3.妹と休日。
「う、う〜ん。」
新太郎は、ベッドの上で目を覚ました。
「あれ?もう10時か。
今日が土曜日で良かった。」
体を起こすと、少し寝ぼけながら階段を下りた。
「生活習慣が崩れたな。
良くない。
よし、顔を洗ってシャキっとしよう。」
新太郎はブツブツと独り言を言いながら洗面所のドアを開け、洗面台の前に立ち、顔を洗い出した。
バシャバシャ。
ガチャ。
新太郎がタオルで顔を拭いていると、ドアの開いたような音がする。
「あぁ、凛か。おはよう。」
「お、おはよう・・・じゃなぁーい!!」
凛をよく見ると、また裸で立っている。
「お、おい!どういう状況だ!?」
新太郎は顔をタオルで覆い、
凛はタオルで体を隠す。
「お風呂入ってたの!」
「す、すまん!気づかなかった!」
新太郎は、顔をタオルで覆ったまま洗面所を出ようとする。
「わぁっ!」
下に置かれていた体重計につまづき、体勢を崩した。
「キャッ。」
バランスを崩した新太郎は、タオルを投げ捨て、なんとかバランスを取ろうとする。
ドンッ。
「・・・・おぉ。これは、壁ドンってやつか?」
新太郎は、なんとか壁に手を当てて耐えたが、目の前には、恥ずかしそう悶えるような表情の凛が壁際に追いやられている。
「お兄ちゃん。壁ドンとかじゃなくて・・・いつまで触るの?」
「ん?・・・わぁーー!!!」
新太郎は、壁に当てた手と反対の手が、凛の胸を触っている事に気づき、焦って手を離した。
「ご、ごめん!気づかなかった!」
「・・・まぁ、わざとじゃなさそうだしいいけど。」
「と言うか、何でまた風呂入ってんだ?ついさっき入った所だろ?」
「その、普通に会話を始めるのやめてもらえると嬉しいのですが・・・その、恥ずかしいし。」
「わぁ!ごめん!」
新太郎は、焦って洗面所を出た。
「はぁ。」
新太郎はダイニングテーブルの椅子に座り、ため息をつく。
「まったく。鍵閉めろよ。このままだと先が思いやられる。」
新太郎は、テーブルの上に作り置かれた朝食に手をつけた。
「うまいな。」
味噌汁は冷めていたが、出汁の味がほんのりしていて美味しい。
新太郎は、炊飯器に向かい、茶碗にご飯をついだ。
「ほうれん草のお浸しか。うまいな。
朝食にピッタリだな。」
新太郎は、朝食をパクパクと食べる。
「美味しい?」
後ろから声がして振り返ると、凛が立っている。
「うん、すごくうまい!」
「あはは。お兄ちゃん。」
凛は、自分の頬を指さす。
「ん?あぁ。ありがとう。」
新太郎は自分の頬に何かついてるのだろうと、手で探る。
「ん?どこだ?」
「ここだよ。」
凛は、新太郎の頬についた米粒を取り、パクっと食べた。
「お、おぃ。それはちょっと。」
「えっ?別に兄妹なんだし。」
「ごほんっ。まぁ、そうだな。」
新太郎は少し照れながら、体を食卓に向ける。
「それ、私か作ったんだ。」
「えっ?凛が?料理うまいんだな。」
「ありがとう。」
「いや、こっちがありがとうだ。
そう言えば、父さんと光さんは?」
「えっ?また聞かされてないの?」
「ん?」
新太郎は、口の中にご飯を詰め込みながら、凛の方を見た。
「お父さんとお母さん、今日から1週間、新婚旅行でハワイだよ?」
「・・・ん、んんだっで?」
「ふふっ。ご飯飲み込んでから話したら?」
凛は笑っている。
笑うと可愛いいな。
いや、ダメだ!妹だ!
と言うか、今日から1週間、凛と二人きりって事か?
光さんは何を考えてんだ!
大事な娘を、見知らぬ男と二人きりにするなんて!
