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隣の部屋の男が殺されたってよ

作者: たてみん
掲載日:2023/03/12

お読みいただきありがとうございます。

次回作の連載の前の小休憩ということで、なろう企画に乗ってみました。

トリックなどはない、ごく単純な話ですので気分転換にどうぞ。

先日聞いた話だが、どうやら隣の部屋の男が死んだらしい。

そのせいか、俺の所にもやたらと警察やら何やら色々な奴らがやって来た。

その様子から察するにどうやら殺人事件だったようだな。

自分の部屋で背中を刺されて死んでいた事から自殺ではなく殺人事件。

強盗殺人か痴情の縺れではないかと見ているそうだ。

ただ警察の話を聞く限り、その殺された男の交友関係は広くないそうで、恋人もいなかったそうだ。

つまり痴情の縺れの可能性は低いという事だ。

そうなると真っ先に疑われるのが隣人。

騒音問題などから口論になりカッとなって殺ったんじゃないか、などと疑われる訳だ。


だが残念ながら俺は隣人の事など知らない。

数回通路ですれ違ったかもしれないが、その時も軽く会釈した程度だ。当然名前も知らない。

全然違う3人を連れてきて誰が隣人だったかと聞かれても答えられる自信はない。

それに俺が部屋にいる間に隣が騒がしかった記憶もない。

異臭を放ってたとかそんなことも無い。

つまり極めて良好な赤の他人だ。


「だから言ってるじゃないですか。

俺にその人を殺す程の強い動機はありません」

「落ち着いてください。あくまで捜査の一環ですから」


警察はのらりくらりと相手の怒りをかわして話を聞くのがお仕事だ。

第3者からしたらご苦労様と言いたいが、当事者としては鬱陶しい事この上ないな。

少なくとも俺に何を聞かれても答えられないのは間違いない。

被害者の職場にも警察が行ったそうだが収穫はゼロ。

仕事態度は決して悪くはなく、事件に巻き込まれるような人物ではなかったという。


「特に荒らされた様子もないので強盗の線は薄い。

また争った跡もないので知り合いの犯行の可能性は十分あるだろう」

「しかし部屋を訪ねてくるような友人が居たという情報はありません」

「そこなんだよなぁ。

よし、ちょっとロープレしてみるか。まずは友人が訪ねてくるケースだ。

俺が犯人、お前が被害者ガイシャだ」

「はい!」


刑事は2人でロープレつまり自分たちが仮に当事者だったとしてどう動いたかをやってみるって事だな。

話してる感じ犯人役が上司っぽい。


ピンポーン

『はーい。お、いらっしゃい』

『こんばんわ』

『珍しいな。お前が俺の家に来るなんて』

『ああ、ちょっと話があってな』

『ふーん、まあいいや。上がってくれ。コーヒーでも飲むか?』

「いやまて。それは違う」

「えっ?」


台所にコーヒーを入れようとした部下を止める上司。

知り合いが訪ねて来たのだからコーヒーの一つも淹れるのは別に変じゃない。

現に台所には立派なコーヒーメーカーがあるので被害者がコーヒー好きなのは間違いないし、自分の好きなものを振る舞おうというのは良くある話だ。


「どうして違うんですか?」

「現場にはお湯を沸かしている様子は無かった。

ガイシャの倒れていた位置から考えてお湯を沸かしに行こうとしたタイミングで刺された訳でもない」

「なるほど。つまり犯人はガイシャから見てコーヒーを淹れる程仲が良くは無かったってことですか?」

「もしくはコーヒーが嫌いな相手だったか。

いやその場合も茶ぐらいは出すか。冷蔵庫にはペットのお茶があるしな」

「確かにそうですね。

ならガイシャにとって犯人は親しい友人という訳ではなかったけど家に上げて背中を見せても問題のない相手ってことですか」

「考えられるのは女、子供、家族……。

しかし家族は誰もガイシャを訪ねていないのは確認が取れている。

ガイシャと子供の接点があるとは思えない。

ならやはり女か。それも友人ではない間柄なのに気軽に家に上げるとなると……そうか!」


そこまで考えた刑事は一つの可能性に思い至ったようだ。

急ぎ携帯を取り出すと鑑識に電話を掛けた。


「何かわかったんですか!?」

「ああ。鑑識にも確認が取れた。

この部屋からは複数人の女性の髪の毛が見つかったそうだ」

「え、でも。ガイシャは別に彼女は居なかったんですよね?」

「彼女じゃなくても部屋に来る女性は居るだろう。あ、お前は経験ないか」


上司に言われて頭を悩ます部下。

どうやら思い当たることは無いようだ。


「ハウスキーパーなら複数人というのは変ですよね?」

「だろうな。ああいうのは大抵担当が決まってる」

「あ、某宗教団体は仲間を家に招いて題目を唱えると聞いたことがある」

「残念ながらガイシャは無宗教だ。数珠なども無いし隠れ何とかでもないだろうな」

「となると。すみません、お手上げです」

「デリヘルだよ」

「あっ」


デリヘル。

つまり年頃の女性に家やホテルまで来てもらって色々してもらう奴だ。

ハマる人はパパ活ばりに散財することもあるらしい。

俺はそこまでではないけど最初は知り合いに唆されて、最近は月に1、2回呼ぶようになっていた。

そういえばここ1年程推していたあの子は元気にしているだろうか。


「つまり呼ばれたデリヘル嬢が?」

「もしくは以前呼んだ嬢が何の連絡もなくやって来たとしたらどうだ」

「それは……確かに部屋に上げるでしょうね。結局は痴情の縺れですか」

「確認してみないと何とも言えないけどな。

兎に角そっちの路線で調査を進めよう」

「はい!」


刑事の予測は正しく、捜査の結果1人のデリヘル嬢が逮捕された。

奇しくもそれは俺が推していた子だった。

取り調べに対し素直に容疑を認めた彼女はこう言っていた。


「あのおじさん、大して上手くも無いのに何度も私の事指名して、いつのまにか彼氏面してくるし、それに最近帰りに妙な視線を感じるんですけど、絶対にあの人がストーキングだと思って。

それに私先月ようやく念願の彼氏が出来たんですよ。

その彼に私がデリ嬢やってたなんて知られたら嫌われちゃうじゃない?

ならいっそのことって思って」


つまり好みじゃない客だったのと、ストーキングをされた(被害妄想か人違い)と、ごく個人的な都合で犯行に及んだってことか。

なんて奴だ。


「あーそのことなんだが」

「はい?」

「君の言っているストーカーは恐らく別で捕まっている。

本人は君達の彼氏だから問題ないと言い張っているようだけど。

後で会わせてあげよう」

「え……うそ」

「嘘かどうかは実際にあって確認してくれ」


呆然とする彼女を置き去りにして取り調べは終わった。

にしても君()って。どんな妄想してるんだよ。


ともかく。

俺の周りは無事に静かになった。

俺の隣の部屋に住んでた奴も今まで通りの生活に戻ったようだな。

ん?

隣の奴は殺されたんじゃないかって?

違う違う。殺されたのは俺。

隣の奴が「隣の部屋の男が死んだ」って話してるのを聞いたんだよ。

本当は俺は俺を殺した奴を呪ってから成仏しようと思ったんだけど、もういいかな。

そんなことより次があるならちゃんとした彼女を作ろう、うん。



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