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雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第五章 怠を知る者、惰に溺れる

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レンの魔力

「ヴィオラさんのおっしゃる通り、ファールハイト卿が使う魔法剣の発動には、私の魔力が必要となります」

「やっぱりそうなのね」


 レンのありあまる魔力を活用する、ただ唯一の方法だという。


「だったらファールハイト卿でなくて、あなたが魔法剣とやらを使ったほうがいいのでは?」


 あれではファールハイト卿が手柄を独り占めしているように思えるのだ。


「いえ、あの魔法剣はファールハイト卿だからこそ、操れるものですので」

「試してみたの?」

「いいえ」

「だったら、一度やってみなさいよ」


 ファールハイト卿はレンを思って腕輪を用意したという認識でいたが、その現場を実際に目にすると、とても部下を思ってやったこととは思えないのだ。

 さらに、魔法剣を使ったあとの、レンの疲れ具合も気になる。


「毎回、魔法剣を使ったあとはこんな感じなの?」

「ええ、まあ……そう、ですね」


 レンは苦しいのか、眉間に皺を寄せつつ話す。

 本人はかなりよくなった、なんて言っていたものの、そんなことはないように思える。


「ねえ、やっぱりこんなのおかしいわよ。あなたの魔力と、魔獣討伐の名声欲しさにやっているとしか思えないわ」

「そう、でしょうか?」

「間違いないわ」


 よく確認もせずに言い切っていいものか、と内心思ったものの、これくらい強く言わないとレンには伝わらない可能性があるのだ。


「あなただって、心のどこかで違和感を覚えているでしょう?」

「違和感、ですか?」

「ええ、そう。ファールハイト卿の言動がおかしいってことに。あなたに対してよくしてくれるのは、魔力が目的だって」


 そう指摘すると、レンはショックを受けたような表情を浮かべる。

 けれどもそれについてはずっと、気付かないふりでもしていたのだろう。

 否定することはなかった。


「ねえ、レン。その腕輪、放棄できないの?」

「できますが、したら魔力が暴走するかもしれません」

「そこまで酷い状況なのね。これまではどうしていたの?」

「魔力を抑える板金鎧を着ていました。けれども正規の聖騎士は許されない格好だったようで」

「それもおかしいのよ」


 もしもファールハイト卿がレンのことを思っているのならば、上層部に掛け合って板金鎧の着用許可をもぎ取ってくれるはず。


「そう、ですよね」


 これまで具体的な対策について考えてくれる者がいなかったので、レンはファールハイト卿に感謝し、疑うことなく腕輪を装着していたようだ。


「もう、聖騎士をやめたほうがいいわ」

「え?」


 二度目の人生でお世話になった食堂のおかみさんと旦那さんに頼み込んで、住み込みで働かせてもらえばいいのだ。


「あのご夫婦だったら、レンが板金鎧姿で働くことを許してくれるはず」

「しかし……」


 レンの手を握って訴える。


「お願いよ。このままでは、あなたの体の負担が大きいわ。いつかきっと、倒れてしまう」

「聖騎士でない私に、価値なんてあるのでしょうか?」

「なんてことを言うのよ!」

「だって、聖騎士でなくなったら、ヴィオラさんに会えなくなってしまう」


 レンはわたしに会えるだけで幸せだったと言う。

 それがなくなるのであれば、生きる意味がないとも。


「わたしも還俗げんぞくするわ! 一緒にいるから!」


 最低限、食べていけるだけのお金があればいい。

 わたしだって、レンがいなければ修道女で在り続ける意味がないのだ。


「ごめんなさい。わたしが、わたしが聖騎士になって、なんて言ったから、あなたを苦しめてしまったわ」

「いいえ……この体で生きるということには、なんらかの苦しみが伴っていたでしょうから」


 レンはわたしの手を握り返しながら言う。


「むしろ、あなたが道を示してくれたあとは、幸せだったんです。だから、謝らないでくださいね」


 なんて優しい人なのか。

 わたしを恨んでいても、おかしくない状況だというのに。


「わかりました」

「え?」

「この腕輪をファールハイト卿にお返して、聖騎士も辞めます」

「いいの?」

「はい。ですので、これから先、一緒に生きていただけますか?」

「もちろんよ!」


 今ならばきっと間に合う。

 わたしも修道女を辞めて、レンと一緒に生きよう。

 離れ離れにならないように、彼の手を離さないようにしなくては。

 そう心に誓った。


「ん?」

「どうかしました?」

「ファールハイト卿が一人で森のほうへ向かっているの」


 レンも起き上がって確認する。


「本当ですね」

「お花摘みかしら?」

「いえ、違うかと」


 魔獣がいないか、見回りに行っているのだろう。


「ちょうどいいわ。わたし達のことを、話に行きましょう」

「今、ですか?」

「ええそうよ」


 こういうのは早いほうがいいのだ。

 そう説得すると、レンは納得してくれた。


 ファールハイト卿のあとを追いかけ、森に入る。

 接近し、声をかけようとした瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてギョッとした。


「ファールハイト卿、上手くいきましたか?」


 その声の主は、ラルフ・ガイツだった。

 

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