1章 脱出
「君の事が好きなんだ・・・。」
「ごめん・・・私ほかに好きな人がいるの。」
「俺じゃ駄目なのか?」
「ごめんね・・・」
「俺はこんなに愛しているのに。」
「無理って言ってるでしょ!」
「だけど僕は君の事が好きなんだ。」
「しつこい!私メガネかけてる人嫌いなんだよね!じゃあね!」
「まってくれよ!」
ガンッ・・・
顔面にひじ鉄をくらった。その勢いでメガネが割れてしまった。目にガラスの破片が入り、片方の目が見えなくなってしまった。
ここで私は必ず復讐することを誓った。
「隼人ー早く起きなさい~!遅刻するわよ!」
うるせぇなくそババァ・・・と心の中でつぶやきながらを制服に着替えた。
(ピンポーン♪)
「ほら、加奈ちゃんが来たわよ。」
「あぁすぐ行くよ。」
急いで支度をした。もちろん朝飯を食う暇はない。
「じゃあ行ってくるわ。」
「隼人~遅いよ~」
「おう、わりぃわりぃ。」
俺の名前は中村隼人。山川中学校に通っている中学生だ。実は加奈には内緒だが・・・・・痔だ。
「また寝坊?」
「別にいいだろ」
隣にいるこいつは高倉加奈。俺と同じ中学校に通っている幼馴染だ。頭はいいけど少しドジな所もある。
学校に着き、3-2のドアを開くと、さわやかなあいさつが聞こえた。
「おはよー」「はろー」
こいつらは俺と加奈の親友、福田真由と大浦健だ。健は俺らの中で、マイペースでムードメーカー的な存在だ。そして、これは俺しか知らないが、口内炎ができやすい。真由は美人だが、時には毒舌だ。ちなみに二人はバカップルだ。言っとくけど俺と加奈は付き合ってないぞ。
{キーンコーンカーンコーン♪}
・・・・・
・・・・・・・・・・
「起きてよ隼人。次は隼人の大好きな体育だよ。」
「・・・今何時間目?」
「4時間目だよ。」
「あれ?今日は早いな。」
「ずっと寝てたからだよ。ばーか。」と、真由が答えた。
「よし!じゃあ体育いくか。いこうぜ健。」
健は顔を伏せている。多分口内炎の位置を確認しているのだろう。
「早くいこうぜ。」
「・・・確認完了!」
やはり確認してたらしい。
「がんばってね♥健♥♥♥」
「任せとけって!真由♥♥♥♥」
「今日は100m走のタイムを計ります。」
「おっしゃ!俺の俊足のスピードを見せてやるぜ!」
・・・・・
・・・・・・・
「隼人、何秒だった?」
「俺?ジャスト12秒!健は?」
「(速っ!)・・・遅いな。俺は3秒だったぜ!」
「お前はアラレちゃんか!?まぁそんな事はどうでもいいから早く教室に戻ろうぜ」
教室のドアを開けると、いい香りが漂ってきた。
「ゲッ・・・・・今日の給食はお前の大好きなカレーだぞ」
「マジ!?のぶちゃん?」
この先生の名前は田中信幸。生徒からの人気も高くいい先生だが、残念ながら息がくさい。ちなみに今の不快な音は、ゲップだ。通常時の3倍の威力がある。
「なぁ隼人、うんこ味のカレーと、カレー味のうんこどっちが好き?」
「変な事いわないでよ、け~んちゃん♥」
真由が突然現れて、健に抱きついた。
(・・・っ!持病の痔がぁぁぁぁぁ・・・・)
これも秘密だが、俺はイライラすると持病の痔が悪化するのだ。
「どしたの?隼人?」
「いや、なんでもない・・・。」
給食を食い終わった俺は、スクバからボラギノールを取りだし、俊敏な速さでトイレにかけこんだ。この時の俺は忍者の如く、素早い動きである。
ボラギノールを刺し終えた俺は、満面の笑みを浮かべてトイレからでると、満面の笑みの教頭が、そこに立っていた。
「このメガネを君にかけさせてあげよう☆」と、突然言ってきた。
「いや・・・遠慮しときます。」
「ほら、早くかけなさい!☆」
気味が悪くなった俺は、教頭を無視して階段を二段飛ばしで駆け登り、教室に戻った。
俺はさっき遭った出来事をみんなに話したが、真面目には聞いてくれなかった。
だが俺は何かが心に引っかかっていた。
そのことについて考えていると、のぶちゃんが「おい、またテスト0点だったぞ。ほら」と言ってテストをわたしてきた。
俺はふざけてその答案用紙をくしゃくしゃにして窓の外に投げた。
「お前今の答案用紙、外に行って拾ってこいよ。」
俺は珍しく怒ったのぶちゃんに対して思わずひるんでしまった。
仕方なく拾いにいこうとすると、加奈達が「うちらもいくよ」と言ってついてきた。
外に出ると、冷たい風が吹いてきた。もう冬なのかとしみじみと感じる。
「冷たい風でふとんがふっとんだ。」健が言った。
