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雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第五章 怠を知る者、惰に溺れる

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知りたくなかった真実

 どくん! と胸が大きく脈打つ。どうして彼がいるのか?

 なんて考えた瞬間、ラルフ・ガイツの祝福について思い出す。


 〝魔獣召喚サモン・ビースト〟。

 まさか、ここ最近出現している魔獣は、あの男が召喚した存在ものだったというのか。


 しかしどうして?

 多くの騎士や聖騎士が命を落としている。

 わざと魔獣を召喚し、戦わせる意味がわからない。


 幸いと言うべきか。

 ラルフ・ガイツとファールハイト卿はわたし達の存在に気付かずに会話を続けていた。


「ブラザー・ガイツ、本日もご苦労でした!!」

「今回の魔獣、強くなかったですか?」

「ええ!! 勝ち応えのある、よき魔獣でした!!」


 勝ち応えのある魔獣とは? いったい何を言っているのか。

 そもそも、ファールハイト卿の魔法剣はレンの魔力ありきだろう。


「魔獣は皆に恐怖を与え、他の騎士や聖騎士が勝てないのでなくては意味がないんです!!」

「ええ、ええ。そうだと思って、パッパード救貧院の院長に頼んだ生き血でたっぷり強化させた、自慢の魔獣ばかりを派遣しました」


 ラルフ・ガイツの発言を聞いた瞬間、くらりと目眩を覚えた。

 なぜ彼が、魔獣に人の血を与えていたのか。

 それは単純に餌を与えるという目的だけではなく、魔獣を強化させるためだったようだ。


「これは報酬です!!」

「ええ、たしかに」


 ラルフ・ガイツは強力な魔獣を作り出し、報酬を受け取っていた。

 きっと魔獣の派遣で得た金で、これから出世の道を開くのだろう。

 では、ファールハイト卿の目的は?

 なんて思った途端に、勝手にべらべら喋り始めた。


「これは英雄になれる、大きな一歩です!!」

「ええ、ええ、応援していますよ」


 英雄――たしかに、五年後の世界で彼は魔獣殺しの英雄として名をはせていた。

 若くして、聖騎士隊の隊長にまで上り詰めていたのだ。

 地位と活躍を手にするために、魔獣の襲撃を画策し、実行に移していたのだろう。


「しかし、今回もたくさんの聖騎士達が亡くなられたようですね」

「ええ。英雄伝に悲劇はつきものですから!!」

「わかります。多くの命がなくなればなくなるほど、英雄としての貴方の名声が高まり、存在感が増すというものです」

「そのとおり!!」


 信じられない。

 亡くなった人達の命でさえ、利用しようと考えているだなんて。

 背後にいるレンを振り返る。

 額には玉の汗が浮かび、顔面蒼白となっていた。

 ラルフ・ガイツの暗躍を知るわたしでさえ驚いているのだから、何も知らなかったレンにはショックが大きかっただろう。


 それにしても、とんでもない場面に出くわしてしまった。

 彼らが去るまで姿を隠し続けることなんてできるのか。

 絶対に見つかったら、処分されてしまうだろう。

 今はただ、息を殺して彼らがいなくなることを祈るばかりだ。


「それはそうと!! 修道女が言っていたのですが、魔獣が一頭撤退したと!! 本当ですか!?」

「ああ、ガルムのことですね。この子は育成中で、倒されるのが惜しかったものですから、ある程度聖騎士を殺したら、戻ってくるように命じていたんです」

「そうだったのですね!!」


 ファールハイト卿は魔獣の撤退を把握していなかったので、あそこまで怒っていたのだろう。


「見てください、聖騎士の血肉を食べ、さらに強くなったガルムの姿を」


 そう言って、ラルフ・ガイツはガルムを召喚する。


「――いでよサモン、ガルム!!」


 召喚されたガルムは、四度目の人生で見たときよりも、二回りほど小さい。

 ただ血濡れた獰猛な姿は変わらずであった。


 そんなガルムは、鼻先をひくひくさせていた。


「ガルム、どうしたのですか?」

「餌の臭いでもするのでは!?」


 餌と聞いてギョッとする。

 もしや、ガルムは潜伏するわたし達の匂いを感じ取っているのだろうか?

 どうする?

 レンを振り返ると、彼は剣を握っていた。

 そして、耳元で囁く。


「ヴィオラさん、私が背中を叩いたら、駐屯地のほうへ全力で駆けてください」

「レンは?」

「私はあの魔獣を食い止めますので」 


 次の瞬間、レンは私の背中をぽん! と叩く。

 その合図と、ガルムの咆哮が聞こえたのは同時だった。

 レンは剣を抜いて飛び出す。


「ガルム、どうしたのですか?」

「敵襲です!!」


 ファールハイト卿も同じように剣を抜き、ガルムに加勢しようとしたが、レンに気付いたようだ。


「アイスコレッタ卿、何をしているのですか!?」

「魔獣を倒すのは、聖騎士の務めです」

「止めなさい!! その魔獣は、戦うための個体ではありません!!」


 レンは襲いかかるガルムを前に、果敢に戦う。

 他の聖騎士隊はまったく歯が立たない様子だったが、レンはガルムを怯ませるほどの実力を見せていた。


『あなた様、逃げませんの!?』


 大精霊ボルゾイが控えめな様子で聞いてくる。


「逃げないわ!!」


 きっとここでガルムを倒せたとしても、レンには処罰が待っているだろう。

 そんなことなんてさせない。

 ヒルディスに事情を話して、わたし達は何も悪くないと証明してみせる。


 レンはガルムの首を刎ね、討伐に成功させていた。

 ホッとしたのもつかの間のこと。


「アイスコレッタ卿、あなたは、なんてことをするのですか!!」


 ファールハイト卿は激昂したように叫び、あろうことか、魔法剣を発動させた。

 

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