表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/28

1.付け焼き刃は熱いうちに使え? 〜始めたいと思った種火を、生成AIが育ててくれる〜

 草船借箭という、諸葛孔明の有名エピソードがあります。名前を知らなくても、こんな質問ならできてしまうでしょう。


「Q. 孔明の、船で矢を借りるエピソードを、二百字くらいで説明してください」


 それに対して、生成AIはこう返してきます。


「A. 三国志演義における有名なエピソード「草船借箭」は、孔明の智謀を示す逸話です。呉と蜀の同盟軍が曹操軍と対峙する中、周瑜が孔明に矢を10万本調達する無理難題を与えます。

 孔明は期限の3日を約束し、濃霧の日を狙い、草を詰めた船を曹操軍陣地に接近させました。敵はこれを襲撃と誤解し、大量の矢を放ちます。船に刺さった矢を回収し、孔明は期限内に目標を達成。これにより周瑜の策を逆手に取り、その知略を見せつける名場面となりました」


 これが、チュートリアル第一回です。つまり、あなたの中のぼやっとした記憶や知識。合っていようが間違っていようが、「うる覚え」の「ふいんき」でも問題ありません(実社会では問題あるのでお気をつけください)。それっぽく質問すると、大抵の場合、綺麗な正解が返ってきます。*1参照


 あなたはもう、草を積んだ船(=雑な質問)を川に浮かべる(=チャットに打ち込む)だけで、沢山の矢(=なかなかの情報)を借りる準備が整いました。



 ここまでが、生成AIビギナーの攻略記です。それでは本題の、「生成AI+物書き、ダブルビギナーのダブル攻略記」に入りたいと思います。


 これまでいくつもの読み物を読んできた皆様が、何らかの理由で「書いてみたい」と思う、そんな小さな火が灯る瞬間があったでしょうか。しかし、いざ始めてみると「書くってどういうこと?」「どっから手をつけるの?」でつまずいてしまうかも知れません。あの瞬間のあなたの熱は、まだ残っているでしょうか。


 曰く、「ストーリープロットは固めるべし」

 曰く、「キャラの魅力と一貫性が必須」

 曰く、「テンプレの中に、独創性を」

 曰く、「書式は基本に忠実に」

 そして、「十万字を目指しなさい」 


 多くのエッセイや参考書籍で、そう書かれています。重要この上ないことばかりです。しかし、そのあたりをご覧になったところで「まあいいや」。もうあなたの熱は冷めてしまっているかも知れません。



 では、あなたに足りていないものは何でしょうか?

 書きたいテーマやジャンルが定まらない方は、さしあたりあなたのブックマークや記録をたどり、お気に入りの作品なんかを一つの手掛かりにするのもよさそうです。


 そうではない場合は、先ほど例をあげたいずれか、もしくは全部を成立させる材料が、足りていないのでしょうか。



1.「(ストーリープロットって何だよ?)」

 そんな方は、例えばこんなのを試してみるといいでしょう。


「Q. 過去の世界に、生成AIの力を持って、幼女に転生した主人公が、ライバルとお仕事の奪い合いをします。そのストーリープロットを描いてみてください」


 その返答の中で、いまいち、と思うところを見つけたら、こうしてみます。


「Q. そこの〇〇を**に変えて、続きをお願いします」


 これであなたも、とりあえず書き始められるプロット、という大きな武器を手に入れました。



2.「(キャラ付け、一貫性ですか。どうしたら……)」

 でしたら、こうしてみましょう。


「Q. 魔法学園に飛び級で入った幼女が魔力ゼロだった作品を描きたいです。キャラが魅力的になりそうな特徴を挙げてください」


 場合によってはこれだけで、頼んでもいないのに、ちょっとした小話まで作ってくる可能性もあります。あくまで例示のつもりだと思います。ですが、それでもイメージが足りなければ、こんなのも良いでしょう。


「Q. 魔法学園に飛び級で入った、実は魔力ゼロの主人公が、最初に自分の状況を確認します。先ほどのキャラの特徴をしっかり立たせて、ちょっと描いてみてください」


 あくまでキャラ設定のイメージです。お蔵入りさせても、相手は人ではなくAIなので、あなたが心を痛める必要はありません。逆に、「この流れ、結構いいかも?」と思ったら、その出力を土台にして、話を膨らませてみるのも非常に有効だと思います。



