスをしたのが視界に入り、騒ぎ出す。
「すまん。しないと許してもらえなさそうだったから。」
新太郎は、呆れた表情をしている。
「何だよそれ・・・って!え!?」
凛と新太郎を羨ましそうに睨む涼の肩に、ひよりの頭が寄りかかった。
「ひよりちゃん?」
涼は恐る恐る、ひよりを見た。
「ご、め〜ん。実は私もお酒弱いんだよ〜。」
ひよりは、一杯しか飲んでないのにもかかわらず、顔が赤く、今にも眠りそうにしている。
「え?大丈夫?水たのもう!」
涼は、ひよりと凛の分の水をすぐに頼んだ。
「ひよりちゃん、飲んで。」
涼は、グラスを口元に近づける。
ひよりは、グラスを持つ涼の手に、自分の手を添えて水を飲んだ。
「ありがとう〜。」
ひよりは眠たそうにしている。
涼はドキドキしている。
「おぃ、新太郎。今日はもう帰ろう。」
「そうだな。この二人、酒飲ませたらダメだったんだな。」
新太郎は、凛を支えながら涼に同意する。
「もう帰るの〜?」
ひよりは少し寂しそうに、涼の腕にしがみついた。
「ひ、ひよりちゃん、送って行くよ。」
「やた〜!」
ひよりは嬉しそうにした後、俯いて、しばらく何やら考えている素振りをすると、顔を上げた。
「ダメだよ!涼くん終電ギリギリになるよ〜。間に合わないかも〜。」
「ははっ。まだそう言う事考えられるんだな。」
涼は、ふらつくひよりを支えながら笑う。
「大丈夫!私、一人で帰れる〜。」
ひよりは立ち上がると一人で帰ろうとする。
「ちょっと待って!」
涼は立ち上がり、ひよりの腕をつかんだ。
「新太郎、会計頼めるか?今度返すからさ。」
「大丈夫だ。」
新太郎はニヤニヤしている。
「ニヤニヤしてんなよ!俺は余裕ないわ!ちゃんと凛ちゃんと無事に帰れよ?」
「あぁ、涼も気をつけてな〜。」
「うん。」
涼は、少し緊張した様子で、ひよりを支えながら店を出て行った。
「何だよ!ひより帰ったのかよ!?」
凛は不機嫌そうだ。
「おぃ、凛、大丈夫か?帰るぞ。」
「ヤダー!」
凛は駄々っ子の様に叫ぶ。
周りの客の視線が痛い。
「す、すいません!お会計を!」
新太郎は、凛を支えながらようやく店を出た。
「あ〜、疲れた。
凛、酒弱いなら先に言ってくれよ。」
新太郎は、ふらつく凛をささえながら言う。
「・・・だって。私だって本当は・・・酔わないとあんなふうに振る舞えなかったもん。」
凛は頬を膨らませてスネている。
「そうか。凛、ありがとう。」
新太郎は、凛をまっすぐ見つめた。
「改めて言われると照れるな〜。」
「ははっ。照れる余裕はあるんだな。」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「お兄ちゃんは、2択を迫られている!」
「ん?」
「いち〜。私を、お姫様抱っこして帰宅。」
「なかなかつらいなそれは。」
「にぃ〜・・・。」
「2は何なんだ?」
「ホテルにお持ちかえり!」
「おぃ。」
「さぁ〜選びなさ〜い!」
「じゃあお持ちかえりで。」
「・・・マジ?」
少し酔いが覚めた表情で凛は新太郎を見た。
「まぁ、いつもと同じ事だろ?」
「違うと思うけど。家じゃないし。
お持ちかえりして何もしなかったらヘタレ確定ですが〜?」
「何でもいいよ。実は俺も緊張してたからさ、ちょっと飲み過ぎて、すぐにでも横になりたい。」
「そう。とりあえず、そこのラブホテルとやらに入ってみますか?」
「そうだな。興味はある。」
「・・・変態。」
凛は顔を赤くして俯いた。
「まだ恥じらう事はできるんだな。」
「・・・そりゃぁ、酔いも覚めるよ。」
「そうだな。じゃあそこに入ろうか。」
「うん。」
二人は、ソワソワとしながら、ホテルに足を踏み入れた。




