5.妹の気持ち。
「今何時だろう。腹減ったな〜。」
新太郎は、天井を見つめながら、小さな声で呟いた。
一晩中、凛は新太郎にくっついて寝ていた。
「う、う〜ん。」
「寝相いいな。」
寝返りはうつものの、新太郎の腕の中で器用に小さく回転する凛を見て、新太郎は感心している。
背中を向けていた凛が、新太郎のほうに顔を向ける。
新太郎が、凛をみていると、ゆっくりと目が開いた。
「おはよ。」
凛は、少し寝ぼけながら、ニコッと笑った。
か、可愛いすぎんだろ!
新太郎は、照れたのを隠す様に、天井に向けて顔を反らした。
「おはよう。」
「お兄ちゃん、本当に何もしなかったの?」
「してよかったのかよ。
お陰で一睡もできなかったわ。」
「ふふっ。頑張ったね〜。」
凛は、新太郎に擦り寄り、距離を詰める。
「こうしてると、恋人とか夫婦みたいだね。」
「な、何いってんだよ。」
新太郎は、天井を見たまま答える。
「照れてる?」
「そりゃ、こんな事、初めてだからな。」
「素直でよろしい。」
「なぁ、起きないか?
このままだと、ブレーキが壊れそうなんだが?」
「それは、どういう?」
「どう言う?と、言うと?」
「私へのライクではなく、ラブが爆発しそうって事?」
「そうだな。」
「えっ!?」
「幻滅したか?考えてみろよ。
女に免疫のない男が、凛が来てからの事を体験したんだ。
しかも一緒に住んでるんだぞ?
気持ちに蓋をしようとしたが、もう認める事にした。
俺は、凛の事を好きになり始めてる。」
「・・・お兄ちゃん。」
「だから離れないと、危険だぞ?」
新太郎は、ようやく凛の顔を見た。
「違う。嬉しいんだよ。」
「えっ!?」
「私もね、お兄ちゃんの事、好きになり始めたかも。
イケメンだし、背高いし、優しいし。
何より、一緒にいて楽しいし、落ち着く。
まだ、出会ったばかりだから大好きとは言えないけど、多分すぐにそうなる。
そう思ってる。」
「・・・親不孝な兄妹だな。」
「あはははっ!もしかして、お父さんとお母さんに気をつかってんの?」
「つ、つかうだろ?」
「う〜ん。私は、せっかく家族になるんだしって、仲良くしようと思ってここへ来た。でもね、どんな人がお父さんとお兄ちゃんになるのか不安だったし、できればお母さんと二人がいいって心の中では思って、ここへ来たんだ。
勝手に恋愛して、勝手に結婚してさ。
本当は不満いっぱいだった。
だから、子不孝者に気をつかうつもりなんてないよ。
私は、お兄ちゃんと恋人になりたいと思い始めてたんだ。」
「成る程な。確かに。
俺は、後ろめたさがあったが、そう言われると、気にしなくていい気がしてきた。」
バサッ。
新太郎は、凛を抱きしめた。
「え〜?今から?」
「いや、ちょっと自分の心と体の答え合わせを。」
「なんだそれ〜。」
凛も新太郎を抱きしめ返す。
「じゃあ、私も答え合わせしよ〜。」
グ〜。
新太郎のお腹がなった。
「はい、ムードぶち壊し〜。」
凛は、新太郎の顔をみてニコッと笑う。
「仕方ないだろ?一晩中起きてたんだから。腹もへるわ。」
「ご飯、つくってあげよう。」
凛は、立ち上がった。
「パンかご飯どっちがいい?」
「ご飯かな。」
「分かった。できたら起こしに来るから、少し寝たら?」
凛は、ニヤニヤと笑った。
「そうだな。ありがとう。」
新太郎は、目を閉じた。
チュッ。
「お、おぃ!」
目を閉じた新太郎に、凛はキスをした。
「すまん、つい。」
「いや、おっさんかよ。」
「あはははっ!私達、付き合ってるでいいんだよね?」
「・・・凛がいいなら、よろしく頼む。」
「うん!よろしくね、お兄ちゃん。」
「付き合ってもお兄ちゃんなのか?」
「う〜ん、そうだね〜、お父さんとお母さんの前では兄妹演じる予定だし。」
「そうなんだな。分かったよ。」
「うん。じゃあご飯作ってくるね〜。」
バタン。
凛は、リビングへと下りていった。
・・・付き合ってしもた。
新太郎は、頭を抱えた。




