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落ちこぼれのダンジョンマスターが現代地球に転生してダンジョンを創造したら何か騒ぎになってるけど僕のせい?  作者: 猫月九日
第6章

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第21話 数の力

 ついに魔王ヘラクと地球との総力戦が始まった。

 まず真っ先に動いたのは真田さんだった。


「みんなを強化するよ!」


 真田さんがそう言うと、真田さんから薄い光の膜が周囲に広がって包みこんでいく。


「うぉっ! なんだこれ!」


「なんか動きやすくなったぞ!」


「これは、全能力バフだ! 助かる!」


 一瞬混乱した周りの人たちだったけれど、さすが歴戦の猛者たち。すぐにバフだと気がついた。

 ちなみに僕はその能力は知らない。聞いたこともないと思う。間違いなく僕が出せるスキルにはない能力だと思う。

 多分、真田さんの勇者特有の能力なんだと思う。便利そうだからあとで聞いておこう。


「いくぞっ!」


 誰かの号令とともに、意気揚々と魔王ヘラクに向かって攻撃を仕掛けていく人たち。いきなりの空中戦なのにすぐ動けるのが凄い。

 剣を持っている人は剣を振るい、弓を持っている人たちは矢を放つ。

 そして、遠距離から魔法攻撃まで。さすがトップ層。どれも結構な威力だ。


「小賢しい!」


 しかし、魔王ヘラクにとってはその程度の攻撃は多少うっとおしい程度のようだ。

 ヘラクは一度引いた後に、大きく腕を振るうと闇の空間が開き、そこから魔物が出現した。

 現れたのは、まるでヘラクを少し小さくしたようなモンスターたち。

 人型だが翼が生えていて、空中を飛び回りながら手に持った大型の槍で冒険者たちを攻撃していく。


「おいおい!」


 初見のモンスターたちに戸惑いを見せながら迎え撃つ冒険者たち。


「これで終わり……っ!」


 さらに続けて攻撃を放とうとした魔王だけれど、すぐに薙ぎ払うように振り返った。


「おっと、さすがに簡単には取らせてくれんか」


 どうやらレリアが隙をついて攻撃を仕掛けようとしていたみたいだ。


「はっ! レリア! 貴様1人で何ができる!」


「儂1人でお主を倒すことはできないかもしれぬな! しかし、儂はお主を止めればいい! いずれ者どもが魔物を攻略するであろうからな!」


「そうだね、それにレリアさんだけでなく、僕も一緒だ」


 真田さんもそこに加わり、魔王と真田さん、レリアのコンビが戦いを始めた。


「早すぎて全く見えない」


 戦いはどうなっている? 苦戦しているのか? 押しているのか? それすらもわからない。

 でも、このままではいけない。なぜなら相手はあの魔王ヘラクなのだから。

 この戦いで重要となるのは、冒険者たちの動きだ。だけど……


「くっ! 動きがわからん!」


「しかも、硬え! 剣が通らねぇぞ!」


 冒険者たちは初見の敵に、しかも慣れない空中戦ということで、どうも押され気味のようだ。


「落ち着いてください! どんな敵でも弱点はあるはずです!」


 聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 そちらを振り向くと、大愛さんが大きな槍を持って飛んでくるモンスターに反撃しているところだった。

