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24/63

part Aki 12/24 pm 3:57




 

 公演終了。

 自分のソロ 終わったときは もうちょっとで 泣くとこだったけど 全体終了時には もう 平常心に戻ってる。そう。ボクは 人前で泣くのは 恥だと思う 古風な男子。瞳の前では 2回も泣いちゃったけど そう易々と泣くわけには いかない。



「ヤッパ あきって クールだねェ。なっちゃん ボロ泣きだよ?」



 舞台を降りると サクヤが近寄ってきて 話しかけてくれる。

 講堂の説教壇を そのままステージにしてるから 舞台袖なんて無い。終わったら すぐ お客さんと話せるのが 聖歌隊の公演のいいところ。…ただ 今の ボクは すぐにでも 瞳のところに行きたいんだけど……。


 

「あー そーでも ないです。けっこう ウルッときてました」


「ふーん。そーは 見えなかったけどねー」


「……アキ お疲れ」



 はるな も スッと寄ってきて 声をかけてくる。



「はるな 寒かったでしょ。ホント ゴメンなさいです」


「ううん。いいのよ。アタシ 音楽 嫌いだし。付き合いで来ただけだから 丁度 よかったってトコ。……でも アキのソロの声 外まで聴こえてた。いい声だったよ」



 はるな は この寒い中 入り口でモギリをしてくれてた。

 新歓公演も 文化祭のときも モギリなんて いないから すっかり忘れてて 公演寸前に なっちゃんと慌ててたら 聖歌隊でもないのに スッと立候補してくれた。憎まれ口 叩かずにはいられない性格だけど ホント 優しい。……ただ 今のボクは せっかく来てくれた 瞳のところに行って 一言 お礼が言いたいんだ。瞳は 自分の席の辺りに立って こっちの方を眺めてる。瞳にしてみれば ボクの友達は みんな知らない子ばっかだから この輪に入ってくるのは難しい。だからこそ ボクから行かなきゃダメなのに…。…なのに ボクらの話の輪に 美優姉まで 参戦してくる。ボクの周りのバリケードは 厚くなる一方。終いには 泣き止んだ なっちゃんまでが 話の輪に加わった。瞳は 所在なげに こっちを 見つめてたけど 遂に諦めたのか 入り口の方へ 歩きだしてしまう……。



 

 ボクが『友達 来てるんで…』って 切り出して 話の輪から抜け出せたのは それから 2分以上経ってからだった。


 

 講堂から 2分ちょいだと たぶん まだ 正門近くにいるハズ。

 だけど 帰りの荷物を 控え室に取りに行ったりしなきゃだから 今から 走っても きっと 間に合わない。そう とっさに判断して 慌てて電話をかける。いつもなら カバンの中だけど 今日は 開演ギリギリまで トランシーバー代わりに 色々連絡 取ってたから スマホを手元に置いてた。ケガの功名ってヤツだ。



 

 ……プルルルッ プルルルッ



 2回の呼び出し音で 瞳が電話に 出てくれる。

 


「あっ もしもし ボク。今日は ありがと。……あのさ まだ 学校の中にいる? もし よかったら 一緒に帰ろ?」


『あ。……うん。まだ 正門のとこだし ここで 待ってたら いい?』



 よかった。まだ 校内だ。せっかくだし 会って 色々 話したい。



「うん。それで お願い。荷物 取って 直ぐ行くから。もうちょっとだけ 待っててよ」


『ううん。ゆっくりで いいよ。友だちと 話も あるだろうし…。待ってるから ゆっくりで 大丈夫。大丈夫』



 

 帰っちゃう前に 瞳を捕まえることが できた。ホッと胸を撫で下ろして 電話を切る。


 

 ……そして 周りの 視線に気がつく。


 

 自分のやっちゃったことに 気がつき 血の気が引く。

 ……完全にミス。大ポカだ。慌ててて 電話の相手は 瞳。いつもの 夜の電話のクセで 完全に 男の子喋り。たぶん『ボク』って 言ったような 記憶すらある。『です・ます』喋りじゃないのは 相手が家族だったとか言えば 取り繕えるかもだけど『ボク』は なんにしてもマズイ。納得の巧い言い訳って 何か有り得るだろうか?

 


 ……いや。こーゆーときこそ ポーカーフェイス。

 何事もなかったような顔して やり過ごそう。今日は もう冬休み中。今日さえ 乗りきれば 次 みんなに会うのは お正月明け。3週間近く先だ。ウヤムヤにできるハズ。



「友達 待ってるんで 先に帰りますね。お疲れでーす」



 にこやかに挨拶して 控え室に急ぐ。

 制コートを着て カバンを持って 控え室の扉から出たところで 今度は パパとママに出くわした。



「亜樹ちゃん とっても素敵だったわ~。ほら見て? これなんか 可愛く撮れたと思わない?」



 ママは デジカメの写真を見せようとしてくるけど こっちは 忙しい。瞳は 待たせてるし 他の友達は できれば撒いておきたい…。こんなところで 時間をとられるワケには いかないんだけど…。



「ゴメン ママ。ちょっと 急いでるから。また 家で見せて」



 イラッとするから 男の子喋りになりそうになるけど これ以上 周りの疑惑を深めるのは いかにもマズイ。努めて落ち着いて話すようにする。



「あら? そうなの? じゃあ 用件だけ…。今日 パパも お休みだし これから ちょっと美味しいものでも 食べに行こうかって 話してたんだけど 亜樹ちゃんも 一緒に来る?」



 この2人が『美味しいもの』って言ったら たぶん 本町裏のお鮨屋。年に一回 食べれるかどうかってゆー美味しくて高いお店だけど 今のボクにとっては 瞳の方が100倍大事。



「いや いい。2人で ゆっくり食べてきて」


「……そうか。亜樹 これ…。晩飯代」



 パパが 財布から お札を渡してくれる。えっ!? 5千円札? マジか?



「ありがと。パパ…」


「アナタ ちょっと 渡し過ぎじゃない? 亜樹に甘いんだから…」



 パパは ボクと微妙に 眼を合わせないようにしながら ボソッと 話す。



「なんか 〈彼女〉できたらしいな…。その子と一緒に 何か食べてきたらいい」



 パパは ボクが男の子だってゆーことを 理解はしてるけど 納得はできてないってゆーような感じ。どう接していいのか 困ってるのが ありありと伝わってくる。まぁ 小さい時はともかく 中学 入った頃から そもそも あんまり 喋んなかったんだけど…。

 


「あら? そう言えば 瞳ちゃんは? さっき チラッと見かけた気がするけど…?」


「正門のとこで 待ってくれてる」


「寒いのに 待たせちゃ悪いわね…。ごめんね 引き留めちゃって。瞳ちゃんに よろしくね」


「うん。わかった。ありがと」



 いや マジに 引き留められたのは 迷惑だった。誰より先に 控え室を出る計画だったのに もう 他の子たちも 帰り始めてる…。瞳にも かなり待ってもらってるし……。でも 5000円は 大きい。2人で ファーストフードと言わず ファミレス行っても お釣りがくる。今日 会う予定じゃ なかったから 何も計画立ててないし 瞳に 夕方 予定が入ってるかも 知れないけど せっかくだし デートできるか 聞くだけ聞いてみてもいい。だって クリスマスだもんな……。


 ………。

 ……。

 …。




                        to be continued in “part Kon 12/24 pm 4:05”







 

 


 



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