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雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第七章 傲慢たる者に、鉄槌を!

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それから

 この世から祝福と守護獣が消えた。

 記憶からもなくなったようで、皆、違和感を覚えず普通に暮らしているらしい。

 残っている守護獣は、メルヴ・メルヴェイユとレンの暗黒竜、それからヒルディスの水晶聖獣クリスタル・カーバンクルくらいだろう。

 加えて大聖女についての記憶も、人々の中からきれいさっぱりなくなっているようだ。

 熱心に聖教会へ通っていた信者もいなくなり、大聖堂は閑散としているという。

 枢機卿であるゲラルト・ツォーンは国家予算を横領していたようで、騎士隊に拘束された。禁固刑三百年が決定したようだ。つまり生きて出ることはできない。

 ラルフ・ガイツはパッパード救貧院の院長と結託し、人身売買を行っていたことが露見し、処刑が決まっているようだ。

 フリートヘルム・フォン・ファールハイトはレンとの空中戦で一命を取り留めるも、記憶喪失になっているという。

 エドウィン・フェレライは相変わらず落ちぶれたまま、軽犯罪を繰り返しては騎士隊のお世話になっているらしい。

 

 そしてヒルディスは、大聖女達の記憶はきれいさっぱり失ったようだが、自らの大聖女としての記憶は残っているようだ。

 毎日、信者が待っているのでミサに行かなくてはと訴えるも、そんな人達はいないとシュヴァーベン公爵夫妻が説得しているという。

 人々の信仰心を糧とする水晶聖獣は、日に日に衰弱していっているらしい。

 ヒルディスの周囲にいてチヤホヤしていた取り巻き達は、誰一人いなくなってしまったようだ。

 そんなヒルディスのもとに、唯一通っているのはナイトの野郎だった。

 ヒルディスを励まし、支えているという。

 けれどもヒルディスはナイトの野郎を激しく拒絶しているという。

 いつまでナイトの野郎が愛を貫くのか、使用人の間で賭け事になっているそうだ。


 と、このような感じで、一度目の人生でわたしを断罪した人々は、各々悲惨な運命を辿っている。


 その中で唯一、マルティナ夫人だけは相変わらず、商売に精を出している。

 早い段階でエドウィン・フェレライに見切りを付けたことが、成功のきっかけだろうか。

 彼女だけは活き活きと幸せそうに暮らしていた。


 ◇◇◇


 例の事件のあと、わたしはアイスコレッタ公爵邸に居住まいを移し、レンと一緒に暮らすようになった。

 侍女やメイドに「アイスコレッタ公爵夫人」と呼ばれるのは慣れない。

 それも、時間が解決してくれるのだろう。


 聖騎士を辞めたレンは、国王の親衛隊から声がかかった。

 けれども権力者に振り回されるのは二度とごめんだと断り、わたしと商売を始めることになった。

 その名も〝ボルゾイ商会〟。

 犬や猫、兎などの愛玩動物の食事や愛用品などを販売する商会である。

 守護獣が姿を消したあと、空前絶後の愛玩動物ブームとなった。

 その波に乗るように、商売は大成功したのである。

 一番の取引先であるマルティナ商会も、かなり大儲けしたという。

 

 愛するレンが傍にいて、わたしの命を狙う脅威もなくなり、毎日幸せだ。

 それなのに、わたしの心の一部にぽっかりと穴が空いたままだった。

 わかっている。

 いまだに、大精霊ボルゾイを喪った傷が癒えていないのだ。

 これも、時間が解決するのだろう。


 事件から三年後――メルヴ・メルヴェイユから世界樹のある場所に来るように呼びだされた。

 世界樹のもとへは、月に数回通っていた。

 都会の喧噪で疲れたわたしとレンを、癒やす場でもあったのだ。

 メルヴ・メルヴェイユから呼びだしを受けるのは、初めてである。

 いったいどうしたというのか。


『ゴキゲンヨウ』

「ごきげんよう、って、どこでそんな言葉を覚えたのよ」

『チョットネエ』


 メルヴ・メルヴェイユはスキップをし、上機嫌な様子だった。

 その理由がわからず、わたしとレンは顔を見合わせる。


『ジャーン!!』


 メルヴ・メルヴェイユの声がしたほうを見る。

 そこにいたのは、手足だけでなく、鼻先が長い生き物。


「え、オオアリクイ?」

『オオアリクイではありませんわ!!』


 その姿、声、佇まい、雰囲気。

 どれもわたしが知る、大好きだった存在そのもので――。


「ボルゾイ!! ボルゾイじゃないの!!」

『ええ、ええ、わたくしです!!』


 駆けより、大精霊ボルゾイを抱きしめる。


「三年も、どこに行っていたのよ! 離れずに、わたしの傍にいてって言ったでしょう?」

『ごめんなさい……ただ今、戻りました!』


 二人で抱き合い、涙を流す。

 落ち着いたあと、いったいどういうことなのか、メルヴ・メルヴェイユに声をかけた。


『アノトキ、ボルゾイサンヲ、メルヴ・メルヴェイユノ、〝眷属〟ニ、シタンダヨオ』

「眷属ですって!?」


 ただ、大精霊ボルゾイは特殊な存在で、すぐに同じ姿を維持できる状態ではなかったという。

 なんでも種みたいな小さな姿から、ここまで大きくなるのに三年もかかったようだ。

 大精霊ボルゾイが同じ姿を維持したまま眷属でいられるかも、賭けだったという。

 成功するかわからなかったので、メルヴ・メルヴェイユはずっと言えなかったようだ。


『メルヴ・メルヴェイユ、頑張ッタ!』

「ありがとう!! 本当にありがとう!!」


 わたし達は大精霊ボルゾイと一緒に、王都へ帰ることができたのだ。


 まさかこんなハッピーエンドが待っていたなんて、夢にも思っていなかった。

 きっとこの先も、わたしは満たされた中で暮らしていけるだろう。


 わたしの〝復讐〟は、誰もが羨むような幸せな人生を送ることなのかもしれない。

 今日、気付くことができた。


 これにて、わたしの復讐劇は終わり。

 めでたしめでたしで幕を閉じるのだった!

 

新連載はじまりました!よろしくお願いします

『シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!』

https://ncode.syosetu.com/n7261ln/

あらすじ

「あなたの婚約者、貰うわね」貴族学校時代の自称ライバルにそんな宣言をされたメーリスだったが、内心大喜びしていた。

勇者となって帰ってきた婚約者は、メーリスの魔法〝シール〟で徹底的に強化された、〝人工勇者様〟だったのである。

モラハラ気質で弱っちい婚約者なんて必要ない。

メーリスはかねてから夢だったシール屋さんをするために、師匠のお店を継ぐことにした。

そこで師匠の孫であり、魔法騎士であるユベールと出会い、彼と協力して商売を始めることになるが……?

恋と魔法、それからちょっとしたトラブル!?

シール魔女メーリスのドタバタ奮闘記

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