【Side:マリーアンナ/マティアス/受付嬢3人娘】それぞれの今
※今回はいろいろな視点からお届けします※
―――メロンディナ公爵邸
「ちょっと、どう言う事よ!」
メロンディナ公爵家ではマリーアンナが甲高い声で怒鳴り散らしていた。
「で、ですから・・・どこも、取り合ってくれないのです」
と、メイドが怯えながら答えるのだが。
「魔物のカシュミアの最高級の毛を使って仕立てた新しいお洋服が欲しいのに!何でどこも、注文を受け付けないの!?」
「で、ですから、私どもにも・・・」
「いいわ!あなたクビよ!とっとと公爵家から出て行って!」
「で、でしたらせめて未払いの給金を!」
「知らないわよ!こんな簡単な仕事も取ってこられないような使用人に支払う給金なんてないわっ!」
「そ、そんなぁ」
「仕方がない。またヴィックに頼もうっ♪」
マリーアンナは愛しの婚約者・ヴィクトリオの愛称を呼んだ。
―――王城
「またか」
「またです」
ラディーシア王国第1王子兼王太子であるマティアスは部下からの報告に頭を悩ませていた。
「ヴィクトリオ殿下が“第1王子”の肩書でメロンディナ公爵令嬢のためのカシュミアの服を仕立てねば仕立て屋もろとも潰してやると脅しているようです」
「ではその証拠となる書類、映像、調書をまとめてくれ。仕立て屋は私御用達の仕立て屋に組み込んでおいて。私の御用達の仕立て屋はあれは嫌がるからね」
「はい、畏まりました。マティアス殿下」
部下は王太子・マティアスの指示に一礼し、早速業務にとりかかる。
そしてマティアスはふぅっと溜息をついた。
「どこの仕立て屋も受けたがらない理由もわからないとは。やれ、困ったね」
―――冒険者ギルド
冒険者ギルドの職員休憩室には3人の美少女たちが集まっていた。
「ねぇ、例の依頼!また来たみたいよ。叔父さまが嘆いていたの」
ギルド受付嬢3人娘のひとり・ショコラが切り出す。ショコラはスイートブラウンの髪をツインテールに結い上げた美少女で、キャルロット公爵令嬢並びにキアことキアラの義理の姉妹である。
「えぇー、また?いくらだしても無理だって」
と、アリー。アリーも3人娘のひとりで漆黒髪のかわいらしい美少女である。
「何でも、仕立て屋がどこも受けたがらないから今度はご自身で原材料の発注書を出したみたい。原材料を持って行けば仕立て屋だって受けざるを得ないって思っているんでしょうね」
と、ショコラ。
「でも・・・冒険者・・・まともなら、受けたがらない」
と、リアの言う通り、まともな冒険者は決して飛びつこうとしなかった。
何故ならば・・・
「依頼の発注書って善良な冒険者を犯罪から守るため、依頼主のクライアントまでしっかりと記載しなきゃならないんだもの。さすがに、王族の名前を自らとはならないものの、“○○王子付き侍従”とか書かれるのよ?無理だって」
ショコラは呆れたように告げる。
「そもそも・・・ギルドのアイドルで私のキアに婚約破棄を突き付けたバカ王子のために、依頼を受ける冒険者・・・少ない・・・私のぱぱも、ごめんこうむるって言ってた」
と、リア。リアことジュリアもまた3人娘のひとり。深い藍色のロングヘアーの儚げな美少女である。因みにリアの養父は名の知れた冒険者でもある。
「あら、私のフィアンセもよ」
そうショコラが言えば、3人はくすくすと笑いを漏らす。
「しかも、その発注書に・・・」
アリーが切り出せば・・・
『“第1王子”って!!』
3人は声を合わせると、互いに顔をあわせながら失笑する。
「身分を詐称している以上、どこのギルドも受注しないわよ!」
と、アリー。
「そうそう、ギルドは世界各地にあるのよ?王族の権限でも使おうものならあっという間にギルドは見放すわ」
そう、ショコラが口にする。
「今、ギルマスが、国内各地のギルマスに、声、かけてる」
と、リア。
「そうそう。“第1王子”が依頼をしてきても見てみぬふりをして、本物の“第1王子”殿下にその証拠を差し出してくれってね」
アリーは面白そうに告げる。
「ギルドは脅しには・・・屈しない」
と、リアが頷く。
「そうそう。むしろキアっちを幸せにしてくれる“第3王子”殿下が今は冒険者の中では一大時のひと!」
そう、ショコラが告げれば・・・
「しかも・・・イケメン・・・だって!レナンが、言ってた。キアの溺愛ぶりも・・・ばっちり。むしろ、そうでなければ、この私が・・・認めん」
リアが儚げな水色の瞳の奥にほのかな炎を灯す。
「キアさんは、たくさん愛されて幸せになるべきよ」
そう、アリーが告げれば・・・
『そうそう!』
キアの大切な親友たちが口を揃えて賛同するのだった。