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4.俺は検査が嫌いだ

テスト辛い。

 カラーン、カラーンと鐘の音が校舎に響き渡る。ガタガタと生徒たちが椅子を動かす音が聞こえる。


「おーい、席につけ。欠席者はいるか?いるなら手を挙げてくれ。、、、欠席者はいないな。」


 テトラによる適当な出席確認と共に朝のショートホームルームが始まった。テトラは教室を見渡して、生徒二十人全員がいることを確認して話始めた。


「えーっと、連絡事項は特になさそうだな。そういや売店でセールやってるらしい。あと、教材買ってない人は明日までに買っておくように。あとは、、、あっ、そうそう、寮の部屋割りについてだが誤りはないってことぐらいだな。」


 テトラはメモを見ながら眠そうにあくびをする。


「あと、最後に昨日自己紹介できなかった二人、アルマスとアデケイラは授業まで時間あるからやっといて。」


 テトラはアルマスとアデケイラを見ながら言い、その後イグテスを見て、


「イグテスだったか?そこの席はお前の分だから座っといて良いぞ。」


 誰も座っていない席を指さして言った。


「では、お言葉に甘えて。」


 イグテスもその席に抵抗なく座った。もちろん、他の生徒は誰だこいつ?となっている。


「じゃあ、アルマスから、どうぞ。」


「は、はい」


 アルマスは急に当てられ焦っているため、イグテスと高速脳内会議を始める。


(イグテス、なに話せば言いと思う?)


(名前と、、出身地はダメですね。名前と趣味と好きなこと、嫌いなことって感じでいいんじゃないですか?)


(そうだな。俺の紹介の補足頼んだ。)


(はいはい、分かりました。では、行きましょうか。)


 アルマスとイグテスは席を立って教室の前方に行く。


「えー、アルマス=クロックです。趣味は小道具作りで、好きなものは鉱物で、嫌いなものは、、蜘蛛です。で、こいつが」


「広義的には使い魔のイグテス=クロックです。基本的には魔法の苦手なアルマスに代わって魔法の代行などを主に行います。普段は人の姿をしていますが、一応どんな姿にもなれます。これから、よろしくお願いします。」


 アルマスそっちのけでイグテスの存在に教室内はざわざわする。どうやら人造の生命でここまで知能が高いのは珍しいらしい。


「そのイグテスは誰が作ったんだ?」


 赤髪の生徒がアルマスに質問する。


「勿論、俺産だ。素材は厳選したし、時間も結構かかったが、技術的には特別なことは、、、あまりしていな、、いや、結構してた気がする。今の俺では再現は無理だってことを言っておこう。一応、用意さえあれば誰でも再現は可能ではあるはずだ。まあ、もちろん手法は秘密だが。」


 赤髪の生徒はかなり疑問を残していたが、それ以上質問しなかった。


「じゃあ、次、アデケイラ。」


 テトラはアルマス達が席に戻ったことを確認し、アデケイラに声を掛けた。


「アデケイラだ。山で育った。知識は独学なので偏りがある。体力には自信がある。よろしく。」


 アデケイラは短く済ませて自身の席に戻った。ちなみにアルマス、イグテス、アデケイラの席は最後列であり、窓側から順にアデケイラ、アルマス、イグテスとなっていった。

 生徒の反応はと言うと、彼の常人離れした巨体と覇気にちょっと言葉が出てこないようであった。

 ちょっとした沈黙の後、また、カラーン、カラーンと鐘の音がなった。授業の開始の合図であった。


「では、授業を始めるぞ。この魔法基礎の担当は俺だ。改めてよろしく。」


 テトラは壇上に立ってそう言うと早速黒板を書き始めた。 


「じゃあ、早速だが魔法の行使に必要な物を答えろ。ガリア。」


 金髪の女生徒の名前を言いながらテトラは質問する。


「魔力と魔力の方向性です。」


 ガリアはそうスムーズに答え、テトラも頷いてそれを黒板に書く。


「正解だ。あと、魔力に代用できる物があるんだが、知っている奴いるか?」


 テトラがそう聞くと大多数の生徒が手を挙げる。


(うわ、やる気スゲー、、いつまで持つだろうか。)


