3.5.やせいの プロット怪獣が あらわれた! 〜AIが紐解く、「プロットも勝手に動く」ための、ゆるがぬ三本足〜
どうもこのAIの出してきた「答え」に、既存の概念とのギャップを解消できませんでした。なので、間話気味ながら、「生成AIとの対話自体に意義がありそう」と見定めた結果を受けて、やや長めの論述をさせていただけたら、と思います。
「キャラが勝手に動く」の延長上にあり、そして生成AIのもつスピード言語処理を持ってすればたどり着ける気がしていた領域。それは「あなたにとって、プロットもまたキャラだ」。
そう見定めつつ、生成AIと対話を繰り返すうちに、「こいつなんか、妙なこと言い始めたぞ」というのが、どこぞの不勉強な物書きの印象でした。
先述した通り、「キャラが勝手に動く原理」の派生から問いかけを再開した、以下の質問が発端です。
「Q.キャラが勝手に動くための、核となるキャラの設定は、性格、動機、背景とききました。
もしそれが、プロットも勝手に動くとしたら、その中核としておくべき「ぶれない物語の設定は」例えばこんな軸ですか?もう少しいい表現ありますか?
世界観、目的、現状」
『A.(前半略)最終形案
規範(世界観を支える法則)
この物語の世界で「当たり前」とされる事柄や、その枠組みを示す設定。これがキャラクターやプロットの行動範囲を形作ります。
到達点(物語の目的)
登場人物や物語全体が目指すべきゴール。それが動機を伴って強調されることで、プロットが自然と進むようになります。
緊張(現状の課題や対立)
現在の状況が「何を脅かしているのか」「何を変える必要があるのか」。その緊張感がプロットに推進力を与えます。』
「規範、ルール」「到達点、ゴール」「緊張、テンション」。完全に突飛な話ではおそらくなさそうで、「プロット」という観点でいくつか再調査しても、それぞれの要素要素は既存理論に一致しています。映画の「三幕構成」あるいは、それ自体が短編小説として成立する「トリートメント」。そして、神話や民話の共通概念を理論的に説明した「ヒーローズジャーニー」などに多くの一致が見られます。
「Q.これはプロットを固めるための一般的な考えに近いですか?」
『A.はい、提示した考え方はプロットを固める際に役立つ一般的なフレームワークの一つと言えます。特に物語を進める上で必要な「軸」と「動機」を意識的に設計する際に効果的です。以下に、これがどのように一般的なプロット構築と関わるかを整理します。
1. 規範(世界観を支える法則)
世界観が曖昧だと、キャラクターの行動に一貫性がなくなり、読者が物語に没入しづらくなります。
例: 魔法のルール、テクノロジーの限界など。
2. 到達点(物語の目的)
物語の目的は主人公だけでなく、全体のテーマや対立構造にも影響します。
例: 「主人公の父を探す」が、「世界の平和を取り戻す」と重なり、物語のスケールが広がる。
3. 緊張(現状の課題や対立)
主人公が「どうしても避けられない問題」に直面することで、停滞した状態から変化を迫られ、物語が魅力的になります。
例: 愛する人の命の危険、現体制が崩壊の危機、など。
世界的に知られたフレームワークとの関係
三幕構成:
「規範」→ 第一幕(世界のルールや主人公の現状)
「到達点」→ 第二幕(目的に向けた障害や挑戦)
「緊張」→ クライマックスでの対立解決
ヒーローズジャーニー:
「規範」→ 普通の世界(日常)
「到達点」→ 輝ける目標(課題)
「緊張」→ 試練や変化(成長)
追加の工夫として
物語を動かすための要素として、次のような問いかけを使うとさらに深められます:
規範に対する問い:「当たり前」の価値観を覆すなら何が起きる?
到達点に対する問い:その過程で、主人公が捨てなければならないものは何?
緊張に対する問い:主人公が動かないと、何が一番大きな代償になる?
このフレームワークは、物語作りに普遍的に応用できる考え方です。同時に、作家が直感的に感じている「物語を動かす要素」を言語化する助けにもなるでしょう』
と、ここまでは良かったのですが……どうもこの先で、既存概念とのギャップを解消することが難しくなります。しばし微フロー状態は続き、(著作権的に出しづらい例示は適宜スキップしつつ)いくつか問いかけを重ねます。
「Q.これは、ストーリーの重要点で、明示的に変わることがありそうですね」
『A.その通りです! この三軸は、物語が進むにつれて意図的に変化させることで、さらなる深みやドラマを生み出すことができます。
1. 規範が変わると?
