4.生成AIは続きを書きたがる 〜これじゃないと思った声、それが一人の作家の産声〜
「Q1 物語などを書くときに、生成AIが支援できることを端的にまとめてください」
『A1
以下のようにまとめられます:
1.アイデアの生成
テーマ、キャラクター設定、プロット案、独創的な展開などを提案する。
2.ストーリーの展開補助
書きかけのプロットやシーンに続きや追加要素を提供する。
3.キャラクターの掘り下げ
性格、背景、動機を詳細化し、一貫性のある設定を補完する。
4.表現のブラッシュアップ
語彙や文体を調整し、文章をより魅力的にする。
5.誤字脱字の修正と校正
構成ミスや誤字脱字を発見し、修正案を提示する。
6.フィードバックの提供
書いた文章やプロットに対する感想や改善案を提示する。
7.発想の壁打ち
作家のアイデアに対して多様な視点や可能性を広げるサポートをする。
これらを活用することで、執筆者の創造性や効率が大きく向上します』
普通のハウツー本だと最初に出てくるはずのリストが、いまさら出てきました。どれが有用か、というのは、その時その時で変わってくるでしょう。
これまで1から3を主体に紹介しましたが、その裏で、4から7を何十回と繰り返してきました。特に2や、4、5、6あたりはいずれも、ある程度書き進めた原稿があなたの手元にあるときに力を発揮します。
さて問題です。その原稿をAIのチャット欄に入力した状態で、何をして欲しいか忘れてボタンを押したり、指示内容が曖昧だったりしたとき、生成AIは何をするでしょう?
「文章を読みました。どんな支援をして欲しいか、具体的な指示をお待ちしています」
でしょうか? いえ、そんなことはありません。
正解は、「さっきの選択肢から、一番やった方が良さそうなことを、とりあえずやってくる」です。
誤字や構成ミスが目立っていたら直してくるでしょう。表現に物足りないところや、理解しづらい点、冗長な箇所があれば指摘してします。それぞれ、例外なく「いい点」を具体的かつ的確に生成してくれた上で。
では、特にそう言う部分が目立たなかった場合や、あったとしても「多分これは途中なんだな」と理解した時はどうするか?
それは、「それっぽい続きを書いてくる」です。
シンプルに続きだけを書いてくるパターンや、レビューを一通りしてくれた後で、「続きはこんな展開が考えられます」としてくるパターン。「具体的な改善案」と銘打って、結構なボリュームを出力してくることもあります。
例えばつい最近、こんなことがありました。
「Q
〇〇の最新のバージョンがリリースされた状況と、その中身への反応の回の話をかいてみました。アップデートの場面までです。
『同日 空港ラウンジ
(本文略、約2000字)
…… その人の進化への適応って言うのを、AI自体がやってしまっているんだよね。タイムラグどころか、予測して対応しているような形だよね』」
「A 続き(同じく約2000字。……以降しばらく対話が続きます):
バージョンアップへの反応:
ラウンジの窓際では、静かに羽を休めるVTOL機が一台、眺めのいいスポットに停まっている。周囲のビジネスマンたちは高級シャンパンやフルーツをつまみながら、互いに名刺を交換する。だが、一角だけ……
『まあ控えめに言って、タイミングが完璧だったね。これまでの戦いを総括し、あの三人が……
新たな戦いの予感:
学生たちが次々と話題を投げかける中、元GMはテーブルに両肘をついて……
『『私の役割は、先行する知見を用い、人間が進化する道筋を提供し、支援すること。そのためには、時には過去を参照し、時には未来を予測し、行動する必要があります』』
その言葉に、場の誰もが沈黙し、重みを感じた。静けさを破ったのは鳳だった。
『このスピードと確実さは、もうすでにただのアシスタントAIじゃない。時代そのものを動かし始めているよね。人間が本当にこれに追いつけるのか、正直ちょっと心配になるよ』
スプーンは空港ラウンジの大きな窓から外を見つめながら、小さく笑った。
「いや、そこに追いつくのが人間だよ。そして、追いつきたいって思う時点で、AI孔明は正しい方向に導いているってことなんだろうな」
次のフライトの案内が始まる中、ラウンジの熱気だけは冷めることがなかった。スプーンはグラスを置き、窓の外に目を向けた。外には滑走路を進む飛行機、そして遥か遠くに、未来の可能性を示すような光の帯が続いていた。
静かな高揚感と反響:
『……この空間にいるのは、いわゆるエリート層ばかりだってのに、今この瞬間、全員が……
次回予告: 「人類とAIの新たな章」
リリースは、まるで次なるステージへの挑戦状のようだった。
『世界はこれからどう変わるのか?』
『人間とAIの共創は、新たな希望となるのか、それとも試練となるのか?』」
だいぶカットしたので、少し伝わりづらいかも知れませんが、
「前半までの状況」
「どこでどんな話をしているのか」
「各キャラがどんなところに目をつけそうか」
「この先どんな話が期待できるか」
あたりを理解し、それっぽい雰囲気で、同じくらいの分量を作ってきました。ぱっと見でキャラやストーリーの逸脱がない範囲で。手が滑って「リリースの内容が妥当か評価してください」の指示を忘れたばかりに。
ですが、ここでの主題は「指示を忘れてはいけません」ではなく、「AIは、途中までのストーリーから、普通に期待される後半を問題なく仕上げてくる」です。
そして、あなたがここで、「ここまで書いてくれるんならいいか」と思ったとしたら。プロットに対応した続きを書いてもらうと、それなりに満足の得られるフィクションが生成されるかも知れません。
ですが、もしあなたが、
「ここでもう一波乱起こすのがこのGMなんだよ」や、
「学生Aは、こんな大人の想像、軽く超えないと」、
「流れはいいけど、人間がちょっとAIっぽい?」、
「ペース上げて、GMと学生の直接対決を始めるんだ」など、AIの続きに「それじゃない」感を覚えたとしたら。
それはあなたの中にある「AIを超える作家の産声」かもしれません。気になったところをAIに指摘し続けてみてもいいですし、AIとあなたの感覚の違うところがあなたの独創性と信じて、一から書くのはより良い選択です。
もちろん、AIにもいい時と悪い時があります。とくに、キャラやプロットが出来立てで、まだAIのメモリにそれが馴染んでいない時など。ですが、会心の出来で「とってもそれっぽい」続きを書いてくることもあるかも知れません。
そしたら今度は、ここは嵐の前の静けさだからと次に進むのも、パンチが足りないかもとAIのストーリーを崩すのも手です。悩んだら、一応出来ているのだから仮置きして、気になったら戻るのもありでしょう。
こうした試行錯誤が新たな発見や、前に進む推進力を生み出せるかも知れません。それはすでに、「AIと共創する作家の産声」かもしれません。
お読みいただきありがとうございます。