表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第七章 傲慢たる者に、鉄槌を!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/121

守護獣

「なっ、ボルゾイ!!」

「ヴィオラ・ドライス、近づかないでくださいませ。この人工守護獣は聖教会の魔法で創りだしたまがい物。契約主の魔力を使って創りだした存在とはいえ、生きるも死ぬも、こちら次第。消すことは至極簡単なことなんです」

「そんな、酷い……」


 まさか大精霊ボルゾイを利用するなんて。


「何をしたら、ボルゾイを解放してくれるの?」


 そう問いかけたら、ヒルディスは極上の笑みを浮かべた。


「ヴィオラさん、相手の言いなりになるのはよくないかと」


 レンの言いたいことはわかる。

 けれども大精霊ボルゾイを喪いたくない。

 彼女はわたしが辛いとき、ずっと傍にいて励ましてくれた。

 人工守護獣であるため、はじめは監視を目的だったかもしれない。

 けれども大精霊ボルゾイは、いつもわたしの心に寄り添ってくれたのだ。


「一応、聞くだけよ」

「しかし――」

「でしたら、あなたにわたくし専属の修道女にでもなっていただきましょうか」


 どうせこの状況はどうにかできないのだ。

 このまま彼らを解放したら、わたし達は謂われのない罪で捕まってしまうかもしれない。

 修道女になることで回避できるのならば、それでいいのではないか。

 大精霊ボルゾイの命も助かるわけだし。


「ヒルディス、たったそれだけでいいの?」

「ええ。あとは、アイスコレッタ卿をわたくしに返してください」

「それは――」


 いったい何を言っているのか。そもそもレンはヒルディスの所有ものではない。


「ねえ、それは無理よ」

「いいえ、無理ではないかと。彼はきっと、あなたが命令したらわたくしのもとへ戻ってくるはず。そうでしょう、ケレン・フォン・アイスコレッタ?」


 かつての暗黒騎士は、大魔女に対して特別な忠誠心を抱いていたという。

 大魔女が命令したら、聞き入れたのだろう。


「いいえ、たとえヴィオラさんが望んでも、私はあなたの元には行きません」

「だったら、ヴィオラが大事にしている守護獣がどうなってもいいの!?」


 ヒルディスは耳を塞ぎたくなるような、ヒステリックなキンキン声で叫ぶ。

 レンと大精霊ボルゾイ、どちらも望むなんてことはできないのだろう。


『あなた様――ヴィオラ・ドライス様!! わたくしは、わたくしはどうなってもよいのです!! どうか、ご自身が信じる道を、歩んでくださいませ!!』

「ボルゾイ……」


 わたしはレンも、大精霊ボルゾイも大好きで、大切な存在だ。

 選ぶなんてできないのに。


「こんなことになるんだったら、この人生をやり直したほうがマシだわ」

『お止めください!!』


 レンを見ると、こくりと頷いてくれる。わたしの決定に従ってくれるようだ。


 わたしはどうやったら死ぬことができるのだろうか?

 なんて考えていたら、大精霊ボルゾイが叫んだ。


『世界樹の大精霊メルヴ・メルヴェイユ様!! どうかこの世界にはびこる聖教会の不条理で不公平な魔法を、すべてなくしていただけますか!?』


 聖教会の不条理で不公平な魔法――それは人々の与えられた祝福と、それから守護獣。

  そのすべてをまとめて消し去るよう、大精霊ボルゾイは自ら望んだ。


『ウン、デキルヨ!』

『お願いいたします』

『ワカッタ!』


 メルヴ・メルヴェイユは枝にしか見えない魔法の杖を取りだし、くるくる回して呪文を唱える。


『元通リニ、ナ~レ!』


 待って。とわたしが制止する間に、魔法が展開されてしまう。

 辺りは光に包まれ、視界が奪われる。

 レンがわたしを守るように、抱きしめてくれたことだけはわかった。


 光が治まり、そっと瞼を閉じる。

 ヒルディスの姿どころか、ゲラルト・ツォーンや聖騎士の姿がなくなっていた。

 大精霊ボルゾイも……。


「お別れの言葉も、言わせてくれなかったの?」

『ゴメンネ』

「メルヴ・メルヴェイユ、あなたは悪くないわ……」


 心の中にぽっかりと穴が空いてしまったようで、胸が締め付けられる。

 レンやメルヴ・メルヴェイユと抱き合いながら、幼い子どもみたいにわんわん泣いてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