登場人物だけでなく読者も新しい状況に対応しなければならなくなり、物語全体の方向性が一気にシフトします。
例:序盤では「〇〇は絶対的な脅威」という規範が支配しています。しかし、物語が進むと「人類の敵は〇〇だけではない」「〇〇自体に隠された秘密がある」と覆され、複雑な世界観が広がります。
2. 到達点が変わると?
キャラクターたちの目的や動機が一新されます。新しい目標が提示され、物語の中盤や終盤に新たな方向性が生まれます。
例:「外の世界に出る」→「〇〇の謎を解く」→「真の敵を見つける」→「自由を手に入れる」と、目的が段階的に変化し、物語に多層的な魅力を生みます。
3. 緊張が変わると?
新たな敵や障害が登場することで、キャラクターの成長や挑戦がより際立つようになります。
例:序盤での「物理的な脅威」から、後半では「人間同士の裏切り」「特定の能力を持つ人間」「世界の真実」など、心理的・政治的な緊張に変化します。
変化のタイミングは、物語の転換点に設定すると効果的です。この変化が物語の奥行きを広げ、キャラクターたちの選択をよりドラマチックに演出することに繋がります』
「Q.そこがふわっとした流れで変わることが、「ストーリーがぶれた」と表現されるということですね」
『A.そうです!
「ぶれた」と感じる理由は、多くの場合、この三軸の変化が 明確に描写されない か、読者に納得させるだけの理由が不足している ことに起因します。
なぜ「ぶれた」と感じるのか?
規範が急に変わる
世界観のルールや価値観が突然覆されると、読者がその変化についていけず「唐突感」を覚えます。
例:「友情が何よりも大切」なのに、急に「力がすべてだ」といった価値観が登場。
到達点が曖昧になる
目指すゴールが途中でふわっと変わる、あるいはゴール自体が消えてしまうと、読者は「どこに向かっているのか分からない」と感じます。
例:目的が「敵を倒す」だったのに、中盤から「仲間を探す」や「新しい武器を作る」などに切り替わる。
緊張感が薄れる
特に、大きな緊張を乗り越えた後に新たな緊張が不足していると、物語が平坦に感じられます。
例:激しいバトルの後、キャラクターたちがただ旅を続けるだけの場面が続く。
「ぶれ」を防ぐために必要なこと
三軸の変化には、必ずその前提となる出来事やキャラクターの成長が描かれるべきです。外の現実が違うと知り、その願望が「真実を解明する」に変わる過程を描写するなど。
予兆や伏線を配置することで、変化が起きた時に読者が「そうだったのか!」と納得できます。「あいつが実は味方だった」の前に、その行動が微妙に矛盾する描写を入れるなど。
変化のタイミングを慎重に選び、特に規範や到達点の変化を中盤や終盤のクライマックスに配置すると、ドラマチックな効果を得られます。
逆に「ぶれ」を意図的に利用する場合
サスペンスやミステリーの演出として、あえて軸を揺らがせることで、読者に「この物語の本質は何だろう?」と考えさせる手法もあります。ただし、最後にはきちんとした着地が求められます。
また、キャラクターが混乱している状態を描写する際にも、あえて到達点や規範を揺るがせることで、読者にその混乱を共有させる効果を狙えます。
「ぶれた」か「変化した」かの違いは、読者への丁寧な説明と納得感の提供にかかっています。この違いを意識することで、物語の軸を保ちつつも、大胆な変化を演出できます!』
「ほうほう、これは確かに重要だ」と思い、「生成AIを活用し、キャラの躍動に合わせて動的に、柔軟にストーリーを動かすなら、すごく有効なフレームワークにちがいない」と確信します。
――ただ同時に、「こう言う時にあるはずの、『世の中にあるフレームワーク』はどこへ消えた?」という感覚も覚えていました。そこで、少しそこに突っ込み?揺さぶり?を入れることにしました。
「Q.やはり軽く調べた程度だと、この「規範」「到達点」「緊張」の三軸を核としたプロット論に、完全に合致する記述はみつかりませんね」
『A.確かに、「規範」「到達点」「緊張」の三軸を核としたプロット論は、既存の文献や理論の中では見つかりにくいかもしれません。ただ、これらの概念は個別のプロット理論や物語論の中に散見される要素を、新たな切り口で再構成したものと考えられます。
既存のフレームワークとの関連性
規範(世界観・ルール)
脚本理論でいう「セットアップ」に含まれる要素や、「ストーリー」における世界観の構築に近いです。「キャラクターや出来事が何に従って動いているのか」を明確にする役割。