 テトラは内心そう思いながら、黒髪の男生徒を当てる。


「じゃあ、タトラック。」


「はい、魔法を行使する者の所有物です。また、変換量としては所有者から見た価値の大きさに比例し、また割合的には微小ですが、他者から価値にも影響されます。」


「はい、正解。」


 テトラはそれについて黒板に書き出す。


「よく挙げられるのは宝石とかだな。ときどき宝石魔法を聞いたりするが、あれは基本的に宝石は貴重なもので価値があるという他者からの評価を基盤に成り立っているものだ。微弱とは言え、文明圏に住んでいる人類全てがそう思っていると言っても過言ではないから、その力は凄まじいものになっている。あと、この系統で耳にしたりすることと言えば、自身の体を使ったりすることぐらいか?まあ、これも魔獣討伐の際の必死の場面で使われるようなものだから普通はやらんか。あと一応、自身の命とか一定の行動とかいう概念をもトレードに出すことも出来る。」


 テトラは雑談を交えつつ黒板を書いていき、生徒たちはノートを取る。流石に基礎中の基礎の内容であるため、理解が追い付いてない生徒はいないようだ。


「魔力を生成するのは人体の中にある魔力線というものであり、これは物理的には干渉できない。魔力の生成量は大体ではあるが、線の総体積に比例すると考えられている。また、魔力の指向性を与える役割も持っており、効率向上、詠唱の省略などはこれをどれだけうまく運用できるかで決まってくる。しかし、魔力線については量も質も才能がほぼ全てであり、後天的に増やせるものでもない。対策としては、、、」