「だからご飯は私が作ってあげるね。」
新太郎は上の空で、凛の言葉が届いていない。
「もしも〜し、お兄ちゃん?」
「あ、すまん。驚きすぎて。何だった?」
「またエロい想像してた?」
「し、してねーよ!」
「そう。お母さんから伝言ね。
凛が可愛いいからって襲っちゃだめよ〜。だって。」
凛はニコッと笑う。
「はぁ。無理。」
新太郎はため息交じりに呟く。
「えっ?それは襲うかもって事?」
凛は少し身構える。
「ち、違うわ!父さんと光さんがめちゃくちゃすぎるって事だよ!
つい愚痴が出た。すまん。」
「そう。なら安心だ。お兄ちゃん、今日から1週間よろしくね〜。」
凛は、ソファーに座った。
「なぁ、そう言えば、風呂ってあんなに頻繁にはいるのか?」
新太郎は、ダイニングテーブルから凛に話しかけた。
「え?違うよ。さっきウォーキングにいってたから。私、油断するとすぐ太るから。」
「あ〜。」
新太郎の視線は、凛の胸元をとらえている。
「胸を見るな!」
「あ、すまん。つい。」
「お兄ちゃん、おっぱい好きなんだ〜。」
凛はニヤニヤしている。
「そうだな、好きか嫌いで言うと、大好きだ。」
「あはははっ!妹にする話?」
「凛が聞いたんだろ?」
「見たい?」
凛は、Tシャツの裾に手をかけて、今にも脱ぎだしそうにしている。
「ば、バカ!」
新太郎は、焦って叫ぶ。
「冗談だけど?」
凛は、目を細めて新太郎を睨む。
「ざけんなよ。」
新太郎は、不機嫌そうに朝食を再会した。
「なぁ、凛は何でそんなに好意的に接してくれるんだ?」
新太郎は疑問に思っていた。
思春期のしかも見た目ギャルな凛だ、二人になった時は雑に接してくるだろうとばかり思っていた。
「そうだな〜。お兄ちゃん悪い人じゃないし〜、イケメンだし〜、背も高いし〜、後は・・・。」
「後は?」
「お兄ちゃん、アニメ見る?」
「あぁ、それなりに。」
「親の再婚で、大嫌いな超イケメン王子と兄妹になりました。ってアニメ見た?」
「見たぞ?」
「私、あのアニメ見て、お兄ちゃんに憧れたんだ〜。まぁ、実際できたお兄ちゃんはプラス変態要素があったんだけど。」
「いや、あれは事故だ!」
新太郎は、気不味そうにしている。
「あはははっ!冗談だよ〜。」
「でもあのアニメ、兄妹の恋愛ものだろ?最後、結婚したんだっけ?」
「そうだね。お兄ちゃん次第では、そう言う結末もありだな〜。」
「おぃ。たまに冷やかし入れてくるのやめろ。」
「あはははっ!そろそろ慣れてきましたな。お兄ちゃん、ここ座って。」
凛は自分の座るソファーの隣りをポンポンと叩く。
「え?うん。」
丁度朝食を終えた新太郎は、凛の隣りに座った。
「お兄ちゃん、恋愛もの見るんだね。」
「あぁ、自分と父さんの世話で精一杯だったし、真夜中によく恋愛ものとか友情ものを見て、疑似体験してた。」
「げ〜、なんか寂しい。」
「仕方無いだろ?俺だって本当は、恋だの友情だの悩んだり、喜んだりしたかったんだよ。」
「ごめん、ごめん。
よしよし。」
凛は、新太郎の頭を優しく撫でた。
「おぃ、お触り禁止。」
新太郎は、凛の手を取り膝の上に下ろした。
「まぁ、さっきガッツリお触りした人に言われたくないわ〜。」
「だ、だからあれは!」
「事故!で済むと思う?」
凛は真剣な顔で新太郎を見る。
「す、すまん。本当は怒ってたのか?」
新太郎は反省した表情で凛を見つめる。
「ふふっ。あはははっ!」
「お、お前!本気で焦っただろ!」
「でも、嫁入り前の乙女の胸を鷲掴みにした罪は重いよ〜。」
「悪かったよ。」
「うん。」
凛は、テレビのリモコンを取り、テレビをつけた。
「昨日、テレビ見てたら気づいたらあの時間だったんだよね〜。
テレビって悪だわ。
あっ!更新されてる!
