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8.負け確じゃん

「スゥーーーー。」


 アルマスは教室の天井を仰ぎながら息を吐いた。

 外は快晴。雲一つとしてない。


「おっ、どうした?」


 そんなアルマスに金髪の青年が声をかける。


「ケテルか。ヤバい。なーんもわからん。」


 アルマスは頭から煙を出している。

 彼の机の上にはついさっき出された課題が広がっていた。


「このぐらいさっきの授業ノートを見れば一発だろ。夏顔負けの暑さにやられたか?」


 彼の言うとおり今日は猛暑日である。夏まではまだまだ遠いが今日のデータだけを見せれば夏と間違われるくらいに。


「そんなところだ。今日は調子が悪いんだ。イグテスもトランクの中で休んでるし。」


 トランクをコンコンと叩きながら言う。


「へー、意外な弱点だな。日光に弱いとか、さてはお前ら吸血鬼か?」


 ケテルはアルマスをからかう。


「馬鹿言え、俺が吸血鬼ならもっと魔力線はあるはずだ。吸血鬼ってのは鬼の中でも魔法が得意な奴らだ。吸血鬼がまともに魔法も使えない道具頼りなわけないだろ。」


 アルマスは少し笑顔を取り戻してケテルに言い返す。


「確かに。お前が吸血鬼だった日には、俺はこの世界に幻想を見るのをやめて、科学者になってやる。っていうか、お前はどっちかいうと科学者じゃね?あっ、そこはこの式使うと上手くいくぞ。」


 ケテルはノートに書かれた式を指差す。


「あざっす。科学者か、、あー、ん-、そうかもな。こいつらの核と補強は魔法だが、骨組みは科学方面に足を突っ込んでるからな。第一、魔法は捻じっているだけで論理を積み上げていることは科学となにも変わらない。」


「なのにこんな問題も解けないと。」


 ケテルは課題を指差す。


「言っただろ、調子が悪いって。第一、俺という個体の存在理由は核だからというぐらいしかない。そうでなければ、イグテス自身が学校に通えば良いだけだしな。」


「その流れるような自虐癖やめたら?気が滅入るぜ。」


「気ならいつも滅入ってるから問題ないな。」


「それは問題しかないってやつだ。」


 アルマスとケテルは笑い合う。

 まだ、入学して一週間程度しか立っていないが、アルマスとケテルは旧知の間柄のように親しい仲になっていた。

 アルマスが身分をあまり重視していないことが上手く働いたのだろう。アデケイラも同様であり、ケテルとアデケイラが話している場面もよく見られた。


「で、春季大会何に出るか決めたか?」


 ケテルは空中に春季大会の競技を書き出した。


「まだー。」


「ですよねー。」


 空中に漂う文字は、獣狩り、魔法戦、攻城戦、宝探しの四つであった。内二つ、獣狩りと宝探しは燃え尽きた。


「何でも持ち込めるのは攻城戦ぐらいか?」


「そうだな。既にトーマス、スビンが選んだが獣狩り、宝探しは持ち込める数に限りがあった。残っている魔法戦に関しては一つだけ。」


 どうやら四種目あるが、一班で一人一つのようだ。


「じゃあ攻城戦一択だな。」


「良いのか?危険らしいぜ?」


 攻城戦では基本的に大砲などといった兵器が持ち込まれることがあるため、大きな事故は必然的に増える。


「うちの奴らを舐めて貰っちゃぁ困る。第一俺本体は魔法なんてまともに使えねえよ。」


 アルマスはトランクをまたコンコンと叩く。


「他力本願かよ。」


「同一存在だから自力本願だぜ。」


「周りから見れば同じだよ。」


「検査は問題ない。」


 アルマスは事前にテトラに相談していたようだ。


「マジかよ。じゃあ決定だな。」


 攻城戦の文字は燃え尽き、必然的に残った魔法戦の文字も燃え尽きた。


「この後は?」


 ケテルはアルマスにこの後の予定を聞く。


「飯食って、冒険者になるための書類貰ってきて記入して、雲が出てたら試験受けてくる。」


 アルマスは材料費や研究費を稼ぐために冒険者の資格を取りに行くようだ。


「冒険者か、俺も余裕が有ればやってみたいんだが、部活に行ってみたいからな。何かいいのあった?」


「しっかり見てないからわかんね。前さらっと目を通した感じたと、安定の武術系、魔法科学系、芸術系の他に球技とかようわからんジャンルもあったぜ。まあ、俺とアデケイラは冒険者として金を稼ぐがな。」


