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落ちこぼれのダンジョンマスターが現代地球に転生してダンジョンを創造したら何か騒ぎになってるけど僕のせい?  作者: 猫月九日
第2章

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第36話 異変の原因

 ひとまず雛香には練習させておいて、僕も雛香と同じくらいの高さまで浮き上がってゴーストタウンを見下ろす。


「うーんと……確かになにか妙な感覚がする気がする」


 ほんの微かにだけど、僕の魔力とは違う魔力を感じる。


「源はどこだろ?」


 目を凝らしてよく見てみる。

 かなり混ざっていて見づらいけれど、微かに濃い部分がある。多分あれが源だろう。


「よし、雛香、移動するよ」


「あはは、あ、うん」


 雛香を連れて魔力が濃い方向へ飛んでいく。


「……うん? あの人……」


 そこには1人の男性がいた。


「あ、黒服の人じゃない?」


「うん、真田さんの部下の人だね」


 それは、さっき里楽さんと話した真田さんの部下の人、ビリーさんだった。

 偶然? いや……よく見たらあの人から変な魔力が出ているみたいだ。

 つまり、ビリーさんが元凶ってことになるんだけど……


「そっか! じゃあやっつけてくるね!」


「ちょっと待て!」


 流石にそれはまずい、いろんな意味でまずい。

 今はイベント中だし、真田さんの部下ならそっちの関係もあるし、魔力を持つ相手に警戒心なく突っ込んだらまずい。


「えー、でも、どうするの?」


「うーん、どうしたもんかなぁ」


 なにか作戦は……


「……うん?」


 悩みながら見ていると、ちょうどビリーさんが集団から離れていくのが見えた。

 今はまだ最初の襲撃の途中だ。

 どうしたんだろ? いや、今がチャンスか。


「雛香、とりあえず、接触するぞ。雛香は隠れたまま何かあるまで声を出さずに待機しておいてくれ」


「うん、任せて!」


 高度を下げてビリーさんの後を付ける。

 ビリーさんは、誰もいない建物内へと入って座り込んだ。


「はぁ……なんか、雰囲気悪ぃなぁ……」


 ビリーさんは座り込んだままため息をついている。

 うーん? ビリーさんが元凶にしては反応がおかしい?

 いや、でも、確かにビリーさんからは変な魔力反応が……よく見たら、ビリーさんの上着のポケットが1番濃い?


「すみません、そこの人」


 僕は認識阻害を解いてビリーさんに話しかけてみた。


「お前っ! いつの間に!」


 ビリーさんからしたら僕がいつの間にか現れた感じになるだろう。


「僕はですね、今回のイベントの主催者です。えっと、ビリーさん、真田さんの部下さんですよね?」


「イベントの主催者!? ってことは例のダンジョンの制作者ってことか!?」


 話が早くて助かる。

 他の人だったらこうやって名乗り出ることはなかったけど、真田さんの部下だとわかっているならこのほうが簡単だ。


「ええ、以前はうちの妹が失礼しました」


 一応ちゃんと頭を下げておく。ちなみに、雛香は目を逸らしてた。


「そうか、あの嬢ちゃんの兄って話だったな……んで、その制作者さんが何しにきたんだ? 言っておくが俺がここにいたのはたまたまだぞ」


 まぁ、人選に関しては本当に偶然……まぁ、ダンジョン慣れっていう意味では他の人よりも前から潜ってるから経験多いはずってところかな。


「いえ、実はですね、少し今回のイベントがおかしなことになっていまして……ビリーさんも周りの方がおかしくなっていることに気がついていますか?」


「ああ……なんか、襲撃が始まった時点でなんかおかしな気がしてたが……あんたがそう言うってことは演出とかじゃねぇんだな?」


「はい……それで原因を調査中なんですが……ビリーさん」


「俺か!? 俺は何もしてねぇぜ!? ゾンビ役とやらになってどうしたもんかと思ってが、ルールは破っちゃいねぇはずだ!」


 うん、やっぱりビリーさん自身の問題じゃなさそう。


「ビリーさん……そこのポケットの中には何が入っていますか?」


「ポケット?」


 ビリーさんは僕が指差したポケットをあさりその中に入っていたものを取り出した。


「イベントで使うって言ってたアイテムだぞ?」


 ビリーさんが取り出したのはイベントで使う予定の魔石……見た目は普通の魔石だけど。

 そういえば、さっき動画で見た時も一瞬おかしかったような……


「ちょっと貸してもらっていいですか?」


「ああ」


 ビリーさんから受け取ってその魔石をよく確認する。


「……間違いない……これから変な魔力が出ている」


 この魔石がおかしくなった原因に違いない。

 魔石からは明らかに僕以外の魔力を感じる。


「ビリーさん、これは預かります。代わりにこちらをどうぞ」


「あ、ああ」


 受け取った魔石をしまいこみ、代わりの魔石を取り出してビリーさんに渡す。


「この魔石はこちらの方で処理します。おそらく、すぐに皆さん落ち着くと思いますので」


「ああ、どうやら任せるしかないみたいだな」


 僕の真剣な顔を見てどうやらビリーさんも納得してくれたみたいだ。


「それじゃあ、失礼しますね」


「あ、おい」


「はい?」


「嬢ちゃんに言っておいてくれないか? 次は負けねぇってな」


「……わかりました」


 まぁ、次があるかはわからないけどね。

 僕はそのままビリーさんの元から離れる。


「だ、そうだぞ? 雛香」


「うーん? 雛香としてはやる気があるならかかってこい! って感じだけど」


 まぁ、稽古付けてあげるくらいでいいんじゃないかな?

