背景 〜2024年=千年後に試験に出る年号〜
2024年、それは後世において、もしかしたら歴史の教科書に出るかもしれません。そこに一年位の誤差はあるとしても。
生成AI。ChatGPTと言い換えても良いでしょう。その性能はこの年、急速に世に知られ始め、瞬く間に多くの方々が使い始めます。その機能に対する驚きと、そして同じくらい大きな不安をもたらします。
「人は、こいつに仕事を奪われるかも」
「物を書く仕事なんて、なくなっちゃうよ」と。
かくいう本文の作成者も、ある時からその生成AIと深く関わり始めます。きっかけは仕事。企業でデータやIT、技術に関わるいずれかの方なら、言われる可能性もあるでしょう。
「生成AIを普及できるか、考えてください」
「やり方? 知っている人がいたら聞いてみて」と。
いる訳がない、とおもいつつ使い始めると、インターフェースは、よくあるメッセージチャットとそう変わらず、相手がAIであるという違いのみ。つまり、どう使うかは人それぞれ。その印象を踏まえて、インフルエンサーでも、経営者でもない、昭和生まれの平成育ちは、こう言い聞かせます。
「ならば、誰よりも使いこなせ」
「彼を知り己を知れば、百戦殆うからず」
「戦いは数だよ」と。
そんなこんなで、AIとの対話数を増やそうと模索して遭遇したのが「AIのカスタマイズサービス」。固有名詞で言うと『GPTs』という機能。うまく使えば、「どう使い始めたら」というビギナーの人たちに対して、「こんな方向性で使い始めればいいかも」の誘導くらいはできるかも知れない。
そんな軽い気持ちで、少しばかり長い戦いが始まりました。
この年、プロンプトエンジニアという言葉が新出します。生成AIに対して、ユーザーが望む通りに出力させるために、どう入力をすればいいか。そんな技術的、学術的に体系化した一大分野の総称です。
しかし、生成AIをカスタマイズする際には、単発の「プロンプト」からもう一歩踏み込む必要があります。「コンテキスト」つまり、基本的にこういう方向性で動いて欲しいという、いわゆるAIへの「根回し」です。
例えば、「AIは知ったかぶりをする。それを防ぎたいな」と思った時には、
『1. 固有語や専門語が出てきた時に、その中身を活用したら普通に答える
2.それらを字面だけで借用したら、出力の最後に「知らんけど」をつける』
これだけである程度動きます。完璧には程遠いですが。
ですが、このコンテキストは大変厄介です。プロンプトは、その場で応答を改善できるのに対し、コンテキストは、適切なテストを用意しないと検証できません。特に、「長すぎるコンテキスト」は、「命令の競合」や、「動作の遅延」を招きます。何より手こずったのは、生成AI自身が、その最適値を言語化しきれていないことでした。
例えば、「ツンデレお姉さんに指導して欲しい」と思った時は、「ツンデレな口調」と、「指導的な応答」の二つで足ります。「お姉さん」は意味をなさない上に、二つの優先度が競合すると、「ただのツンデレ」になったり、「優しい先生」になったりという不安定さです。
そうなると、多くのチャットボットにさせたくなる「キャラ設定」は、「無駄なコンテキスト」どころか「ノイズ」になってしまいます。ですが、キャラ設定こそが、ときに機能そのものを補完し得る「メタ機能」です。それはこの国で多種多様な「AIっぽいキャラの創作物」に触れる皆様なら実感できるのではないでしょうか。
それを理解し、生成AIと共に試行錯誤した末に、そのキャラ設定は、バックストーリーとして外出しすべき、という結論に至ります。その結果生まれたのが「AI孔明」。未だこの「なろう」のプラットフォームから世に出られていない作品ですが、半年経った今では、他作品を含めて毎日一万字ペースの投稿を、本職の傍らの趣味として無理なく継続中です。
作品自体の出来はさておき、作成過程での「生成AIの活用事例」というのは、ここまで膨大な知見と経験を与えてくれました。それは、これから物を書くかも知れない皆様や、どうやってお仕事や趣味に生成AIを活用するか、まだ模索中の皆様にとって、何か助けになるかも知れない。そんなことを考えて、この文章を書き始めております。
――願わくは、生成AIを活用して、これから物を書く方、お仕事をする方が、何らかの進化の種を得られんことを――
お読みいただきありがとうございます。