「すまんが、俺は金に困ってないんでな。」


 ケテルは親指と人差し指で円を作る。アルマスは羨ましそうにそれを見る。


「そうだ。ケテル共同開発しようぜ。」


 唐突にアルマスはかなりふざけた調子で言う。


「やらんよ。無駄遣いするだろ。」


 ケテルは雰囲気を感じて適当にあしらう。


「しないって。八割失敗して、莫大な金がかかるような実験をするだけさ。」


「ふさけんなよww、誰がそんなんするか。でさ、次の休み町に行こうぜ。アデケイラも了承してくれたぜ。」


 ケテルは次の休日に町に遊びに行こうとアルマスを誘った。ちなみにアデケイラも既に誘っていた。


「いいぜ、大会前の景気づけってか?」


「勿論さ!パッと散財しようぜ。」


 アルマスの言葉から分かるが、休日の後は直ぐに春季大会が始まる。大会は町のお祭りと共に行われ、大会はそのメインイベントのような位置づけにあったりする。祭りは一週間続き、1年が参加する競技は初日と二日目だけだ。


「他に誰か来るのか?」


「トーマスとケビンは誘ったんだが、大会に向けて準備しにいくから無理だってよ。真面目だな。」


 ケテルはやれやれといった雰囲気を出しながら言う。


「あいつらの反応の方が普通だろ。普通は大会の後に町をまわるだろ?まあ、お前のことだ有名になる前に町を見ときたいんだろ。」


「良く分かったな。俺は活躍とか関係なく有名になってしまう。その前に普通の街並みを見てみたいんだ。」


 ケテルは少し、寂しそうに言う。


「馬鹿言え、今の俺達の姿を見たら、お前を敬おうとする馬鹿は居ねえよ。」


「それはそれで困るな。」


 アルマスとケテルは笑いながら、どうでも良い雑談に花を咲かせた。


◇ ◇ ◇


「つーかーれーたー----」


「お疲れ様、その感じだと問題なかったようだな。」


 アルマスとアデケイラは売店から寮への道を歩いてる。日は既に落ちており、道は電灯で照らされていた。


「おう、問題なく合格できた。大牙猿が出てきたときは少し焦ったが、問題なく処理できたしな。」


「それは良かった。こちらも特に問題はなかった。」


 二人はさっきまで冒険者資格を取るための試験を受けていた。

 内容としては特定の場所に生えているとある草を摘んでこいというものだった。


「イグテスは問題なかったのか?」


「今日はあんまり活動して貰ってない。調子悪いときに使って壊しでもしたらヤバいからな。」


「お前の場合、ヤバいどころの話ではないだろう。」


「でさ、お前はどの競技に出るんだ?俺は攻城戦だぜ。」


 アデケイラのこの言葉を無視し、話題を変える。


「奇遇だな。俺もだ。」


 アルマスは顔面蒼白になる。


「どうした?」


「だって、お前、仕掛けとか全て簡単に薙ぎ払ってきそうじゃん。お前と真っ向勝負できる戦力を持ってる奴なんていねえよ。」


 ハァー、とアルマスはため息を吐く。


「君たちも攻城戦の参加者なのかい?」


 突然、背後から活発な子供っぽい声がした。アルマスとアデケイラは振り返る。


「こんばんわ!」


 そこにはユリの花が似合いそうな少女がいた。

 髪は綺麗な銀色で肩までかかっている。背はアルマスより二回りほど小さいが、少女は浮遊により二人を見下ろしていた。その大きな瞳は綺麗な碧で魔法を行使しているためか少し光っていた。背には黒い大きな縦長の箱を背負っているが、重くはなさそうだ。


「僕の名前はロティカ。黒晶の魔法使いと言えば聞き覚えないかしら?」


 アルマスとアデケイラは互いに顔を見合わせ、首を傾げた。


「すまないが俺達はその名を知らないようだ。」


 アデケイラの言葉に少女は驚愕する。


「はあああああ?!!!僕の名前は兎も角、黒晶の魔法使いを知らないの?いや、僕の名前も合格の掲示板にデカデカと特待生として張り出されてたけどさ。向上心とか無い訳?上の奴らを蹴落とすくらいの気概とかないの?」


「全く、就職も半分本音だけど、魔法に関わってみたかったぐらいのノリだし。」


 アルマスの即答に彼女は大きなため息を吐く。


「はあー、同じ競技に出る奴がいて仲間がいたと思ったのに、こんな奴が相手だと指先一つで終わってしまうじゃないか。君も魔法は初心者の様だしこれは僕の圧勝確定かな。」


 彼女はアルマスを軽蔑し、アデケイラもその同類とした。


「はあ!?何言ってんだ。魔法と戦闘力は別物だ!俺は兎も角、アデケイラを舐めんなよ!」


 ロティカの言葉にアルマスが食い掛かる。


「へぇー、自分のことは認めてるんだね。」


 アルマスの言動にロティカはクスクスと笑う。


「じゃあ、友に期待されてるアデケイラ、精々、決勝まで上がってきなよ。その時は瞬殺してあげるとも。」


 ロティカはアデケイラに言う。


「ああ、全力でいかせて貰おう。」


 気が付くとアデケイラの眼は紅く光っていた。

 その姿からだろうか、ロティカはアデケイラへの評価を改める。


「確かに君は怪物のようだ。全霊で討伐してあげるよ。」


 二人の間に火花が散る。

 そんな中で、蚊帳の外のアルマスはただ黒い箱に己に近しい何かを感じ取っていた。


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