 それはともかくとして、


「さて、この魔石をどうするかなぁ……」


「どうするって……お兄ちゃんが壊しちゃえばいいんじゃないの?」


 まぁ、それが1番手っ取り早くはあるんだけどなぁ……


「多分、ここで魔石を壊してもあんまり意味がないと思うんだよ……」


 手に持ってわかるけど、この魔力には何かしらの意志をみたいなものを感じる。

 おそらく人の感情を増幅させるような魔法の残滓だと思う。


「ある意味で呪いみたいなものかな……多分かなり古い呪いだと思う」


 読み取れるのはそのくらい。

 多分だけど、もともとは大した効果はなかったんだけど、今回のイベントで活性化しちゃった感じだ。

 いや、もしかしたらここがゴーストタウンになったのも、この呪いのせいだったりするかもね。


「ともかく、この呪い自体をどうにかしないといけないんだけど」


「そんなことできるの?」


「ちょっとめんどくさいけどね」


 ちょっとというか……かなり?


「まぁ、とりあえず、少し離れようか」


 ここにいたら他の誰かに見つかっちゃうかもしれないしね。

 再び空を飛んで今度はダンジョンエリアの外へと向かう。

 これからやろうとしていることは誰かに見られたくない。


「まずはダンジョンを展開して……」


 適当な範囲をダンジョン空間にしていく。

 広さは……まぁ、いつものボスエリアより少し広めくらいでいいか。

 ダンジョンを展開しつつ、周りを整えていく。


「うわぁ、すっかり広くなっちゃった」


 これからすることには周りの建物なんて全ていらない。全部平らにしてしまった。


「……準備はできたぞ」


 これで外から誰かが入ってくることはなくなった。

 また、誰かに覗かれる心配もない。


「お兄ちゃん?」


 僕は雛香の方を向き直ってにやっと笑う。


「さて、雛香、ボス討伐の時間だぞ」


「えっ?」


 僕はこれからやることを雛香に話し始めた。


「今から、この魔石にかかっている魔力……呪いを払う」


「呪いを払う?」


「ああ、でも、普通にこれを壊しても別のところで呪いがまた発生するだけだ」


 これは呪いの一部であってちょっと壊したくらいでは意味がない。

 多分、別の魔石にまた呪いが宿るだけだろう。


「だから、その呪いを具現化させる」


「うーん? どういうこと?」


 まぁ、ちょっと難しいよな。


「この呪いは強い魔力がある場所に集まってくるみたいなんだよ」


 この魔石に寄ってきたのもその影響だろう。


「だから、強い魔力を持った身体を用意してあげればそこに集まってくるはずだ」


 要するに罠の身体を用意して全てを集める。


「その後、そいつをボスとして討伐すれば完了だ」


「なるほど?」


 これでこの地にある呪いを全て払えるはず。


「問題は、その呪いが身体を持った時どんなものになるかわからないってことだな」


「あれ? お兄ちゃんが身体を用意するんじゃないの?」


「僕が用意するのはあくまでも釣るための魔力、まぁ、多少誘導することはできるだろうけど、それからどうなるかはわからない」


 結局、僕以外の魔力だからね。


「ただ、多分だけど僕らに敵対はすると思う」


 僕らっていうか僕か。おそらく魔力を奪い取ろうとしてくるんじゃないかな?


「だから、僕と雛香で一緒にそいつを倒すってわけ」


「なるほど! とりあえず、そいつをやっつければいいんだね」


 なんかあんまりわかってなさそうだけど……


「この中だと僕の魔力のおかげでダンジョンルールが適応されるからダメージを受けても死ぬことはないはずだ」


「つまり、いつものダンジョンボスってことだよね!」


「ああ、ただし、万が一僕がやられたら……」


 ダンジョンルールは僕には適応されない。それはつまり……


「大丈夫! お兄ちゃんは雛香が守るから!」


「頼むぞ……」


 僕だって何もできないわけじゃないけど、今回は雛香に頼るざるをえない。

 僕ができるのは、雛香のサポートくらいだろう。


「そうと決まれば早くやっちゃお!」


「……なんか雛香やけに嬉しそうだな」


 これから大変な戦いなんだけど?


「だってお兄ちゃんと一緒にボス討伐やってみたかったんだもん……それに……」


 それに……


「大丈夫! お兄ちゃんのことは雛香が絶対に守るから!」


 雛香は頼もしい笑顔で笑った。


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