・・・・・コイツのおかげでもっと寒くなった。
「あ!あそこに紙があるよ!」
それはエロ本の表紙だった。・・・・・・・・・・・・・・・・・と、健が言った。
さらに心が寒くなるギャグをスルーして、その紙を拾いにいった。
それは当たり前だが俺の答案用紙だった。拾おうと紙に手を触れようとしたが、その直前に風に乗って近くの森の方へ飛んでいってしまった。
「あ!ちくしょうタイミング悪っ!」
「しかも森の方に行っちゃったね。」
そこの森は、広くていつでも薄暗く、かくれんぼにはもってこいの場所だが、
その森は隼人にとって嫌な思い出のある場所だった。
それは二年前、中一になって3ヶ月がたったある日のことだった。
学校が終わり、その日は痔がやばかったので、早く帰ろうとした。靴を履くと足に違和感を感じので、確認していると、手紙が入っていた。それは明らかにラブレターだった。内容は
「今日は隼人君に大事な話があるの。放課後すぐにいつもの森にきてね♥by.K」
K!?・・・これはもしかして加奈?!と、俺は思った。
一気に痔の痛みが回復し、喜んで森に行った。
しかしいたのは加奈ではなく、クラス1のブスでデブで気色悪い山寺くるみという女だった。
「うふふふふ♪隼人くぅ~ん♥♥」
あまりのキモさにめまいがしてきた。それにストレスでめまいがするほどの痔の痛みがきた。
「あのね、隼人君。」
(うざい!そして痔が痛い!)
「実はね、入学式の日からあなたの虜だったの♥」
薄々感づいてはいたが、最悪の事態だ。
「もう我慢できない♥あなたの事が大好き!好きで好きでたまらない♥」
「俺だって我慢できねーよ!あ!・・いっいや、そういう事じゃなくて・・・」
「え・・?隼人君も私のことが・・・?」
「違う!!違うんだぁぁぁぁ!!!!」
「ついに隼人君が私だけのものになったわーーーーー!!♥♥」
そう言って山寺は猛スピードで帰っていった。
「どうしたの?隼人?」
「い、いや、なんでもない。」
加奈の一言で目が覚めた。過去の思い出を思い出してもっと寒くなった。
まぁあの過去はなんとか話し合いで解決しクラスも変わったが、今も遠目から視線を感じる事がある。
「さっさと拾いにいこうぜ。」健が言った。
意外と近くにあった答案用紙を拾い、もうすぐで5時間目が始まる時間なので、走って学校に戻った。
玄関にはのぶちゃんが待っていてくれた。「遅かったな。今日の5時間目が、校内放送で変更になって体育館での全校集会に変わったから、教室に戻っていすをもってこいよ。」
「キャーーーーーー!!!助けてーーーーー!!!!」
「やっ・・やめろおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
突然悲鳴が響いた。
「体育館の方からだ!」のぶちゃんが言った。
俺はその声を聞いた瞬間に走り出した。
体育館のドアを開けようと、押したり引いたりしてみたが、開かない!?
しかし、引っ張っていると、わずかな隙間ができることに気づいた。その隙間から、みんなで覗くと、変わったメガネをかけている集団が、メガネをかけていない生徒に襲いかかっていた。
「なっ・・なにこれ?!」
「あの人血を流しているわ!!」
「おったまげぇ~!」
三人は一斉に声を出した。もちろん最後のは健である。
「俺はもう少し様子を見る!お前達は早く逃げろ!」
俺は少し戸惑った。3年間担任だった先生を、置いていくわけにはいかなかった。
だが、ここで俺も残ると、加奈を守る事ができない。三人は怯えて声もでない様子だ。
すると、のぶちゃんが、「何かあったら連絡するし、俺はそう簡単にはやられないよ。だけどもしやられてしまったら、お前達が俺達を助けてくれ。」
そう言って俺のポケットに学校の鍵をいれてきた。そして、力強く頷いた。
まだ俺は動けなかった。だが怯えている加奈たちは、口にはださないものの、早く逃げ出したさそうな顔だった。
’ドーーーーーーーーーーーーーーーーン’
突然体育館のドアが破壊された。廊下は狭いので、大勢では襲ってこないが、4人ほどが前に進みでてきた。
「ここは俺がくい止める!早く行け!」のぶちゃんが必死で叫んだ。
「ありがとう・・・のぶちゃん。」
俺は覚悟を決めて、三人に「走れ!」と叫んだ。
学校からでる寸前、後ろを振り返ると、のぶちゃんが多くのメガネをかけた人と、対等以上に戦っていた。のぶちゃんを信じて、学校をあとにした。