お兄ちゃん、これ見てる?」
「あ、うん。」
「転生先が無人島とか最悪だよね〜。」
「そうだな。でもまぁ、美女が流れ着いて、二人で生活なんて羨ましい限りだ。」
「へぇ〜。羨ましいんだ。」
「うん、羨ましい。」
「じゃぁ、これ見ようよ。」
「そうだな。」
凛が再生を押すと、テレビにアニメが映る。
しばらくして新太郎は後悔した。
こ、これは失敗だ。
兄妹で見てはいけないやつだ。
新太郎は、話の流れから想像していなかった、まさかのラブシーンを前に気不味そうにしている。
「お兄ちゃん、興奮してんの?」
「はっ?してねーし。」
「私はちょっと。」
「お、おぃ。」
「正直な感想だよ。」
「そ、そうか。」
新太郎は、テレビの画面に集中する凛を見つめた。
何だろう?
凛が綺麗に見える。
まぁ、それなりにいい顔立ちだしな。
・・・兄妹婚か。
はぁ!俺は何を考えてんだ!
「何?見過ぎじゃない?」
凛は、自分を見つめる新太郎の視線に気づいた。
「いやっ。」
新太郎は、焦ってテレビに視線を戻した。
「あー!終わっちゃった〜。
ほんと毎回いいとこで終わるよね。」
「そうだな。」
「毎回、完結してくれるとスッキリするのにー!」
凛はイライラしている。
「あはははっ。いい鴨だな。」
「そうだね〜。
そう言うお兄ちゃんも毎週見てるんでしょ?」
「まぁ、見てる。」
「鴨兄妹だね。」
凛はニコッと笑う。
・・・笑うと可愛い。
かなり可愛い。
笑うの禁止にするか?
新太郎は、真剣に悩んでいた。
「コーヒーでも飲む?」
「入れてくれるのか?」
「うん、私飲みたいからついでにね〜。」
凛が立ち上がると、新太郎も手伝おうと立ち上がった。
「ねぇ、お砂糖とミルクは、キャッ!」
不意に振り向いた凛は、新太郎が後ろに立っていたのに驚き、バランスを崩した。
バタン。
立ち上がり座間の力の入らない新太郎に、凛が寄りかかり、二人はそのままソファーに倒れ込んでしまっている。
「んー!!!」
倒れながら、新太郎は凛を庇う様に抱きしめ、そのまま衝撃で一瞬ぼっーとしていた。
何やら凛がバタバタしている。
「わぁー!!」
新太郎は、驚いて凛を持ち上げた。
「ハァハァハァ・・・息できなかったよ。」
凛は恥ずかしそうに、目を反らした。
「・・・キスしちゃったね。」
「そ、そうだな。」
「もぅ。ファーストキスがお兄ちゃんとか!」
「えっ!?そうなのか?」
「どうせお兄ちゃんもでしょ?」
「まぁ、彼女できたことないしな。」
「そっ。なら許そう。」
「いや、今のは凛が悪くないか?」
「う〜ん。お兄ちゃんが倒れないで私を受け止められるくらい鍛えてれば良かったんだよ〜。」
「はいはい。ヒョロくて悪うごさいました。」
「ふふっ。あはははっ!」
「笑っていいのかよ?ファーストキスだろ?」
新太郎は、申し訳無さそうにしている。
「別にいいよ、嫌じゃなかったし。
それに、減る物でもないしね〜。」
「男前だな。」
「何それ〜。コーヒー入れるね。」
「うん、頼む。大人しく座っておくよ。」
涼の言っていたラブコメ展開をコンプリートしてしまった。
しかもソファードンどころか、キスまで。
恐ろしい、ラブコメは現実に起こりうるんだな。
新太郎は、だんだん凛を妹として見れなくなっていた。