3.「(テンプレ? 独創性? どっちもいまいち……)」

 両方の方、どちらかに課題感がある方、それぞれこんな手があります。


「Q. こんなテーマとキャラ設定、プロットがあります。これをなろう的(または他のプラットフォーム)にアレンジしてください」


 こうするだけで、なろう的とは何ぞやの部分を説明しながら、それなりのアレンジをしてくれます。たまに説明するだけして、アレンジしてくれないことがありますが、以下で大丈夫です。


「Q2. 試しにアレンジしてください(意訳: いいからやって)」


 逆に、アイデアに詰まったら、例えばこうです。


「Q. こんなのを描いてみたんですが、より魅力的な、独創性を高めるアイデアはありますか?」


 こうすると、ただ単に「こんなテーマの作品で、なにか独創性のあるアイデアありますか?」よりも、確実にあなたにとって刺さるアイデアが見つかる可能性が大きくなります。*2参照


4.「(書いたら手直しか……)」

 ここはもしかしたら説明不要かもしれません。


「Q1. 以下の原稿を、小説の書式として問題がないように修正してください」

「Q2.〇〇の書式にあうように修正してください」

「Q3.誤字を指摘して、直してください」

「Q4.分かりづらいところ、読んでいて問題がありそうなところを指摘して、直してください」


 説明があるとしたら、こういう時にはいっぺんに全部やらせるのではなく、一つずつ順番にお願いする方が、圧倒的に精度が上がるということです。


 そしてトドメに、こういうのも良いでしょう。


「Q5. こんなのを書いてみました。面白いですか?」


 そう、レビューです。このAI、言語のプロだけあって、過去のさまざまな読み物に関するデータがふんだんに詰まっています。なので、一字一句しっかりと読み解き、詳細な解説と改善点が返ってくることでしょう。


 これであなたは、しっかり投稿できる書式の整った、結構面白い(と、AIは言っている)原稿を手に入れました。



5.「(十万字ってなんですか!? ワード何十枚?)」


 さて、1から4までやってみたあなたの手元には、何文字分の原稿が残っているでしょうか? 数千字でしょうか。そしてそれは、何文字分のあなたの入力と、その何十倍の、AIによる出力によって叩き上げ、洗練された原稿でしょうか? 


 そんなクオリティの作品第一話が、あなたの手元に残っていることでしょう。そしてそこには、あなたが生成AIと対話して生まれた新たな発見なんかも、存在しているかもしれません。そこにかけた労力が、そんな作品や発見で相殺できていたら、しめたものです。二回目以降、そんな苦労は減る一方でしょうから。




 さて、今あなたの手元にあるのは、あなたが「書いてみたい」と思った種火を、すぐさまその場で生成AIの炉に導入し、これでもかと鋼を盛りつけて叩き上げて完成した、「熱々の付け焼き刃」です。


 「鉄は熱いうちに打て」という言葉があります。しかし、あなたが打たれて、そして抜群の切れ味を手に入れても、その刀をどう振り上げてどこに下ろすか。そう考えているうちに、もう常温です。

 生成AIの爆発的な普及、そのスピード感は、あなたの前を通り過ぎてしまうかもしれません。その種火を吹き消す、一陣の風を残して。


 あなたが「書いてみたい」もしくは「これやってみたいと思った種火が元になって、材料も燃料も、技術すらもまるごと「草船借箭」した付け焼き刃。そいつが最大の力を持つのはいつでしょう? 

 もしかしたらその刃が熱いまんまの、今かも知れません。その最強の熱を持ったまんま、どこかに振り下ろしてしまうのも一興です。


 ひとこと質問とワンクリック、全てはそこから始まります「こんなの書いてみたいんだけど、どうすれば良いですか?」。


 「付け焼き刃は熱いうちに使え」。いかがでしょうか?



*1生成AIは、大規模言語モデル(LLM)に基づき、膨大なデータを学習して文脈を推測し、不正確な質問にも意図を補完して適切な答えを生成できる、そんな柔軟性が特徴です。


*2 生成AIへの質問(=プロンプト)を工夫して、よりユーザーの望む出力を得る技術を「プロンプトエンジニア」と言います。その中で、出力例を明示して、その指向性を固める「ワンショット(=一つの具体例)」という技法の亜種と言えます。

 お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