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背神のミルローズ  作者: たみえ
|序《はじまり》
3/33

|道程《みちのり》 壱


『詰んだ……おお、神よ……』

「…………」


 人の子でガヤガヤと賑わう港町にて、神が地に膝と手をついて他神に嘆く。アホらしい。

 存在が安定したことで、何故かますます神の言動が理解出来なくなった。


「おうおう、嬢ちゃん。んなとこで一人でどうした? 迷子か? ん?」


 ()()()人の子が声を掛けてきた。――この、ミルローズに。

 人の子に神は知覚出来ないらしい。欠陥生物もいいところだ。


「まあいい。せっかくだから、おじちゃんが親のとこまで送ってあげよう……」


 何が楽しいのか、不必要な笑みでもって手を伸ばしてきた人の子を()()


『あわわわわっ。どどど、どうしようっ!?』


 次に、無駄にぴょんぴょん周囲を飛び跳ねて焦った顔でくるくる舞うだけの神を視た。

 ……やはり全く意味の無い舞だった。神なのに。


「どこ見てんだ? ほれ、こっちに――」

「……必要無い」


 ひらり、相手が伸ばした手をあっさり躱す。造作もない。


「――チッ。いいから大人しくついてこい!」


 ひらり、またあっさり躱す。芸の無い人の子だ。

 まだ神の無意味な舞のほうが多様な表現力がある。


「こ、んのッ! 生意気な――ぁ?」

「しつこい」


 ぼとり、人の子の繋がっていた思考が地に落ち、役立たずな支えが後を追って倒れた。

 手に入れた衣服を汚すと神がうるさいので、ささっと軽い身のこなしで、人の子から噴き出す飛沫の軌道を逸れ、何事もなかったように再び路地裏から港を視た。


『ぴぃぎゃあああああああああああ……!!』


 神が情けなくも変な悲鳴を上げた。いつものことなので無視だ。

 周囲を確認したが、神の悲鳴に気付いた者は()()()()()()存在していない。……末期だな。


「いく」

『……うぅ~うぅ~』


 ある程度の目星が付いたためにいつものように頭を抱えて呻く神を呼べば、ちらちらと人の子だった器を振り返りつつも大人しくついてきた。埋葬するとは言わなかった。それは人の子()()の為だ。

 しかし、結果が分かっていてもやはり放置するのはどうしても気になるものらしい。神なのに。


「――ロサ・デ・デウス! まもなく出航しまーす! 未搭乗のお客様はいらっしゃいませんか~!」


 ……『神の薔薇』とは。大層な名だ。あれでいいか。


「いく」

『うぅ~うぅ~』


 呻きながらもとぼとぼと歩いてついてくる神を思わず呆れた心地で眺めて結局無視した。ここで構えば面倒だ。

 そのまま船員の横を堂々と通り過ぎて乗船した。あまりに堂々とした態度に何も言われなかった。杜撰(ずさん)な管理体制で何より。無駄な労力を使わなくて済んだ。




 ――ロサ・デ・デウス出港、約30分後。

 突如前兆もなく発生した激しい業火により、真横に存在する海水による必死の消火活動も虚しく、何故か一向に鎮火されず、前代未聞の大損害――港倉庫半数以上が半日と保たずに塵と化す、という過去に類を見ないほどの大事件となった。

 火元の原因は、倉庫近くの路地裏に常日頃からたむろしていた地元の不良()()が積み重なった遺体の中から見つかった煙草の吸殻かと思われる。

 そしてその遺体の下からさらに見つかったのは、激しい火事の中心地であったにも拘わらず地下に押し込められたまま大勢()()()()()子どもたちであった。

 地元も国も、世界も大騒ぎのさらなる大事件へと発展した。

 不良集団は凶悪な犯罪集団との繋がりを白日の下に晒され、繋がっていた大元の組織は()()()()()()()()か、祟られたのだと実しやかに囁かれるほど呆気なく壊滅。生き残った子どもたちはその後、()()()()奇跡の子たちとして讃えられた。

 去り際、いつまでも未練たらたらに後ろ髪を引かれていたどこぞの神がニュースを見てホッと安心したという――。

※おまけ情報※

ミルローズちゃん、名前めっちゃ気に入ってます。

(でも神の反応がうざいから、それは認めない)

あと乗船後にこっそり神が料金払ってます。

(でも乗船を認識されてないので怪奇現象扱い)

無賃乗船ではありません。一応。

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