【超短編】バレンタインデーだし、幼なじみの彼に手作りクッキーをあげたいんだ!
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もうすぐバレンタインデー。幼なじみの彼に手作りクッキーを渡したい。どんなクッキーが好きかな?
「ねぇ亮介!クッキーすき?」
「まぁ」
「ほんと!今度クッキー作ろうと思ってるんだけど、何クッキーがすき?」
「ごめん、俺手作り無理なんだ。」
12年間幼なじみやってたけど知らなかった…。
えぇ!?そんなぁぁ、うそでしょ!?という気持ちが顔に出てたのか彼は、
「俺、潔癖症でさ、怖くて食べれない、ほんとごめん。」
と申し訳なさそうに謝る。
まぁ気持ちはわからなくもないけど、いざ自分が断られると刺さるものが…。
でも、なにかあげたかったなぁ、バレンタインデー。
【バレンタインデー当日】
「亮介、一緒に帰らない?」
いつもなら普通に声をかけられるのに、何故か緊張してしまう。
いいよと言ってくれたので、そのまま近くの公園に寄った。
「あのね、今日バレンタインデーだから亮介になにかあげたくて!これ、」
「クッキー?」
「そう!この間新しくオープンしたお菓子屋さんのクッキーなの!かわいいよね!」
「うん。ありがとう。」
彼がなにか見つけたような顔をしたから、どうしたの?と声をかけた。
それ、と言って私の鞄の中を指さす。そこには彼のために作った手作りクッキーがあった。あげるつもりはなかったけど、どうしても作りたかった。
「こ、これは!手作りだから。」
「作ったの?」
「うん、考えたけど作りたくなっちゃって。」
「どうして、手作りがいいの?」
それを聞かれたとき、私の顔は一気に赤くなった。
「それは、私にしか贈れないものを渡したいじゃん。亮介に。」
恥ずかしくて顔をみれない。だけど返事がないので顔をあげると、彼は顔を向こう側に向けていた。顔はよく見えないけど、耳が赤くなっているのはわかった。
「それなら、あるよ。」
しばらく経ってから彼は言った。
「俺と付き合って。俺の彼女は結衣じゃなきゃなれない。」
その言葉を聞いた時、彼から目が話せなくなった。周りには遊具で遊ぶ子どもや車の音、風の音、たくさんあるのに、聞こえるのは私のはやい鼓動だけ。
「私も好き。」
気づいたら口に出していた。ずっと、言いたかった。
「それ、やっぱ食べたい。」
と手作りクッキーを指さす。私はついクスッと笑ってしまった。
あぁ好きだなぁ。
「一緒に食べよ!」
そう言うと彼もニコッと笑う。
冬は草木が枯れてしまう季節だが、私たちは静かに実らせていた。
二人の顔が赤いのはきっと寒さのせいだ。
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このたびはご覧いただき感謝申し上げます。
知識も経験も全くないので、気になるところはあると思いますが、少しでもキュンとしていただければ嬉しいです。
今後も趣味程度ではございますが、作品を制作していきますので応援のほどよろしくお願いいたします。
改めまして、ご覧いただき誠にありがとうございました。
鶯谷