第2話 レベル50
「改めまして、朝倉大愛です」
「妹の朝倉結衣です!」
戻るとちょうど大愛さんたちが自己紹介をしているところだった。
対するこちら側は、
「お兄ちゃんの妹の雛香だよ」
「お久しぶりです。真田里楽です」
2人は前に大愛さんとは会ったことあったよね。
流石の里楽さんも子どもの結衣ちゃんには緊張……頑なに目を合わせてないね。
まあ、2人のことはいいか。
「ダンジョン管理担当のミミです」
ミミは初めてだよね。
「あの……ミミさんってあの……」
「レントバーグの街のギルドマスターさんですよね!」
あ、そっか。そっちで見てるのか。
「AIって話なんですけど……本当なんですか?」
「こう見ると普通の人に見えます」
「はい。おっしゃる通り私は飛鳥さまに作られた存在です」
まぁ、普通に家の中にいる人って感じだからね。気持ちはわかる。
「付け加えると、ミミは単なるAIじゃなくて僕のスキル、ダンジョン妖精でもあるね」
「えっと……?」
「ダンジョン妖精? 妖精さんなんですか?」
もうその辺りよくわからなくなってるけど。
「まぁ、頼りになる仲間って思っておいてください。ほぼ人みたいなものですし」
食べるしお風呂に入るし、恋もする。そんなのもう人みたいなものでしょ。
「と、まぁ、あと協力者がいますけど、メインメンバーはこのくらいですね」
「随分と人数が少ないんですね……」
確かに考えればよくこの人数でやれてるよね。
まぁ、うちの親とか真田さんの協力あってこそだけど。
「その辺りについてもうちょっと説明しようかと思うんですけど」
ちらっと結衣ちゃんの方を見る。
「あ、じゃあ私は席外してますね」
「それなら雛香と一緒にダンジョンに行かない? どうせ雛香も聞いててもよくわからないし」
雛香よ……いや、ありがたくはあるんだけど。
「お姉ちゃん、いい?」
「ええ、いいわよ。雛香さん。結衣のことよろしくお願いします」
「うん! 任せて一流の戦士にしてみせるから」
それはそれでどうなのよ?
とりあえず、雛香と結衣ちゃんがダンジョンに行くのを見送って残りのメンバーで改めて現状を話す。
「超大手企業の社長さんに世界的なフィクサー!?」
うちの両親や真田さんのことを話すと大愛さんは酷く驚いていた。
「それで今は五重塔ダンジョンを中断して別の要素に取り組もうとしているところです」
「ひとまず現状については理解しました」
時間をかけてようやく全てを話し終えた。
「さて、話しておくことはこのくらいかな?」
あとはこれからのことになるんだけど……
「どうします? 今後の予定とかについても今話します? それともまた別の日にしますか?」
その辺り特に決めてなかったなぁ。そもそも、今日は契約とダンジョン開通だけの予定だったし。
「そうですね……結衣もまだ戻ってきませんし、聞いておきたいです」
そういえば、雛香と結衣ちゃんは全然戻ってきてないね。まぁ、ミミが何か言ってこないところを見ると順調なんだろうけど。
「さて、それじゃあ今後の予定について話しましょうか」
ここからは里楽さんやミミともまだ話していない部分だ。
「とりあえず、ですが、まず僕のダンジョン創造スキルのレベルが最近になって50を超えました」
ようやく前世のレベルが見えてきたところだ。でも今年始めたことを考えると異常な早さではあると思う。
前世でこのレベルに達するのに何十年かかったことか……
いや、考えるのはやめておこう。
「それでですね。このレベルになってできることがまた増えました」
スキルレベル50になって開放される要素。
「それがモンスターのペット可です」
これが次に手掛けようとしている内容だ。
「モンスターのペット可……ですか……」
まず、里楽さんが首を捻った。
「それが最近追加されたんですか?」
「うん。ちょうど3日前くらいだね」
まぁ、正確な日付はどうでもいいけど。
「しかし、それではあのレントバーグの街のモンスターたちは違うのですか?」
うん? あー、そういうことか。里楽さんの言いたいことがなんとなくわかった。
「あっちはあくまでも、人に好意的なモンスターってだけだね」
まぁ、ある意味ではダンジョンにいるモンスターたちは全て僕のペットと言えなくはないけど。
「ちょっと言い方が悪かったね。モンスターをペット可できる能力を与えられるようになったって方が正しいね」
うん、大きな違いだ。
「……それはつまり、飛鳥さん以外の人がモンスターをテイムできるようになったってことですか?」
「そういうこと」
大愛さんの言葉に頷く。
「なるほど……それで私が必要になったということですか」
正解。モンスターをペット可するんだったらやっぱりデザインが良いモンスターが重要だからね。
もちろん、世間的に気持ち悪いモンスターって言われるモンスターが好きって人もいるだろうけど、それでもデザインが重要だからね。
「確かに……これはデザイナーとしての腕がなります」
その重要性がわかって大愛さんは張り切っている。
「……相変わらずとんでもない能力ですね……」
対して里楽さんが頭を抱えている。
「里楽さん? どうかしたんですか?」
「大愛さん……あなたはこの問題のヤバさがわかっていないのですか?」
「ヤバさ……ですか?」
あ、やっぱり里楽さんはそこに気がつくよね。
「単刀直入に聞きます。飛鳥さん、テイムしたモンスターをダンジョンの外に呼び出すことはできますか」
相変わらず里楽さんは察しがいいなぁ。その答えは……
「うん、できるよ」
僕の答えに里楽さんは天を仰ぎ、大愛さんは大きく目を見開いたのだった。




