表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第七章 傲慢たる者に、鉄槌を!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/121

出発の朝

 レンはアイスコレッタ公爵家の屋敷に戻ると言っていたが、どうせ明日の朝合流するのだから泊まっていけ、というマルティナ夫人の言葉に甘えることとなったようだ。


「レン、また明日」

「はい」


 レンはわたしの手を握り、嬉しそうに微笑みかけてくる。

 恥ずかしくなって、顔を逸らしながらおやすみと言った。


「はい、おやすみなさい」


 そんなささいな言葉を掛け合うことが、どうしようもなく嬉しい。

 わたしはもう独りではないのだ。

 少々夜更かしになってしまった。レンと別れ、寝室に戻る。

 数時間の間にいろいろあった。目がしっかり冴えているので、眠れるわけがない。

 こうなったら、と最終手段に出る。


「ボルゾイ、ガウラ、一緒に眠りましょう」

『わたくし達と!?』


 大精霊ボルゾイは戸惑うような様子でいたが、ガウラは嬉しそうに寝台へ飛び乗ってくる。毛布の中に潜り込んで、わたしの足下に陣取ってくれた。

 ガウラのふわふわの毛並みはホカホカで、きんきんに冷え切った足下がじんわり温かくなる。


「ボルゾイも、早く」

『は、はい!!』


 大精霊ボルゾイは軽やかな動きで寝台に飛び乗り、わたしの隣に寄り添うように横になってくれた。


「あなたの毛並み、高級なブランケットみたい」

『ふふ、そうでしょうか?』

「自信を持っていいわ」

『でしたら、ご堪能くださいませ』

「ありがとう」


 温もりを感じながら瞼を閉じると、だんだんと意識が遠のいていく。

 あっという間に眠りについたのだった。


 ◇◇◇


 翌日――朝からレンを呼びだし、祝福について詳しい話をすることにした。

 大精霊ボルゾイとガウラはまた変な方向に気を遣ったようで、部屋から出て行く。


「ごめんなさいね。これから出発するのに呼びだしてしまって」

「いいえ、お気になさらず。それで、話というのは?」

「わたしの祝福について、詳しく話しておこうと思って」


 レンはわたしの祝福を死んでも時間が巻き戻って生き返る、程度のものと認識していたらしい。


「それだけじゃないのよ」


 〝因果応報マウン=雌犬の仕返しティング〟は死因となった要因を能力として身につけ、時間を巻き戻した状態で復活する祝福である。


「さらに死因となった攻撃を無効化にもできるの」

「たぐいまれなる祝福だったのですね」

「ええ、そう」


 炎を意のままに操る〝地獄の炎インフェルノ〟。

 最強の耐毒能力である〝猛毒耐性トキシック・ガード〟。

 ありとあらゆる物から武器を創る、〝武器錬金術ウェポン・アルケミー〟の能力が付与された、攻撃対象の心臓を確実に一刺しできる〝砕けた心ブロークン・ハート〟。

 人の血を啜ることにより祝福を複製できるという能力を持つ魔獣、ガウラを呼ぶことができる。〝魔獣召喚サモン・ビースト〟。

 悪しき聖者を屠る、〝違背神聖罰刑アンチ・ディヴァインジャッチメント〟。

 対象の命を、石つぶてで奪う、〝石撃ち刑ストーニング〟。


「以上がわたしが使える能力なの」


 すごい! と絶賛されるかと思いきや、レンはずーーーんと重たい空気を纏っていた。

 さらに、兜の目元からツーーと一筋の涙が零れてくる。

 それを見てギョッとしてしまった。


「レン、どうしたの!?」

「いえ、ヴィオラさんが六度も辛い思いをしたと考えたら、胸が苦しくなって」

「言っておくけれど、六回のうち二回はあなたも同じ死因だからね」

「私の苦しみなんて、ぜんぜん……」

「わかったから!」


 レンは涙を流しながら「ヴィオラさんのことは、必ず守りますので」と言ってくれた。


「あなたのことも、わたしが守るわ」


 そんな言葉を伝えると、レンはハッと肩を震わせる。


「夫婦は、苦楽を分け合うものなんでしょう?」

「――はい!!」


 まだ結婚式を挙げていないので、夫婦ではない。

 けれどもすでに一度挙げているし、それに相応するような絆がわたし達にはあるのだ。


 出発する前に、マルティナ夫人がやってきて、驚くべきことを言う。


「おい、その辺を歩いていた神父を連れてきた。礼拝堂に行く暇はないから、ここで結婚式を挙げろ」


 結婚指輪も用意したという。

 銀のペアリングだった。


「ここで!?」

「ああ」


 遅れて神父様が登場する。手には金貨が入っているであろう、革袋が握られていた。

 どうやらお金に釣られて駆けつけてくれたらしい。


「待って、ボルゾイとガウラを呼ばなきゃ」

「時間がない」


 どうしてそんなに急いでいるのかと思いきや、思いがけない事態が発覚する。


「聖教会の奴らがアイスコレッタ公爵を探している。大聖女ヒルディスの婚約者が逃げた、と大騒ぎしているようだ」


 このままでは強制的に連れ戻されて、ヒルディスと無理矢理結婚させられるかもしれない。

 そう危惧したマルティナ夫人は、先に結婚式を挙げさせようと思ったようだ。


「はじめてくれ」

「は、はい」


 厳かな空気など皆無の中、参列者はマルティナ夫人だけという状況で急遽結婚式が執り行われる。

 結婚指輪を互いにつけ合い、神父様の前で永遠の愛を誓う。


「えー、そのー、新郎ケレン・フォン・アイスコレッタ。汝は家庭に愛と平和をもたらし、忍耐と和合、尊敬を持って妻となる者を支え、困難のさいは共に耐え、喜びのときは共に感謝し、永遠の愛を誓えるだろうか?」

「はい、誓います」


 神父様は汗を拭ってから、わたしにも問いかけてくる。


「あー、えー、新婦ヴィオラ・ドライス。汝は家庭に愛と平和をもたらし、忍耐と和合、尊敬を持って夫となる者を支え、困難のさいは共に耐え、喜びのときは共に感謝し、永遠の愛を誓えるだろうか?」

「はい、誓います」


 レンは兜を被ったままだった。

 もうままよ。

 そう思って半ばやけになりながら、兜の口元にキスをした。


「こ、これにて、二人は夫婦として認められました!!」


 マルティナ夫人が高速で拍手をしつつ、「早く出発しろ!!」と急かす。

 バタバタしながら、わたしとレンは竜に乗って王都を発つこととなった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