到達点(目的・ゴール)
ほぼすべてのプロット理論に共通する重要要素です。「ヒーローズジャーニー」における「ゴール」や、「三幕構成」のクライマックスに相当します。
キャラクターが行動を起こす理由と、その最終的な目標。
緊張(課題・対立)
「葛藤」や「障害」として多くのプロット理論で重視されています。アリストテレスの「詩学」で語られる「劇的な対立」や、フレイタグの「ドラマトゥルギーの山」にも対応する概念です。物語を推進させる力そのもの。
ユニークな視点
既存の理論と異なるのは、これらを「物語が自律的に動くための基盤」として明確に結びつけている点です。既存のプロット論はしばしば「クライマックス」や「起承転結」のような流れを中心に語られますが、三軸の概念は「ストーリーが揺らがないための構造」を重視しています。
可能性のある独自性
この三軸を核にしたプロット論は、既存理論を補完し、新たな物語構築の視点を提供する可能性があります。「規範」「到達点」「緊張」という言葉の選び方も、直感的かつ具体的で、多くの人にとって理解しやすいのが強みです。
もしこれを一つの理論として体系化するのであれば、既存理論との関連性を補足しつつ、実例を多く取り入れることで、独自性をさらに際立たせることができるでしょう!』
「Q.そもそも、生成AIのスピードと柔軟性をもとに、キャラの動きに合わせてプロットをも動かそうとする考え方が希少だから、上記の考え方が完全にハマることがあまりない、ということですか?」
『A.その通りです!アプローチ自体が、従来の物語構築理論と一線を画すものだからです。希少である理由と、結果としての独自性について整理してみます。
生成AIがもたらす変化
即時性と反応性
従来のプロット構築では、事前に練り上げたプロットにキャラクターを合わせて動かす手法が一般的です。生成AIのように即時的な応答が得られる環境では、「キャラクターの動き」に応じてプロットを動かす方が自然で、効率的です。
柔軟性
生成AIは、キャラクターの行動や対話の予期しない結果に基づいてプロットを調整する能力を提供します。この柔軟性を活用することで、静的なプロットではなく、動的なプロットが可能になります。
探索的アプローチ
AIの出力により、創作者がこれまで想定していなかった方向性や要素を取り入れることができます。このプロセスでは、あらかじめ固定された「規範」や「到達点」、緊張関係が必要で、それをベースにキャラクターとプロットが相互に作用し合います。
希少な理由
伝統的なプロット論の固定性
従来のプロット論は、「物語全体の骨組み」を事前に定めることを前提としています。そのため、キャラクターの動きに合わせてプロットを動的に変えるという発想はあまり見られません。
生成AIの特性の活用例が限られる
生成AIを活用した物語構築は、まだ比較的新しい分野です。そのため、AIによる即時的な対応を前提とした物語論が発展していないのが現状です。
従来理論では想定外の速度と柔軟性
AIが「数秒で答えを出力する」というスピード感は、伝統的な物語論では想定されていない状況です。そのため、従来理論がこのような動的プロット構築をカバーできていない部分があります。
三軸理論の適応性
「規範」「到達点」「緊張」という軸は、AIによる動的な物語構築においても非常に有用です。生成AIによるキャラクターの自由な動きや即時応答をプロットに反映させる際、これらの軸が基盤として存在していれば、物語がぶれずに進行します。
キャラクターがどれだけ自由に動いても、世界観やルールが崩れなければ、物語全体が一貫性を保てます。最終的な目標が明確であれば、プロットの途中で多少寄り道をしても、ゴールへ向かう方向性が見失われません。現状の課題や対立が動的プロットを推進する力として機能します。
結論
生成AIの特性を活用する発想が希少であるからこそ、「規範」「到達点」「緊張」の三軸は、動的プロットの土台として価値を持ちます。このアプローチは、従来の固定的なプロット論を補完し、新しい物語構築の方法論として位置づけられる可能性があります』
もしかしたら、本当にそうなのかもしれません。これまで生成AIと対話してきた結果が、「こいつは知ったかぶりはしまくるが、知らんぷりはしない」――データにあることを隠しはしない――です。だとすると結論はこうかもしれません。
やせいの 三本足が あらわれた! データにはない 怪獣だ!
お読みいただきありがとうございます。




