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雌犬の仕返し、略奪女の復讐  作者: 江本マシメサ
第七章 傲慢たる者に、鉄槌を!

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世界樹について

 世界樹――それは大きな魔石と呼ばれている月より降り注ぐ魔力を受け止め、大地を通じて供給させるこの世界の要とも呼ばれる大樹だという。

 聖教会のステンドグラスや聖書のモチーフにも選ばれるくらい、象徴的なものらしい。


「その世界樹を守護する、大精霊がいらっしゃるという話を、神学校の授業で聞いたことがあったんです」


 その大精霊ならば、ブラッティ・ナイフを解除できるかもしれない。


「でも、わたし達のお願いなんて聞いてくれるのかしら?」

「ツォーン猊下よりは聞いていただける可能性が高いと思います」

「それはたしかに」


 問題はその世界樹がどこにあるか、である。


「世界樹の場所は守護獣が知っているでしょう」

「そうなの?」

「ええ。神話では、守護獣は世界樹の朝露から生まれ、選ばれし主人のもとへ駆けていく、なんて話がありますから」

「知らなかったわ」


 レンの守護獣である竜は軽い意思の疎通はできるようだが、大精霊ボルゾイのように喋ることはできない。

 そんなわけで、部屋から出て行った大精霊ボルゾイを呼んで、世界樹について聞いてみることにした。


『あの、わたくしはいいので!』

「あなたに聞きたいことがあるのよ」

『わたくしに?』

「そう!」


 そこに座って話を聞かせてくれ、とクッションを置いてお願いすると、なぜか呼んでいないガウラがやってきてどかんと座り込んだ。

 その隣に、大精霊ボルゾイが戸惑う様子で腰掛けた。


「あなたに、世界樹がある場所について聞きたいのよ」

『世界樹、ですか?』

「ええ、そう。守護獣って、世界樹の朝露から生まれるんでしょう?」

『え、ええ。それはその、そういうふうに伝わっております』

「だから、世界樹がある場所を知っているでしょう?」

『いいえ、わたくしは存じ上げません』

「え!?」


 大精霊ボルゾイ曰く、すべての守護獣が世界樹の朝露から生まれるわけではないらしい。


「だったら、あなたはどうやって生まれたの?」

『わたくし達は、その、特殊なパターンかと』

「特殊って?」

『それは、なんとご説明していいのやら……』


 なんとも煮え切らないような物言いである。


『おそらくですが、竜種であるアイスコレッタ様の守護獣であれば、世界樹の所在をご存じなはずです』

「そうなの?」

『ええ、間違いないかと』


 ならば、レンの竜の背中に乗って、世界樹の在り処まで連れて行ってもらえばいい話である。


「できれば早いほうがいいけれど……。ああ、明日、夜会もあったわね」

「前回の人生で、ヴィオラさんと私が再会した集まりですね」

「そう」


 負け犬のように逃げだした挙げ句、エドウィン・フェレライに迫られ、求婚までされたという、思い出したくもない日の記憶だった。


「そういえば、ヒルディスはどうしてあの夜会に参加したの?」

「マルティナ夫人が聖教会に多額の寄付金を献上したようで、ツォーン猊下から参加するように言われていたそうです」

「そうだったの」


 しかし不思議である。マルティナ夫人は敬虔けいけんな信者ではない。

 六度目の人生では、聖教会の裁判員に選ばれるような功績もなかったはず。


「明日の夜会も参加予定だそうです」

「だったらわたしは不参加だわ」


 ただ、マルティナ夫人にはなんと説明していいものか。


「レン、あなたはどうするの?」

「私は辞表を出してまいりましたので、あなたの傍にいます」

「ふうんそう――って、え!?」


 信じがたい言葉が聞こえてきた。

 

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