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雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第七章 傲慢たる者に、鉄槌を!

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祝福と守護獣

 落ちたままになっているブラッティ・ナイフは、持ち主のもとに戻るようなので放置していても問題ないらしい。

 よかった、と安堵したのもつかの間のこと。

 今度は疑問が浮かんでくる。


「えっ、な、なんでブラッティ・ナイフがあるってわかったの!?」

『ソレハネ、メルヴ・メルヴェイユハ、大魔女サンノ、〝守護獣〟ダカラダヨ』

「え……?」


 メルヴ・メルヴェイユがわたしの守護獣?


「どういうことなの?」 

『〝獣〟ジャナイケドネ!』

「いえ、そういう意味ではなくて」


 わたしの守護獣は大精霊ボルゾイだ。メルヴ・メルヴェイユではない。


「前世の大魔女の守護獣だったってこと?」

『ウウン、今モダヨ』

「待って。あなたは世界樹を守る大精霊なのよね?」

『ソウダケレド、世界樹自体ガ、大魔女サンノ管轄ダカラ、一緒ニ、守ッテイルノ』

「ふうん、そうなの……って、やっぱりわからないわ!」


 混乱するわたしの代わりに、レンが説明してくれた。


「ヴィオラさんはあなた以外に守護獣がいるんです。守護獣が同時に二体存在することはありえるのですか?」

『アリエナイヨ!』

「ならば、ヴィオラさんの本物の守護獣は――?」

『メルヴ・メルヴェイユダヨ!』


 やはり、そういうことになるのか。

 六度目の人生辺りから、大精霊ボルゾイの様子がおかしかったのを思い出す。

 自分がいたらわたしが不幸になるとか、なんとか言っていたのだ。

 それにこれまではどこに行くにも一緒だったのに、今回は同行を渋った。


「大精霊ボルゾイは、本物の守護獣ではないってことなのね」

『ウーーン、〝人工守護獣〟ダネエ』

「人工、守護獣?」

『ソウ!』


 そういえば、大精霊ボルゾイが『わたくしは世界樹から生まれた守護獣ではありません』なんて発言をしていたような。


「その人工守護獣って、どこから生まれたの?」

『聖教会ガ行ウ、鑑定式アナライズ・セレモニーノトキニ、対象ノ魔力ヲ使ッテ、人工祝福ト一緒二、作ッテイタミタイダネ』

「待って!! 祝福も人工的に作り出された物なの!?」

『ソウミタイ』


 本来、神より与えられし祝福というのは、大聖女と聖騎士、大魔女と暗黒騎士の四名にのみ与えられるものだという。


『守護獣モ、ソウナノ』


 先ほどの四名以外の守護獣は、すべて人工的に作られた存在だという。


「祝福も、守護獣も、自分の魔力で作られたものだったなんて……!」


 しかし、どうしてそんなことをさせたのか。

 理解が追いつかない。


『メルヴヲ封印スル前ニ、大魔女サン、言ッテイタノ。コノママダト、世界樹ヲモ、悪用サレテ、危険ダッテ』

「ねえ、誰に悪用されるの?」

『ソレハ――』


 突然、空気がピリッと震えた。同時にレンが「ヴィオラさん!!」と叫んでわたしを守るように前に立つ。


 目の前に魔法陣が浮かび上がり、そこから現れたのはゲラルト・ツォーン。

 それからヒルディスと聖騎士達だった。


「あなた達は……」

「アイスコレッタ卿、やはりここにいたのか」

「どうしてわかったのですか?」

「我々には、〝目〟があるからな」

「目、ですか?」


 監視の目がつきまとっていた、というわけなのか。

 どこに? どうやって?

 まったく気配は感じていなかったのに。 


「それはそうと、この場所は聖教会が管理する神聖な場だ。お前らなんぞが足を踏み入れていい場所ではない」

「違います! ここは聖教会には関係のない場所です」

「何を言っている。世界樹は聖教会の象徴的なものだと、神学校で習ったのを忘れているのか!?」

「それは、聖教会側が改竄かいざんした、自分勝手な歴史なんです」

「なんだと!?」


 ピリピリと険悪な雰囲気の中、ヒルディスがレンとゲラルト・ツォーンの間に割って入る。


「アイスコレッタ卿は混乱状態にあるようですので、一度大聖堂に戻ってから、ゆっくりお話ししたほうがよろしいかと」

「いいえ、大聖堂には戻りません!」


 レンは毅然とした態度で言葉を返す。


「ああ、アイスコレッタ卿はその雌犬に唆されてしまったのか」

「誰のことをおっしゃっているのですか!?」

「あなたの背後で負け犬のように隠れている、ヴィオラ・ドライスのことだ!!」


 レンは剣を引き抜き、ゲラルト・ツォーンに切っ先を向ける。


「アイスコレッタ卿、与えた恩を忘れ、我々と敵対するというのか!?」

「ヴィオラさんの敵になるというのならば、そうなるしかありません」

「愚かな!!」


 聖騎士達も次々と剣を引き抜く。

 一触即発の雰囲気だったが――。


『ケンカハ、ダメーーーーー!!』


 メルヴ・メルヴェイユがそう叫ぶと、世界樹から蔓が伸び、ゲラルト・ツォーンや聖騎士達がぐるぐる巻きになって拘束される。


「なっ、これ――もが!!」


 目元と口、耳に葉っぱが張り付いたので、見聞きや喋ることができない状態になったようだ。

 メルヴ・メルヴェイユのおかげで、戦わずに済みそう。

 なんて安堵したのもつかの間のこと。

 わたしの足下にあったブラッティ・ナイフが、突然動き出す。


「え?」


 まっすぐ飛んでいき、ヒルディスの手中に収まったのだ。

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