 カラーン、カラーンと授業の終わりの鐘が鳴る。


「じゃあ、今日はここまで、まだ必要ないと思うが復習とかは忘れるなよ。」


 テトラはそう言って黒板に手をかざして黒板を消し、教室を出ていった。


「イグテス、次の授業は?」


「次は数学ですね。その後、お昼を挟んで歴史、化学で今日の分は終わりですね。」


「歴史俺嫌いなんだよね。どこで誰が戦争したとか、どういう条約が締結されたとかでどこで使うんだよ。」


 アルマスはイグテスと雑談する。


「アルマス、今日の数学は休講らしい。昼からも実習に変わるようだ。」


 アデケイラが黒板の隅に急に現れた文字を見ながら言う。


「まじ、じゃあ、売店行く?」


「そうですね。」


 アルマス達三人はまた売店に向かった。


◇ ◇ ◇


「いらっしゃい。この時間ということは休講か。体調を崩している先生が多いのか?」


 アルマス達が店に入ると店長のカザマルとこの時間から酒を飲んでいる客がいた。


「いえ、教材が揃っていない生徒がいるのでその配慮かと。」


 カザマルに対してイグテスが答える。


「なるほど。そういや業者のほうの手配が遅れたって話を聞いたな。」


「そんなこともあるんですね。で、話は変わるんですが、この鉱石について…」


 イグテスはそのままカザマルに鉱石の注文を始めた。それを横目にアルマスとアデケイラは薬草や毛皮などを見ていると酒を飲んでいる男から声を掛けられた。


「お前ら何科なんだ?」


 この時間から酒を飲んでいる剣を携えた黒髪の男がアルマス達に聞いてきた。


「俺達は魔法科だ。」


 それを聞くと男はアルマスとアデケイラを見て、はぁー、とため息を吐いた。


「お前らどっちも魔法の才能ないぞ。なんでこんな所に来たんだ?まさか宮廷魔術師になりたいとか言わねえよな。」


 アルマスとアデケイラは即答した。


「就職に有利って聞いたから。」


「旅をしてたら辿り着いたからだ。」


 男はそれを聞いて吹いた。


「アッハッハッハ!!!前者はともかく後者!!そんなノリで合格できるって何なんだよ。アッハッハッハ!!三浪して最後諦めた俺が馬鹿みたいだ!アッハッハッハ!!」


 男は大笑いをする。彼が笑うのは珍しいのか、カザマルは少し驚いたような顔をする。男はアルマスの持つトランクとイグテスを見る。男はニヤリと笑って、


「お前ら、冒険者資格取る気はねえか?」


と言った。


◇ ◇ ◇


 アルマス達は現在、校内の端の方にある、巨大なグランドに居る。アルマスは制服の上からトランクから取り出した黒い外套を着て、イグテスは右腕に腕時計となって装備されている。その他の13組の生徒もみなそれぞれの恰好をしている。


(今思ったんだが、俺の服装なんか寂しくない?)


(まあ、機能性の方が重要ですから問題ないんじゃないですか?)


(そんなこと言ったって、ほらあの背の高い奴、宝石とか貴金属がちりばめられてるぜ。いざって時はあれで大魔法ぶっ放すに決まってる。)


 アルマスは周りの生徒の着ている服の豪華さに弱気になっている。それに対して、イグテスはちっともそんなことは思っていない。何なら、アデケイラに至っては制服のままである。

 現在、アルマス達は魔法実習の授業中であり、この授業の担当であるガウツ先生の話を聞いている。


「この授業の意義は座学で学んだ知識を実践し、より深く理解することである。また、実習の後は結果をまとめレポートとして提出して貰う。」


 ガウツは今年で六十歳のベテランである。昔は軍に所属していたこともあるらしく、魔法以外にも武器の取り扱いにも詳しいのだとか。

 レポートという言葉に少し生徒の雰囲気が変わる。やはりいくらやる気があっても、課題は嫌いなようだ。


(イグテス、レポートやってくれ。)


(いやです。そのくらい自分でやってください。手伝いはしますが。)


 こんな感じで話を聞いているとガウツは透明な水晶を持ってきた。


「取り敢えず、今日やることは適正属性の判定、魔力量の測定を行う。これは取り敢えず簡易的に測るものだ。詳しい測定も勿論行うぞ。」


 ガウツが現在持っている水晶は魔力線の体積と適性を測定できる道具であり、かなり高性能な部類の物である。魔力線については数値、属性は色によってみることが出来る。

 前の列の人から次々と測定が行われていく。魔力線の平均、最頻値共に20程度らしく、低い人でも15はあるらしい。しかし、70や80、人によると100を超える人もいるようだ。水晶は多種多様な色に輝いている。流石は名門校だ。そうこうしているとアルマス達にもそれが回ってきた。


(結果を知っているのにこれをやるのか。)


 アルマスはみじめな気持ちになりながら水晶に触れる。

 結果は数値が5、色は無かった。ガウツも少なすぎると思いやり直したが結果は増えることはなく、今にも4に下がりそうであった。


「何と言うか、、、、強く生きろよ。」


 ガウツも困ってそんな言葉しか掛けられない。アルマスの結果は魔力線は常人の4分の1程度であり、適した属性はないということが読み取れた。周りの生徒も頑張れみたいな雰囲気の視線をアルマスに向けた。

 隣のアデケイラは35で、属性は赤色つまり炎や熱系統であった。


(泣いていいか?)


(みっともないのでやめてください。)


(既に十分見っとも無いのだが?)


 この後、アルマス達は正確な値を測るために実際に魔法を使ったりなどを行った。

 種目としては基本的な火球、水球、発電、物体の移動、変形などであった。

 目立った成績で言えば、ケテルという生徒の発生させる力やトーマスという生徒の火球の大きさが凄かった。アルマスは言及しないでおこう。


「注目!!」


 ガウツの声が響く。どうやら全員分の測定と記録が終わったようだ。


「今日の授業はこれで終わりだ。ではそれ以外解散!!」


「「「ありがとうございました!!」」」


 こんな感じで学校生活二日目の授業が終了した。

 

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