表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれのダンジョンマスターが現代地球に転生してダンジョンを創造したら何か騒ぎになってるけど僕のせい?  作者: 猫月九日
第1.5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/177

閑話 とある医者の悩みその2

 しばらくの間ポーションを飲ませたが結衣ちゃんの体調が悪化することはなかった。

 それどころか、ポーションを飲むことで結衣ちゃんの体調は良くなっている。


 成分に心配は残るが、これは大丈夫だろうと考えていた。


 そんな時だった。


「先生、結衣が!」


 大愛さんが慌てて私の元にやってきた。

 慌てて結衣ちゃんのところへ向かうと、いつもよりも体温が下がって、手や足どころか身体の一部も凍りついていた。


 一体何が起こったんだ!


 そんな状態で結衣ちゃんは眠っている。まるで死んでしまったように……


「……っ! 脈は!」


 慌てて脈を確認する。

 大丈夫、脈はある。心臓は働いているようだ。

 つまり、ただ眠っているだけのようだ……


「ふぅ……」


 ひとまず、安心して一息をつく……いや、まったく安心できない。

 最近はポーションのおかげで体調が安定していのだけど、どうして急に容態が悪化したんだ?


「先生……実はこれを使ったんです」


 大愛さんに話を聞くと、どうやらまたダンジョンとやらで拾ってきたらしい。


「……回復の杖?」


 なんだそれは。

 どうも、ポーションと同じように、傷を治したり元気にする効果があるらしい。

 しかも、ポーションは一回きりなのに対して、杖は最大5回使えるらしい。


「ポーションが効くなら、これも効くだろうって思ったんです」


 そう考えて結衣ちゃんに使ってしまったらしい。


「そしたら結衣ちゃんが急に倒れてしまったと……」


「はい……」


 項垂れる大愛さん。悪気がなかったことは見てわかった。


「……できれば先に相談してほしかったですね」


 もっとも、相談されてもこの状況は予測できなかったから同じになったとは思うが。


「……ひとまず、様子を見てみるしかないでしょう、あ、今後はその杖は絶対に使わないように」


「はい……」


 数日後、結衣ちゃんの体調は元へ戻った。

 結衣ちゃんを色々と診たが、結局一番効いたのは、ポーションであったことは皮肉ではある。


 それから、例の回復の杖とやらについても研究所にお願いをしようと思ったのだが……


「30万!?」


 ネットオークションで30万で出回っていることがわかった。

 どうやら、かなりの価値でやり取りされているらしい。


 大愛さんから受け取って検証をしてみたが、どうやら確かにポーションと似たような効果があることがわかった。

 使うと映画の世界の魔法のようのキラキラと輝きながら傷が治っていく様子はまさに魔法のようだ。

 効果はポーションと同じくらいだが、確かにこれならば高値でやり取りされるのもしょうがない……

 どうやら、偽物なども横行しているらしく、自分ではネットオークションに手を出そうとは思わないが買おうとする気持ちもわかった。


 そんな魔法の杖を大愛さんは自分で入手してきたらしい。

 しかも、結構な量を持ってるとのこと……


 頼み込んで一本を譲ってもらった。

 それを研究所に解析をお願いした。

 まぁ、結局ポーションの方の分析もうまくいっていないのであまり期待はできないが……


「しかし、なぜ似たような効果なのに回復の杖だけに結衣ちゃんは過剰な反応を示したのか……」


 それがわかれば、結衣ちゃんの治療の役にも立つのだが……

 そもそも、ポーションや杖は一体どこからでてきたのか……ダンジョンとは一体……

 わからないことだらけだった。


 結衣ちゃんの容態が安定して数日後、


「先生、実は結衣に会わせたい人がいるんですけど」


 大愛さんが私を訪ねてきた。

 大愛さんがそんなことを言い出したなんて初めてのことだ、年頃の大愛さんだし《《いい人》》でもできたのだろうか?


 しかし、話を聞いてみるとどうやら違うらしい。


「ダンジョンの関係者が来てくれる?」


 例のダンジョンの関係者が結衣ちゃん用の薬を作ってくれるかもしれないとのことだった。

 そんなことができるのか? 私が何年かかろうとできなかったことだぞ?


 いや、しかし、あのダンジョンの関係者が我々ではわからない未知の力を持っていることはわかっている。

 もしかしたら……

 そんな希望を持って、面会の許可を出した。


 どうやら、そのダンジョンの関係者は自分の身を隠したいらしく私は会うことは許されなかったが、大愛さんには病院の1室を自由に使って良いと許可を出しておいた。


 それから数日、その関係者と大愛さんは何やらやっているらしい。

 一体何をやっているのか見当がつかないが……


「先生! ちょっと来てください!」


 大愛さんが私を呼びに来た。

 まさか、あの杖の時と同じようなことが起こったのか!?

 慌てて結衣ちゃんの元へ駆けつけると、


「あ、先生!」


 ベッドに座り込み、元気に私に手を振る結衣ちゃんの姿があった。

 何年も叶わなかったその姿を見て、私の目からは涙がこぼれ落ちた。



 それから、結衣ちゃんの容態はすっかり快復した。

 今はすっかり衰えた身体を再稼働させるべくリハビリに励んでいる。


 結局、結衣ちゃんの病気の原因はなんだったのかわからない。

 大愛さんを見ていると、何か聞いた感じではあるけど、秘密と言われてしまった。


 まぁ、いい。結衣ちゃんが元気になったことが何よりだ。


「先生、本当に行くんですか?」


「ああ、せっかくなのでな」


 そんな私は今、新たな扉を開こうとしている。

 大愛さんが冒険していたダンジョンへ、私も入ってみようと思うのだ。


「しかし、先生のお歳では……」


 ダンジョンの中には、モンスターもいると聞く。

 それでも、私の決意は変わらない。


「なにごとも体験だ」


 眼の前に医学だけでは理解できない未知の世界が広がっている。

 今後も何かあった時に体験をしておけばそれで救える人がいるかもしれない。


 それに、このダンジョンが悪意を持ったものでないことは良くわかっている。

 ポーションに回復魔法の杖、それに結衣ちゃんの病気を治してくれたことも。


 例のダンジョン関係者に感謝をしつつ、私はダンジョンへ入場した。



以上で閑話終わりです。

お医者さん視点で考えると、ポーションというのは得体の知れないものではあるということです。

ただし、効果は確かではあるので、次第になくてはならないものになっていく……そんな未来もあるかもしれませんね。


続いてが最後の閑話になります。

最後は本編キャラによる《《別の話》》となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