 大愛さんは僕からのお願いでこの戦いに参加してもらっている。


「わかりました! 弱点は羽根の付け根部分です! ここだけ少し攻撃が通ります!」


 相手の攻撃を避けて、大愛さんがモンスターにカウンターを入れる。

 片方の肩を突かれたモンスターは大きくよろめき、その瞬間に大愛さんが集中攻撃を仕掛ける。


「羽根の付け根……ここだな!」


「魔法系が得意なやつは羽根を凍らせると動きを止められるみたいだぞ!」


 大愛さんから持たされた情報をもとに、冒険者たちも次第にモンスターに対処できるようになってきた。

 そうだよね、さすがこの世界の人たちは適応力が高い。


 しだいに数を減らしていくモンスターたち。

 補充をしようにも、レリアと真田さんがそれを許さない。

 さすがのヘラクでも一瞬で召喚はできないみたいだ。


 そうして、フリーになった冒険者たちは次々とヘラクへと挑みにいく。

 もちろん、ヘラクとの力の差は圧倒的だけど、さすがのヘラクも数の暴力によりかなり動きづらそうにしている。


「ここじゃ!」


 そうして、ヘラクが一瞬冒険者たちに気を取られた隙にレリアが強力な魔法をヘラクに叩きこんだ。

 さすがのヘラクも攻撃を受けてよろめく。


「今だ! みんなで一気に攻撃するぞ!」


 その隙を見逃す冒険者たちではない。それぞれの得物を振るい、ヘラクへ攻撃を仕掛けていく。

 しかし、ヘラクもそう簡単にやられはしない。


「小賢しいわ! この虫けらどもが!」


 ヘラクの身体から薄暗いオーラのようなものが放たれていく。


「あ、やばい!」


 僕はすぐにそれを見て、行動に出た。魔力を込めて、無敵フィールドを展開する。

 しかし、その展開が間に合わずに、ヘラクから放たれたオーラに触れた冒険者たちが一瞬のうちに光の粒子となって消えていく。


「即死攻撃!? まじかよ!」


「なるほど、一定時間以内にNPCの守りの中に入らないと即死ってわけか!」


「そうだよな! これくらいはあるべきだよな!」


 一瞬にして半分くらいになってしまった冒険者たちだったが、その士気は衰えるどころかむしろ上がっているくらいだ。

 そう、なにせ彼らにとってこれはダンジョン内での死亡に過ぎないのだから。


「里楽さん!」


『はい、もう招待を投げています』


 そう彼らは死んだわけではない。里楽さんの返答と同時に、背後に設置したリスポーンポイントから冒険者たちが復活する。


「うおっ! びっくりしたぁ!」


「なるほどね、即死ギミックか、理解した」


「こりゃ、面白くなってきたぜ!」


 そう言いながら、冒険者たちは再び戦場に向かっていく。

 その表情はむしろ楽しそうにすら見える。


「くそっ! 貴様っ!」


 ヘラクの怒りで血走った目が僕を捉えた。

 どうやら、魔王も僕のことをやっと脅威と認識したようだ。

 そう、ヘラクが配下の魔物を召喚するように、僕も冒険者たちを無限に招待できるんだから。


「この虫けらどもがぁああああ」


 怒りに震えるヘラクから黒いオーラが立ち上がる。


「第二形態か!」


「いけっ! チャンスだ!」


 動きを止めたヘラクを見て、数人の冒険者たちが攻撃を仕掛けようとした。


「いかん!」


「離れろ!」


 レリアや真田さんが叫んだ。

 ここに来てゲームだと認識していたことの弊害が発生してしまった。


 そう、あれは別に第二形態への変身なんかじゃない。

 その証拠に、僕の目にはヘラクが大量の魔素を吸い上げているのが見える。

 これはとんでもない大技が……


「がぁああああああああああ!」


 瞬間、ヘラクの身体が弾けたかのように大きく膨れ上がり、そこから無数の太い触手のようなものが伸びてきた。


「しまっ!」


 無数の触手は一瞬にして前線にいた真田さんの胸を貫いた。


「えっ?」


 他の人たちも避けられるはずがない。

 無数の触手に貫かれた人たちは一瞬にして光の粒子となって消えていく。


「くっ! しばし任せ……」


 頼みの綱のレリアも僕をかばうようにして触手に貫かれた。

 一瞬にして前線にいた全員がいなくなった。


「やれやれ」


 そうして、魔王が僕の眼の前に迫る。


「貴様さえ殺ればおしまいだ」


 大きな腕を振るう魔王。これを受けてしまっては僕はひとたまりもないだろう。

 でも、まだ大丈夫。こんなこともあろうかと、僕の側にずっと待機していたやつがいるんだから。


「……雛香」


「うん、お兄ちゃんは私が守るよ」


 雛香が剣で魔王の腕を受け止めた。



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