第28話 みんなを幸せにするダンジョン
僕が作り上げたダンジョンシステムは魔素で転移などを行っている。
魔力回路がなくなってしまった雛香は、僕が作り上げたダンジョン空間にすら入ることができなくなってしまったのだ。
「いや、雛香は普通に現地ダンジョンには入っていただろ」
とはいえ、僕のダンジョン空間に入れないだけで、現実の場所をダンジョン化した場所には入れる。雛香は毎日そこに通ってはモンスターと戦っていたりした。
今日雛香が訓練として潜っていたダンジョンだって、真田さんに協力してもらって、近所の広めの土地をダンジョン化したものだ。
そこで雛香はレベルこそ上がらないものの、戦闘訓練をしていたってわけだ。
あれ? 何も変わらないんじゃない?
「全然違うよ! 雛香はお兄ちゃんの作ったダンジョンをめいいっぱい楽しみたいんだもん!」
もう抗議されてしまった。
いや、楽しんでくれるのはありがたいことだね。
「ともかく……雛香、準備はいいか?」
「うん! 早く早く!」
期待するように急かしてくる雛香。
その雛香に向かって、僕は水晶を掲げる。
水晶が淡く光り始めると同時に、雛香の身体も同じように光り始めた。
「おおっ! なんかこそばゆいよ!」
全員で見守る中、雛香が悶えている。
そのまましばらく経ち、光が収まった。
「これで……大丈夫なのか?」
「うむ、おそらく大丈夫……なはずじゃ!」
一見すると何も変わっていないようにも見えるんだけど……
「それじゃあ、早速、試してみようか。雛香、大丈夫か?」
「うん!」
僕は雛香に手を向けて、雛香の身体を修復するように意識を向ける。
ここは僕のダンジョン内。なんでもできる。雛香を治すことだって……
魔素を雛香に当てていく、変わった感覚は……ある。ある……が……
「なんか……ちょっとだけ……成長したか……?」
雛香の身長は相変わらずのミニマムサイズ。ちょっと髪がさっきよりも伸びたかなぁくらいのレベルだ。
「あれー? なんか一瞬、変な感じはしたけど?」
雛香も不思議そうに自分の身体を見回している。
「レリア……?」
僕もレリアを見る。
「ふむ……おそらくすべてを治すのには、器の量が足りなかったのであろうな?」
レリアは雛香を覗き込むとそう言った。
「えっと、僕の与えた魔素を受け取った器がすぐに満杯になったせいで、ちょっとしか変化がなかったってこと?」
「そういうことじゃな……」
ふむ……つまり……
「雛香はまだしばらくこの状態ってことかな?」
「ええー!」
雛香が大きな声をあげた。
なんだか、あれだな、期待させちゃったみたいで申し訳ないなぁ。いや、期待させたのはレリアか?
「い、いや、ちょっと待つのじゃ! 少しは変化があったってことであろう!? 魔力回路ができたのは間違いないのじゃ! つまり、魔力回路を徐々に強化していけばよかろう!」
それはそうかも……まぁ、0よりは良くなったのか?
「それにじゃ! 魔力回路があれば、ダンジョンに入ることはできるのではないか!?」
うん? えっと……
「そうかも?」
あくまでも0じゃなければ、入れるはずだよね? 他の人にだって、極端に魔素を受けられない人とかいるし……というか、大半の人がそうだし。
「ほんとに! 雛香、ダンジョンに入れるの!?」
一転して嬉しそうに雛香は僕の腕を掴んで引っ張る。
「それじゃあ、行こうよ! お兄ちゃん!」
「いや、なんで僕まで!?」
「こういうのは、一緒じゃないと!」
なんかよくわからんけど……まぁ、いいか。
「ふむ、それでは私も一緒に行きましょうかね」
「あ、私も一緒にいいですか?」
「結衣も!」
「「もちろん、私たちもいきますよ」」
「儂も経過観察したいからの」
結局全員が名乗り出てきた。
「あー、それじゃ、せっかくだし……今開発中の新しいダンジョンにでも入ろうか」
「ほんとに! そんなの作ってたの!?」
これはまだ言ってなかったからな。
「うん、やっぱりダンジョンは皆を幸せにするものだからな」
そう、それが僕の理念。
隣にいる、雛香、それに他の子たちも、皆が笑顔だ。
でも……
「一番幸せになったのは僕なのかも……なんてね」
皆を幸せにするダンジョンは、僕の幸せも運んできてくれた。
だって、皆に負けないくらい、僕だって笑顔になっているんだから。
これにて物語終了です。
ここまでお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました!
またどこかでお会いできることを祈っております!




